舟木一夫と「雨の中に消えて」
~2023年コンサートツアーの選曲~
舟木一夫さんが2023年の通常コンサートの4曲目に選んだのは1966年8月にリリースされた「雨の中に消えて」(作詞・丘灯至夫、作編曲・山路進一)。8月15日から11月7日まで日本テレビ系で放送された連続ドラマ「雨の中に消えて」の主題歌です。完成度の高い曲だと思いますが、「絶唱」(作詞・西條八十、作曲・市川昭介)のB面に収められました。A面が「絶唱」でなければ「雨の中に消えて」がA面でも成り立つと思いますね。
私がそう考えるのは、作曲が山路進一さんであることがポイントです。丘灯至夫さんと山路さんのコンビは、ほかにも「まだ見ぬ君を恋うる歌/ひとりになると」(1964年6月)、「北国の街/はやぶさの歌」(1965年3月)、「東京は恋する/虹のむこうに」(1965年4月)、「山のかなたに」(1966年1月)、「ひぐれ山唄」(1966年5月=「今日かぎりのワルツ」のB面)、「おやすみ恋人よ」(1966年11月=「ジングルベル」のB面)などがあります。
2人のコンビは舟木さんの一連の“学園ソング”の後の「絶唱」に繋がる抒情歌の基調を作ったと言うことが出来ると思います。実はこれ以外にも舟木さんの歌には山路さん作曲のものが結構あります。古い順に並べると、1964年1月の「叱られたんだね/初恋の駅」、同年7月の「少女」(「アロハ・オエ」のB面)、1965年8月の「たそがれの人/夜霧のラブレター」、同月の「浜の若い衆/磯浜育ち」、1966年5月の「今日かぎりのワルツ」、1967年1月の「一心太助江戸っ子祭り」……等々です。
山路さんは2000年10月22日に脳梗塞のため68歳で亡くなりましたが、舟木さんが翌年3月3日に開いた「ふれんどコンサート」で山路さんの特集を組みました。舟木さんはトークで「皆さん、遠藤先生や船村先生はよくご存じだと思いますが、山路先生ってどんな人? と思っていらっしゃるんじゃないでしょうか。取材やテレビが嫌いな人だったんですね…。目がギョロとしてて、地グロで、漫画ののらくろを人間の顔にするとそのまま山路さんだった」と分かりやすく話しました。
舟木さんが山路さんに初めて会ったのは、デビュー前に17歳でコロムビアのオーディションを受けた時です。舟木さんは松島アキラさんの「湖愁」、山田真二さんの「哀愁の街に霧が降る」、平野こうじさんの「白い花のブルース」を歌いましたが、ピアノを弾いてくれたのが山路さんでした。この3曲はいずれもビクターの歌手の歌で、山路さんから「コロムビアのオーディションなんだから、1曲ぐらいはコロムビアの歌手の歌を歌うもんだけど……面白いね」と言われたそうです。
ところで、「雨の中に消えて」は舟木さんの前に、吉永小百合さんと高橋英樹さん主演で1963年3月17日に公開された日活映画(西河克己監督)の主題歌として、吉永さんが「作詞・佐伯孝夫、作曲・𠮷田正」で歌っています。こちらは佐伯&𠮷田コンビですから、内容は全く違います。舟木さんが主題歌を歌った連続ドラマの方には松原智恵子さん、広瀬みささん、伊藤るり子さんらが出演し、舟木さんも初めて準レギュラーの形でドラマ出演を果たしました。
“準”としたのは、舟木さんがドラマの途中から映画「絶唱」の撮影を優先したため、舟木さんの出演を一時中断しました。映画では舟木さんの髪を短くする必要があったため、“断髪式”まで開いて松原さん、和泉雅子さんらで散髪。このため、ドラマでは途中から突然長髪が短髪に変わるという“異変”が起きました。記憶に間違いがなければ、ドラマには舟木さんと松原さんのくちづけシーンがありましたが、花柄の傘で隠し、その傘がフワリと落ちるという巧みな演出があったことを覚えています。
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《舟木一夫2023年コンサート・スケジュール》
■2月16日(木) 大宮ソニックシティー
14:00
■2月24日(金) かつしかシンフォニーヒルズ 14:00
■3月1日(水) アクトシティ浜松 14:00
■3月18日(土)~23日(木)
大阪・新歌舞伎座 シアターコンサート
14:00~16:30
■3月27日(月)~29日(水)
東京・新橋演舞場 シアターコンサート
各 14:00
■4月12日(水) 松戸森のホール21 14:00
■4月14日(金) 高崎芸術劇場 14:00
■4月25日(火) 中野サンプラザホール 15:00
■5月10日(水) 岡山市民会館 14:00
■5月11日(木) 広島・上野学園ホール 14:00
■5月26日(金)~28日(日)
京都・南座 シアターコンサート 各13:30
■6月7日(水) 日本特殊陶業市民会館 14:00
■6月21日(水) 神戸国際会館 14:00
■6月22日(木) 梅田芸術劇場 14:00