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~舟木一夫・ロングコンサートB2日目~

新橋演舞場の前には15日も開場を待つ長い列か出来ていた
 
 東京・新橋演舞場で行われている「芸能生活60周年記念 舟木一夫 ロングコンサートin新橋演舞場」のBバージョン2日目の15日、会場に足を運んできました。急ぎ、ご報告します。 
 
入り口で手渡される「舟木一夫特製カード」
 
 この日も会場は満席状態で、2階、3階席も結構入っておられました。連日の満員御礼に、ファンの皆さまの“舟木愛”の底力を見せつけられた感じです。中には「全日来ます」という超熱心な方も少なからずいらっしゃいました。
 
 1部&2部の曲目・曲順は以下の通りです。
 


1部

ーオープニングー
①初恋                                         

 

②まだ見ぬ君を恋うる歌       
③夕月の乙女                      
④あゝりんどうの花咲けど    
 

⑤吉野木挽唄~絶唱           
⑥夕笛                               
⑦恋唄                              
 

⑧逢う瀬                            
⑨京の恋唄                         
 

⑩都井岬旅情                      
⑪星の夜北へ帰る               

 

 14:00。緞帳が上がると、舟木さんは濃いめのグレーの羽織と着物の対、ベージュの兵児帯、黒の鼻緒の下駄に黒の足袋という装いで登場。1部のオープニングは「初恋」で、舟木さんは「真ん中の3日間(14日~16日)は抒情歌系をお聴かせしようと思います」と挨拶しました。

 

 舟木さんは今回のコンサートで「抒情歌」について、イコールふるさとの風景、イコール人恋しさ、イコール初めての恋…などと表現し、この日は10代、20代、30代の恋ごとに2、3曲ずつ括り、徐々に年齢層を上げて歌う“工夫”をしていると話しました。なるほどと、ちょっと感心しました。

 

 舟木さんが抒情歌を歌うようになったのは、「西條八十先生との出会いが大きかった」と話し、「夕笛」の裏話を披露しました。西條八十が舟木さんが歌う自ら作詞の「絶唱」を聴いた時、先輩の詩人・三木露風に「先輩の『ふるさとの』という詩が好きだから、いつかこれをベースに流行歌を作っていいですか」と言って快諾してくれたことを思いだし、それを「夕笛」に生かしたということでした。

 

 また、この歌は昭和20年代後半に、ある女性歌手で吹き込んだものの、その時は上手くいかなかったので、舟木さんの歌でリベンジしたということも。「夕笛」というタイトルは舟木さんの発案ですから、その時は何だったんでしょうか。おじいちゃんほど年齢の離れた師弟間のいい話ですね。

 

 そして、羽織を脱いで、色っぽい艶歌として京都が舞台の歌2曲を挙げましたが、「逢う瀬」は「舟木一夫の新しい名刺『友情』」というLPに収められています。また、「京の恋唄」は映画にもなった「永訣の詩」のB面の曲です。舟木さんは好きな曲ですが、ステージの流れの中に入り込ませるのが難しい歌です。舟木さんのファンの中では非常に人気の高い曲で、今回は嬉しい組み合わせになりました。

 

 1部のラストの「都井岬旅情」は服部良一、「星の夜北へ帰る」は船村徹の作曲で、舟木さんは特に服部良一の名前を挙げて「実に幅広い方々に僕の歌を作っていただきました」と話しました。ちなみに、前の曲の編曲は服部克久、後の曲は歌手生活15周年記念大全集「限りない青春の季節」というLPの中の1曲です。

 

 2部は藤紫のジャケット(襟は黒)、ポケットチーフは黒にエメラルドグリーンの模様入り、黒のベストとスラックス姿で登場。オープニングは久しぶりの「センチメンタルボーイ」で、映画「君に幸福を センチメンタルボーイ」の中の内藤洋子さんの顔(おでこ?)が浮かんできました。 

 

2部
ーオープニング―

⑫センチメンタルボーイ           
 

⑬くちなしのバラード             
⑭ブルートランペット              
⑮星の広場に集まれ                 
⑯夏子の季節                         


⑰水色の人                               

⑱今日かぎりのワルツ              
⑲たそがれの人                       
 

ーこの1曲ー

⑳夢のハワイで盆踊り              

 

ースタンディングー

㉑銭形平次                              

     
㉒高校三年生                         
㉓修学旅行                            
㉔仲間たち                            
㉕君たちがいて僕がいた           
㉖学園広場                             


㉗東京は恋する                        
㉘北国の街                              
㉙哀愁の夜                              

㉚高原のお嬢さん♪バラード調   

㉛湖愁                                    

 

ーアンコールー

㉜青春の鐘                                     

 

 続いて「くちなしのバラード」の前奏が始まるなり、舟木さんはフルートの演奏を止めて、「そんなに情けない音をだすなよ…」と叱りました。舟木さんが口笛を吹いて“見本”を示します。ここで大きな拍手。今度は“叱られ奏者”がスポットライトを浴びながら再びフルートの前奏(独奏!?)を始めると、会場から割れんばかりの拍手が起きました。舟木さんらしい“メンバー紹介”です。
 
 続いて「ご存じのように、僕はブルースを歌いたくて歌手になりました」と話し、ブルース調の3曲を選曲。最初の「水色のひと」は「高校三年生」のB面。「僕の気持ちを読んで、あえてB面に入れてくれたんじゃないのかな」。当時のコロムビアの栗山章ディレクターなら、冗談じゃなく遠藤実宅に先駆けしてブルース風に作ってもらったんじゃないかと思いますね。ここではサックスの響きが会場に鳴り渡りました。
 
 「この1曲」は、Aバージョンでは舟木さんが最も好きな映画の一つと言われた「いつか来るさよなら」の主題歌でしたが、Bバージョンでは「夢のハワイで盆踊り」。東映が初めてハワイで海外ロケを行った同名映画の主題歌で、作曲は「ブルートランペット」「夏子の季節」などと同じ船村徹です。こちらは本間千代子さんの顔が浮かびます。
 
 上着を取るとスタンディング。定番の「銭形平次」を歌い終えると、「クラッピングはきつい」と“時間稼ぎ”。気を取り直して、黒のジャケット(白に薄墨色の模様が入ったポケットチーフ)を羽織って「高校三年生」などデビュー当時の歌をメドレーで流しました。
 
 ここで、舟木さんの改めての御礼の挨拶。「60年 有難うございました」と頭を下げ、「8(78)まで来ちゃったんですから、0(80)まで行くしかない」と客席に向かって“決意”を語りました。
 
 映画にもなった4曲を続け、ラストは4年ぶりの新曲「湖愁」。「松島アキラさんのこの歌が僕を『高校三年生』に導いてくれました。この歌を歌うと16、7歳の頃の自分に連れて行ってくれる。ただ歌が好きで好きで歌っていた少年に戻してくれる歌です。ある意味で『高校三年生』より大切な曲なんです」と話しました。
 
 アンコールは「青春の鐘」で、作曲は古関裕而。舟木さんが恵まれたと言う“幅広い作曲家”の1人です。古関らしい若人、青年にエールを送る内容の歌です。私も当時、随分励まされました。歌い終えると、オールスタンディングの拍手の中、客席に向かって両手を大きく振る舟木さんの姿を名残り惜しむように緞帳が下りて行きました。
 
コンサート終演後、余韻を語りながら家路に向かう観客
 
コンサートの後、舟木さんをお見送りするファン