さて、これまで紀勢本線の新宮より東側のJR東海管轄の区間を見てきましたが、いよいよ本題のJR西日本管轄の白浜ー新宮に移りたいと思います。

紀勢本線は生き残れるのか?

結論から言うと、あくまでも私論ですが、以下の理由により、暫くは廃止の議論にはならないと見ています。(この地域は有名な政治家を輩出している旧和歌山3区ですが、政治的な話は無しですよー。)

・新宮市は東牟婁郡の文化、経済の中心地であり、県の振興局、裁判所や検察庁など官公庁が設置される拠点都市である。
・世界遺産の熊野古道、那智の滝や勝浦温泉、潮岬など観光資源に恵まれている。
・自動車道が未整備(すさみ南ICー市屋(那智勝浦)IC)であり、国道42号以外に事実上代替ルートがない。(県道はあるはあるけどかなりの険道やからねぇ)
・特急「くろしお」が新大阪(京都)ー新宮を1日5往復しており、他の路線に比べハードルが高い。
・地元との調整が相当難航することが予想される。
・特急南紀が乗り入れる紀伊勝浦ー新宮と境界の新宮駅の取扱いについて、JR東海との調整が必要である。

しかし、廃止はなくとも、例えば駅の廃止や列車本数の削減などの合理化や、地元からの支援を取り付ける方向での調整になると推測しますが、JR西日本の狙いも廃止ではなく、現段階ではこちらではないでしょうか。


さて、この白浜ー新宮の2021年度の輸送密度は731人/日

   (JR西日本のHPから転載)

目安の2000人をかなり下回っていますね。

では、該当区間の各駅の乗車人数を見ていきましょう。(2019年度)



白浜と新宮を除いた24駅のうち1桁が6駅、10人台が5駅と半数近くの駅が15人以下となっています。


これはかなり厳しいですね…。

特に、すさみー串本の落ち込みが目立ちますね。

(椿駅はかつては急行停車駅で、その後も一部のくろしおが停車していたのが信じられないくらいの人数ですね。)


ただし、人口が集まっている紀伊勝浦ー新宮は比較的健闘しています。

特に、紀伊佐野は巴川製紙所の跡地を利用した広大な商業施設や高校の最寄駅なので、乗車人数が多いのでしょう。


もし、この区間だけ残ると、かつての紀勢中線(新宮鉄道)の復活になりますね。


ただし、七尾線や大糸線の糸魚川ー南小谷、3月16日の北陸新幹線敦賀開業以降の越美北線のような飛び地の路線になってしまうので、JR西日本としては避けたいところでしょう。


参考に、近畿圏で同じように廃止対象になっている関西本線の加茂ー柘植の乗車人数を見てみましょう。

大河原以外の駅はすべて3桁台と意外に健闘しているんです。   

柘植駅

特に、伊賀鉄道との分岐駅であり、特急「あすか」の停車駅だった伊賀上野はさすがてすね。


輸送密度は766人/日と紀勢本線の白浜ー新宮とどっこいどっこいですが、紀勢本線には特急くろしおが走っているのに対し、関西本線のこの区間は2006年に急行「かすが」が廃止されて以降は各駅停車のみ。


このように見ると、紀勢本線のこの区間がいかに特急「くろしお」に助けられているのかが分かりますね。


特急「くろしお」の存在はとても大きいのです。



#7に続きます。