日本の音大を受けず留学するという選択 3 | パリと音楽と大学と

パリと音楽と大学と

パリにて声楽、シャンソンを指導。パリの音楽学校在学中より、フランス各地・ヨーロッパで様々なコンサートを経験。フランス国家公認声楽講師資格。アラフィフの物語を振り返るつもりです。

さて、肩書きの話はまたにしておきましょう。これを重要視するかどうかは各自次第であり、たとえば日本で仕事に就こうと思ったときの、相手の人事のセンス次第でもあります。私が語るにはちょっとややこしすぎますから、カット~。



さて、高校が音楽科ではなく、普通科だったケースとします。



普通科から音大を受けるのはすでに大変です。受験内容に音楽の専門科目が多くあり、それは通っている高校では当然学べないからです。音楽科高校であれば、「楽典」「ソルフエージュ」「和声」などは義務として履修すると思います。



「実技」たる選択の楽器と副科に多いピアノは、個人や地元の音楽学校のレッスンに通われる方が多いでしょう。もちろん普通科から音大へ進学するケースも多いので、なんとかなっている、という証拠かも。楽典などは覚えればすむこと。大学の過去の問題集もあるので、自力である程度学べるのです



音楽大学に入ると、ソルフエージュ、(西洋)音楽史、和声、対位法など履修しなくてはなりません。単位を落とせば留年であり、単位をとれない限り、いくら実技がよくできても、卒業できないケースもあります。厳しいのです。



さて、高卒後の「音楽留学」に戻ります。

わかる範囲でフランスの私立学校のケースのみをあげておきます。



「音楽学校」というからにはやはり、

「ソルフエージュ」や「音楽史」の単位を要求されます。



音大卒、あるいは音大で2年ほど基本科目をこなしている場合は、日本でとった単位が互換され、「まなんだもの」として単位に数えられますが、普通科卒の場合は、「単位なし」です。



ですから、基本科目の履修は義務となります。授業はフランス語です。

某私立では基礎科目の授業に出席していないと「学年末試験を受ける権利なし」とみなされます。



実技レッスンだけで十分、という人もあるでしょう。「卒業・終了資格」が不要な場合には問題ありませんが、きちんと終了したい、ディプロムを取得したい、という場合は、基本科目の履修が必要です



日本では高校・音大において必須となるこれらの科目をフランス人はどうしているのか?というと、音楽学校で長年かけて履修しています。7歳から始めますが、一年の授業数は少ないものです。2サイクル、8年間かけています。日本のような音楽高校はありませんが、中学校くらいからは、音楽学校の授業を優先してとりいれられる、特別クラスを設けている学校があります。



音楽学校にはいるのには年齢制限があります。20歳を過ぎたらフランス人もどこにでも入学できるというわけではありません。(郊外の音楽学校なら実技のみ受けることが可能)余裕がある人は私立音楽学校へ。「エコールノルマルを一年生から始めてそこで授業をとり試験に受かる」というケースです。





話がややこしくなってきましたが、普通校から直接留学する場合、実技のため以上にフランス語の準備ができていないと大変、ということです。でも大学受験をしないのと、秋の学校開始に合わせるのであれば、他の受験生よりは時間はたっぷりあるはずですね。たぶん。



音楽留学は実技さえできていればよいと思いがちかもしれませんが、コミュニケーションや普段の生活のことをふまえて、言葉の準備はいくらしてもしたりないくらいではないか、と、過去の自分を省みる次第です。ましてコンクールをバンバン受けたいというのであれば、その場で雑事に頭を悩ませずに済むよう、仏語なり英語なりの基本会話をマスターしておいても損はありません。



実際の問題とともに、「留学をおえたらどうしたいのか」ということを頭の隅においておくとよいでしょう。受験の真っただ中の時期は目先にあることしか考えられませんし、留学の場合は「行けるのか、ビザが下りるのか」で頭がいっぱいとなります。でも「留学したとして」「できたとして」



自分はその先、

いったい何をしたいのか?





は留学する前に考えておいて損はないと思います。


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