『エルピス』最終話(禁断の論考も少々) | 還暦フリーランサーのおしゃべり処

還暦フリーランサーのおしゃべり処

元競馬専門紙記者/旧ブログ~「オヤジの競馬倶楽部」~
(ヘイトスピーチはご勘弁)

 この画像は例によって『エルピス』関連のサムネイルではなく、JR府中本町駅の競馬場臨時改札口を出てすぐ、フジビューウォークの壁に据え付けられたJRAのコマーシャル。

 ですが今回は競馬ではなく、『エルピス』の話。

 

  二人のモノローグ

 全10回を完走しました。字幕付きで録画し、例によって何度も観ました。

 以下は、完全に個人的な感想です。

 

 渡辺あやフリークとしては、率直に言って〝民放初〟の連ドラへの脚本執筆に不安がなくもなかったのです。内容が面白かったこともあって、だから余計に最後までドキドキさせられましたが、とりあえず無難に着地してくれて良かった。

 

 以前に〝渡辺あや節〟と書いたモノローグでの進行スタイルですが、この作品では基本的に奇数回を岸本(眞栄田郷敦)が、偶数回を浅川(長澤まさみ)が担当。二人の視点を用いたのは、いくつかのテーマをより多層的に見せる効果を狙ったんでしょうか?。しかし一方で、〝主人公〟の固定化には失敗したか?とも思うところが序盤にありました。

 ところが、第4回頃から「おや?」と思わせ、第5回から俄然トーンが替わって面白くなりました。これは明らかに、中盤以降の主人公を岸本1人に絞ったように物語が進んだから、でしょう。そして演出もそれに沿って、冴えていたように思います。

 しかし第8回を終えて、第9回に新たな重要な人物が登場。あと1回で、どうまとめるのかなと思ったら、上で「無難に」とは書きましたけど、少々力技が過ぎるような展開で主人公を元に戻して着地。

 「season2」とか、劇場版『エルピス』とかの懸念を抱かせずに終わってくれたのはよかったです。

 

  三浦透子と眞栄田郷敦

 全10話を敢えて〝回数〟で表示したのは、担当演出家の違いが自分の好みにモロに出たから。クレジットでは最初の1、2、3回と6、9、10回がメイン演出1人。4、5回がメイン、サブの2人体制。7、8回がそれぞれサブ1人。

 はっきり申し上げて、自分が痺れたのは、サブの方が演出に加わった回が多かったです。

 そして冒頭の1、2回で演出云々を吹き飛ばしたのが三浦透子さんの名演であり、演出が魅力を引き出したのが4、5、7、8回の眞栄田郷敦くんでした。この2人を追うだけでも楽しめる、と前に書きましたが、観終えた今、改めてその見立ては間違ってなかった、と感じています。

 

  禁断?の渡辺あや論

 渡辺あや作品に登場するそれぞれの主人公は、それが男であれ女であれ、(自分が真似できるできないはさておき)その行動原理、パターンに容易に感情移入できる人物がほとんど。単純に言えば、観ていて心から応援したくなる。

 それは何故か、というと……この説明は野暮ったくなりますが、常に主人公が「自分がどう生きるのか」「自分はどうあるべきなのか」を問い、悩みながら行動するからです。

 その点で言うと、今回の浅川(長澤まさみ)には正直、何度も心が離れた(と言うか最初から寄り添いにくかった)うえ、観終わっても釈然としない部分があります。でも、制作サイドの狙いとは別に、〝裏〟の主人公を岸本(眞栄田郷敦)と捉えるなら、近年の『ワンダーウォール』や『今ここにある危機と僕の好感度について』で、権威や強大な力に立ち向かおうとする無力な若者達の切ない姿、を描いてきた〝渡辺あや〟が感じられる。

 彼女にとっての〝民放初〟のドラマ挑戦は、そういう二重構造の作品だったんだな、と思うことにしています。私はファンですので。

(個人の感想です)

 

 もうひとつ。これは間違いなく制作陣の力でしょうけど、鈴木亮平さんは勿論のこと、脇を固めた役者さん達が岡部たかし、三浦貴大、筒井真理子、池津祥子に、スポット的に登場した木竜麻生、六角精児、安井順平、マキタスポーツなんて、私好みの結構なメンバーを揃えて見せていただきました。

 ま、音楽の大友良英さんが素晴らしかったのは、今更感がありますか。

 

 とにもかくにも、久しぶりの民放連ドラ完走。実に見応えのあるドラマでございました。ありがとうございました。

 

  そしてラストデー

 

 さて、明日はJRAの今年の全日程最終日。中山に突撃してまいります。ホープフルSで不完全燃焼に終わった有馬の分を取り返したい所存でおります。

 できれば競馬場からレポートさせていただこうと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

 

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへにほんブログ村

 

にほんブログ村 競馬ブログ 競馬コラムへにほんブログ村