宇宙には矛盾を防ぐ検閲官がいる!? | 弦弥勒

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●宇宙の矛盾は監視されている

 

ソーンとホーキングの賭けに登場した「裸の特異点」

ですが、いったいどんな現象なのでしょうか?

 

特異点とは、あらゆる物理量が無限大になって

しまう点のことです。

こういう状況は物理法則が成り立たなくなってしまうので

論理を組み立てるときには、避けなければならない

問題なのです。

 

ブラックホールは質量が非常に重い恒星がその重さ

に耐えきれずに重力崩壊を起こすことでできると

考えられています。

すべてがブラックホールの中心に集約されていくのです

その中心の点が特異点となってしまいます。

アインシュタインの一般相対性理論を計算すると、

特異点となるケースがふたつあることがわかりました

そして、そのどちらもが、ブラックホールを

意味していることもわかりました。

 

二つの特異点のうち、ひとつはブラックホールの

大きさを示す「ブラックホール地平面」です

こちらは、座標の取り方を変えることで特異点を

回避することができました。

しかし、ブラックホールの中心を示す点は

どうしても、特異点を回避することができません

 

その中心点は「裸の特異点」と呼ばれています

ブラックホールが存在するために「裸の特異点」

をどう解決するのかと考え、登場した理論が

「宇宙検閲官仮説」です。

 

イギリスの物理学者ロジャー・ベンローズが

提唱しました。

「宇宙のどこかに特異点ができると、検閲官

をしている宇宙の神様が特異点を隠してしまう」

という仮説です。

 

だから、「裸の特異点」は私たちには観測できない事象

の地平面内に隠されてしまうので、問題ない

というのです。

「検閲官」「神様」といった言葉が登場して

空想話のように聞こえますが、ベンローズの説明

はおおむね正しいことがわかっています。

 

また、「裸の特異点」もすべてが隠されているわけではなく、

中には、裸のままになることもあるようです。

 

ソーンとホーキンングの賭けで

「恒星が重力崩壊したときブラックホールにならずに、

裸の時空特異点が形成される可能性があるか」

といったソーンの勝ちになっています。

 

 

※本来なら、存在しないはずの特異点が現れてしまうのだが、

それは、観測不可能な事象の平面に隠される。

つまり「特異点があったとしても、それは宇宙の果ての

向こう側のものだから、この世界とは関係ない」

といっているようなものなんです。