まずは先日調達した模型をご紹介、、
左上から時計回りに
全日空商事 ANA YS-11ラストフライト
全日空商事 航空自衛隊 YS-11EA
JCWing ANA YS-11A-100
イリサワ STOL実験機 飛鳥
全て1/200スケールです。
今回はこの中から、、
こちら!
短距離離着陸実験機
飛鳥
を取り上げます。
ちなみに、模型はレジン製です。
まずはその形態を愛でます。。
特徴的なのは何といっても主翼前縁から突き出た4基のエンジンでしょう、、
この配置はある効果を狙ってのものです。

ことの始まりはかなり古く1963年にまで遡ります。当時の航空宇宙技術研究所(以降 NAL)は垂直離着陸についての研究が開始されていた。
ヘリとは異なり、垂直離着陸用(VTOL)エンジンの出力により垂直に離陸したのち別の推進力により前進し着陸時には再度VTOLエンジンを起動させ、その出力を調整して高度を調整して着陸するというもの。
現実には実現できるものであったが、いかんせん騒音問題がひどく、実用化は断念せざるを得なかった。
そこで妥協案というわけではないが、短距離離着陸(STOL)の研究に注力することになる。
これにより誕生することになったのが
飛鳥であった。
当時の日本の航空事情を鑑みて、STOL性能を向上させた低騒音輸送機の必要性が浮かんでいた。そこでSTOL輸送機による輸送の検証と民間輸送機向け低騒音ターポファンエンジンでのSTOL技術開発を目的に実際に実験機をつくり検証することとなった。
新規に機体を開発するのはコストと時間がかかることから、航空自衛隊に配備されたC-1輸送機をベースにすることが決まった。
C-1輸送機はアメリカ、プラット&ホイットニー社製のJT8Dエンジンが搭載されたが、飛鳥は低騒音化のためNALが開発していた国産ターボファンエンジンFJR710エンジンを4基搭載した。

特徴的なエンジン配置は揚力増加を狙ったもの。
揚力は主翼の上面を流れた気流が主翼後縁から主翼下方へ吹き下ろす時の反作用で発生する。
そのため、主翼上面を流れる気流が揚力の強さに直結する。
これを踏まえ、エンジンの排気を主翼上面に流す事でより強い揚力を得る狙いがあった。
高温の排気にさらされるため主翼のエンジン後方は耐熱性が高められ他とは印象がことなる。
また、STOL性能の向上により揚力は確保できるが、速度が落ちることにより動翼の効果は弱くなるため、これを補う意味もこめてエルロンの前には圧縮空気を吹き出しエルロンの効果を補っている。
奇抜な見た目ではあったが、性能は悪くなく、4発エンジンでありながら航続距離は1500キロ、着陸滑走距離は500mを切るという極めて優秀な離着陸性能を発揮した。
(原型機のC-1の着陸滑走距離は600m)
実際にこれをベースプランとした量産化の機運まであったが、大きく二つの要因から量産化には至らなかった。

ひとつは空港施設の改善。
当時の日本の空港事情はお世辞にもよいとは言えず、地方空港では短い滑走路での発着を余儀なくされたが、滑走路の拡幅、延長が実施され、過度なSTOL性能を要求するような場面がなくなりつつあった。

もうひとつがSTOL機の特異な事情。
低速度でのコントロールを考慮した境界層制御のための設備や操縦操作を補助するシステムの必要性などにより開発単価が高くなる。
特に通常の航空機と大きくことなる低速飛行時の挙動は現在でこそフライバイワイヤによるコンピューター制御により補助できるが、当時としては許容できるものではなかった。
特に空港施設の充実は国策としての開発意義を薄れさせるに充分だった。

1989年3月、、
最後の飛行試験を実施したのち解役。
役目を終えた飛鳥は各務原にある岐阜かかみがはら航空宇宙博物館にて保管される。
本来はSTOL技術の開発が目的であったが、飛鳥の試験飛行を含め7000時間以上の滞空時間を重ねたFJR710型エンジンは、その後日本も参加するV2500エンジンの開発に寄与していくのでした。