国交がなく、日本からは近くて遠い国、、

それが朝鮮民主主義人民共和国(以降:北朝鮮)。

朝鮮労働党が実権を握るの共産主義国であり、核開発にいそしみ、弾道ミサイルをぶっぱなしまくる、、、

そんな北朝鮮にある唯一の民用航空が高麗航空(コリョ航空)です。

(こちらは旧塗装のIL-62M、高麗航空で最大の機材です。)

今回は機材のIL-62ではなく、高麗航空にスポットをあてていきます。

 

高麗航空の歴史は結構長く、1954年にさかのぼる。

1954年に設立された朝鮮民航は翌55年に就航した。

当時はDC-3の設計を基に改良されたIL-2やAn-2などのレシプロ機で運行していたようです。

1960年あたりからターボプロップ機の導入が始まり、IL-18などが導入さる。

高麗航空初のジェット旅客機はツポレフTu-154で、この機材の受領から国際線に本格的に参入。

旧東ドイツまで足を延ばしていた。

その後、Tu-134なども導入するが、飛躍的に路線網が発達したのは初の長距離機材IL-62の受領からだった。

IL-62の受領は結構遅く、1982年。

そのため航続距離に難があったIL-62の初期型ではなく性能向上型のM型のみを受領している。

朝鮮民航の時代は90年代まで続き、現在の高麗航空へ変更されたのは93年。

監督官庁となる行政部門と実際に運行する営業部門に分割され、後者が現在の高麗航空となる。

東西冷戦下では共産圏の国々への路線展開が盛んにおこなわれたため、フリートも拡大され、

冷戦終結直後には

IL-18×4

IL-76×3

IL-62×6

An-24×8

Tu-134×2

Tu-154×4

と30機近いフリートを保有していたが、2022年現在で確認されているのは10機程度とかなり縮小している。

冷戦終結による就航路線の縮小と財務的な問題で機材の維持に支障が出ていた。

特に大きかったのは整備面の問題を指摘されたことによるEU乗り入れ禁止処置だった。

実質的に高麗航空を管理する民用航空局は空軍司令部の基にあり、高麗航空もソ連時代のアエロフロートと同様に軍事輸送も行う空軍輸送部隊の一面もある。

そのため機材の機密保持のためか、登録記号(北朝鮮ではP-〇〇〇と表記され、〇に数字が入る)が書き換えられる事案が確認されている。そのため民間航空としての透明性は確保が困難だった。

機材管理の透明性を高める、、それは北朝鮮空軍の輸送能力を露呈することになりかねないためです。

(尾翼に大きく国旗を描くのは共産圏の国々ではよく見られるデザインです)

就航路線の縮小と北朝鮮自体の財政難は高麗航空をさらに苦しめていきます。

機材の更新を実施できず、旧来のTu-134やTu-154の運用を続けるしかなく、また追い打ちをかけたのが騒音問題でした。

ほぼすべての機材が基準に抵触し、事実上チャーター便でも運行できない状態に。。

(毎年名古屋空港に松茸チャーター便で飛来していたが、なくなったのは、騒音問題でIL-76が使えなくなったためです)

それでも細々とロシア・中国路線を運航していた高麗航空でしたが、主力機材すべてが事実上飛べなくなる事態が発生します。

ダメ押しで来たのはまさかの同盟国・中華人民共和国(以降:中国)における安全管理の厳格化でした。

2012年に中国政府は国際民間航空機関(ICAO)の安全基準に満たない航空機の乗り入れを認めないことを発表。

これにはTCAS装置の搭載義務化なども含まれ、かつ一切の例外を認めない物でした。

結果として北京線やマカオ線に就航していた主力機材のIL-62、Tu-134、Tu-154は全て乗り入れ禁止に、、、

そのため高麗航空はロシアへの一部しか国際線が残らない状態に追い込まれます。

 

流石に機材を更新するだろう、、、

国営だしいざとなればA320とか入れるのでは?

等と憶測を呼んでいましたが、一応HPも持っている高麗航空はこのように公式表明し話題となりました。。

 

「A320などの航空機を導入するには当社は財政上不可能であり、あり得ません」

 

当時、高麗航空で基準を満たせるのはリースで導入していたTu-204の2機だけ。

むろん、2機だけで回せるはずはないので、就航できる航空機の手配に奔走しますが、少ない予算では機材の調達は困難であり、何とか入手できたのがリース導入でAn-148が1機でした。

この後もう1機のAn-148をリースで導入し、ひとまず中国路線が再開されます。

 

なお、この4機のリース機は、状況をあまりに不憫に思ったのか、ロシア政府からの指示があったとかなかったとか、、、

なんとか国際線機材も確保でき、安定的に収益を確保できる、、と思われた矢先、、、

今度は新型コロナの影響を受けてしまいます。

北朝鮮政府が発表した国境封鎖、、

結果として高麗航空はわずかしかない国内線を残し、事実上全面運休に、、、

果たして再び飛べるようになるのだろうか、、、

その時、機材は飛べる状態を維持できているのだろうか、、、

 

 

さて、、次回は高麗航空の国際線を支えた長距離機イリューシンIL-62。

このIL-62を世に送り出したイリューシン設計局が開発したソ連時代初のワイドボディ機に触れ行きます。