1月26日(日曜日)15:00
 斜度30度以上の急斜面。上級者向け不整地。
北海道には4泊5日の予定で滞在中。
それは、三日目の午後の出来事。
ここのスキー場には過去2回きているが、2回とも
風邪を引いてしまい相性が悪い印象。
今回は、天気にも恵まれ、美味しい料理を食べて
スキーのトレーニングも順調。
さて、最後に不整地(コブ)の練習いっとくか。
ちょうど、スキーパトロールの人たち3人が、コブの
メンテナンスをしながら降りていった。
「今なら、怪我してもすぐに助けてもらえるよ~」
と、同行者に冗談を言いながら、颯爽とコブに挑む。
太陽が傾いてきて、雪面が固めになってきていることに
気づいてなかった。
ちょうど真ん中に差し掛かった時。
コブの溝にスキー板の先端が突き刺さってしまったが、
そこを、無理やり、ターンしようと廻そうとしたために、
スキー靴を支点にグシャッと。(音がした気がした)。
「(あ~、やっちまった。)」
折れたと思った。スキーは雪面に突き刺さったままで足が動かせない。
足首あたりの感覚がない。よく大怪我すると痛みがないって
いうのはこのことかと理解した。足の指は動いてる。
すぐに、斜面の下にいたパトロールに大声で助けを求めた。
パトロールの一人が、50メートルぐらい急斜面を登ってきて
くれた。相当な運動量だ、しかも自分の板を抱えて。
パトロールの方は、急斜面の不整地という悪条件にも
関わらず、板を外して、靴の上から足首を固定。
仲間のパトロールと麓のパトロール室まで下す準備の無線連絡。
遭難者がよく乗せられるソリみたいなのに
乗せられた。乗せられる時に初めて激痛。
下まで3キロぐらいあったよな~、時間かかるんだろうな~。
と覚悟していた。
ソリに横たわるとファスナーの隙間から空がチラッと見える程度。
だから、どこを滑っているのか、どれくらいのスピードか見当も
つかない。
「じゃ、行きますよ。」
雪を滑る振動と音を聞きながら、これからどうなるんだろうと。
あっというまに、パトロール室到着。
同行者(SAJ1級保持者)の話では、一緒に滑ってついてきますか?と
聞かれ、行きますと答えたものの、
凄いスピードで降りていったそうな。
普通のスキーヤーだったら追いつけないんじゃないか?と。
プライズテストを目指す同行者のスキー技術も発揮できた模様。
まぁ、さすが北海道、パトロールのスキー技術とレスキューのレベル
の高さを見せつける。
足首の上を動かすと激痛が。事の重大さに、顔面蒼白。
痛さより、大怪我に対する恐怖心で寒気が。
パトロールの方、3人。ゴーグル、ヘルメットをとると、
みんな若いし、なかなかのイケメン揃い。
これは、女性ならイチコロだな。
救急車、到着。救急隊に引き継がれる。
幸い、スキー場近くの病院が収容してくれるらしい。
病院到着。なにせ、救急車からすぐに、建物に入ったので、
ストレッチャーで上をむいたままなので、どれくらいの
規模の病院なのかわからない。
後から考えると、日曜日なのに、スキー場近くの
施設の整った病院の整形外科の医師が
担当してくれたのはラッキーだった。
レントゲンをとるために、スキー靴を脱ぐことになった。
普段から、締め付けの強い靴で、履くのも脱ぐのも
一苦労で足をねじ込んで履いてる靴を、この激痛で
脱ぐ?。医師と看護師さん、「痛いけど我慢してね」
と躊躇ない。「ギャー!!!!!」
絶叫がこだまする~!!!!。
男なので涙はみせませんでしたが、流石に声を
出さずにはいられませんでした。でも、なんで、
大声がでるかわかったような気がします。
大声をだすことによって、痛みを緩和させる効果が
あることが実証されました。今後は、痛いときは
大声を上げるべきです。人間の体はうまい具合に
できているんです。
レントゲン撮影終了。
軽い打撲であってくれ。一縷の望みは完全に
ぶったぎられました。
ちょっと離れたところで医師と看護師さんが、
レントゲン見ながら
「どうやったら、こんな折れ方するかな?。」
「ゴニョゴニョ(小さな声で聴きとれず)」

それを聞いて
「ひえ~終わったな・・・・・」

医師がやってきた。40代の方で、穏やかな口調で
「脛の大きい骨が、かなり粉々に折れてます。折れた骨が
散らばって足首の関節に入ってしまってるかどうかCTで確認します
もし、関節に入っていたら大手術になります」

CT撮影終了。
幸い、骨は散らばっていなかった。

まず、応急処置のまま、広島に帰るかどうか聞かれた。
こんな状態で飛行機で帰る選択肢はあるはずもない。
ここでの手術をお願いした。

医師から手術方法について説明。
「脛骨が粉砕してます。細いほうの腓骨も折れてます。
腓骨は、脛骨がうまく形が整えば何もしません。
腓骨は無くてもいいので。脛骨は、二通りの方法が
あります。それぞれ一長一短がありますが、
今回は、膝の上から髄内釘を骨の中にいれます。
そとからプレートで固定する方法もありますが、
傷口が大きくなって感染症の危険もあるので。」
一番心配だったことを
医師に恐る恐る尋ねた。
「元通り歩けるようになりますか?。」
医師は自信ありげな顔で即答
「大丈夫、してあげますよ」
まじ、感動した。この医師に任せようと決めた瞬間だった。
手術は翌日だと言われた。ただし、これから足が腫れた場合は、腫れが引くまで、
手術はできないらしい。ただ、腫れないように予防処置はするからと。
えっ、今すぐじゃないの?。のんびりしてて
いいの?。
だが、後に、転院した病院で骨折仲間に聞くと、
骨折して翌日にすぐ手術したひとは少なく、1週間待たされたとかざらだった。

医師が、おもむろに、
「骨が潰れてしまって、足が縮んでしまってるので伸ばします。」
といって、足首を持って引っ張ってみせる。
持たれた瞬間は激痛だけど、引っ張られると痛みが無くなる。
医師はニヤリと笑って、
「こうしてると楽でしょう?。
でも、私が明日までずっと引っ張ってるわけにいかないのでね・・・。」
今から思うと、それは、患者をリラックスさせようと、冗談のつもりだったのだろうか?。
入院中、無口な医師から聞いた最初で最後のジョークだった。

その後に、聞かされた衝撃の宣告。
「かかとに穴開けてワイヤー通して、おもりぶら下げて引っ張る処置します。」
ガビ~ン。なんか、聞いたことある。ドラマとかで足をつるしてるあれか。

即入院となり、整形外科病棟の個室に移動。
医師がやってきて、「かかとに穴開けますね。」
麻酔後、チュィーンとドリルの音がする。
処置はあっさりと終わった。
痛みはない。けど、ないのがかえって不気味。
腫れが出ないように、サランラップみたいなので
脛のあたりがぐるぐる巻きに。
手術は、明日の午後1時からと告げられた。
ベッドの上で寝返りも打つことができない状態。
眠れぬ長い夜になりそうだ。