初めは『デビルマン』の偽物かと思いました。人間とモンスターが融合して苦悩する物語でしょ?なんてね。でも、違いましたね。ひとつのしっかりした名作です。

さて、何度読み返しても「パラサイトがなぜ生まれてきたのか」は分かりません。田村玲子や広川あたりが語ってますが、結論はないんですよね。何となくそうかな~って説得力はあるんだけど、はっきりと解明されてません。


また、解決もしてないんですよ。だって全滅させた訳じゃないし、これからもパラサイトはあちこちで生き続けるんですから。と言うことは、パラサイト問題については未完なんですね。


この寄生獸に関しては、そこが名作の所以なんだと思います。
作者はパラサイト問題を解決させようとか、解明しようとか、ましてや人類vsパラサイトの戦いなんて描きたかった訳じゃないですよね。


常識外れの存在ではあるけど、パラサイトをあるものとして認知し、そんな常識外れの存在を描くことで普通の人間を浮き立たせ、人間ってモノを描いてるんだと思います。


広川の演説とか、田村の問いかけとか壮大なテーマを語りかけてますが、そんな壮大な言葉とは裏腹に、泉新一が後藤にトドメを刺すときの言葉。
「オレはちっぽけな…一匹の人間だ」
「せいぜい小さな家族を守る程度の…」
この言葉、人間の本音でしょ?言葉だけ聞くと、弱々しい言葉ですが、一番しっくりくるんですよね。

泉新一がミギーが混ざり合って強くなっていく過程で、もしかしたらパラサイトとの対決物語になっちゃうのかな・・なんて思いました。そんな展開は十分に有り得ることですね。その方が派手だし、解りやすいですからね。上手く書けば『ゴッドサイダー』やら『ジョジョ』やらと同じような感じに持っていけますもんね。


でも、そんな安易な物語になってしまうこともなく、物語を壮大に広げすぎず、小さな存在の人間の本音を描いた作品です。『デビルマン』は人類の弱さ、『寄生獣』は人間の弱さ、ってところでしょうか。

そんな弱さを本音で描いたマンガですね。


泣きました。ズルいよね、人の生死を現実的かつドラマチックに描いたらそりゃ泣くよ。題材がそもそもズルいもん、人命救助の海上保安官なんて。それをあの暗い雰囲気だすのが上手い佐藤秀峰が描いたらやられるよね。

最初見たときはイマイチ手がでなくて、私が読んだ時はすでに連載が終了していて全巻揃っていたときでした。というのも、最初はヒーロー的なマンガかな?なんて思ってたんですよ。『め組の大吾』なんて大好きだったので、特にキライな分野じゃなかったんですが、なぜか手を出さなかったんですね。鍛えて、助けて、涙する、そんなマンガだろうと思ってたのは確かですけど。

たぶん神様が全巻揃うまで私と『海猿』を出逢わせなかったんでしょうね。。


そんな私がなぜハマッたかとゆーと、“人が助からないマンガ”だから。もちろん全員助からない訳じゃなくて、助かるパターンが多いです。でも、死んじゃうんですよね、大切な人物も見ず知らずの人も。
人が死んでしまう物語って沢山あります。『北斗の拳』なんてみんな死んじゃう。だからと言って今まで泣いたことなんてほっとんどありません。
でも、なぜか海猿は泣きました、なぜでしょうかね?
多分やりきれないからではないでしょうか。登場人物に共感して、そんな彼ら彼女らの現実世界に知らず知らず浸かってるから、死んだ時にやりきれなくなるんでしょう。現実は『ドラゴンボール』のように生き返れません。『北斗の拳』のように死兆星を見ることもできません。何も変わらない日常に突然襲い掛かる事故・事件、そんなリアルな状況や心境をちゃんと描ききっているから感動するんですね。

さすが佐藤秀峰の世界は暗いです。『ブラックジャックによろしく』なんて非常に暗い。やっぱり生死を画いているだけあって、どうしても悲観的な物語になってしまいます。しかし、物語が悲観的だから暗いんじゃないんですよ。人間の苦しみや悩みにもきちんとスポットを当てて、弱い部分をしっかり見せているから暗く感じるんです。

そんな暗さがきちんと表現されているので、明るい時との対比が非常に光ります。たか子の「枕がオヤジ臭いの」ってセリフが日常的な幸せを最大限に表してます。だからこそ子供を救う時のどうしようもない絶望感と彼女の流す涙が心に沁みてくるんですね。
驚くのは、こんなドラマがわずか全12巻。ありえません。

このわずか12巻の佐藤秀峰の暗さにどっぷり浸かってください。

“いまどきのこども”で人気を博した、玖保キリコ。彼女のマンガは画が良いですね。ほのぼのしてますが、ただのほのぼのではなく、強い印象が残るタイプの画です。
彼女の作品『バケツでごはん』でもそれは発揮されてます。
動物園の動物たち。彼らはホントは人間と話せる、という設定で電車で動物園に通勤してます。動物たちは芸人に近い存在。主人公は変な関西弁を話すペンギンのギンペー。彼は人一倍芸に厳しく仲間にもダメ出ししたり、芸について悩んだり、非常に人間っぽいです。そんな主人公と見た目のかわいさだけで偉ぶっているパンダのロンやギンペーに弟子入りしたサンペーなどとおりなす動物園での物語となっています。


動物園の動物たちなので姿は愛らしくカワイイのですが、その内容は仕事哲学、人間哲学と言っても良いでしょう。仕事に対してある程度アツい気持ちを持ってる人なら絶対共感できるはずです。なぜならこの主人公のギンペー、プロです。仕事に対しての姿勢が自分にも仲間にも真面目で厳しいんですよ。
そんなギンペーに対して当初は周囲から賛否両論もあるのですが、だんだんと周囲を巻き込んでいって変えていきます。また、転職やヘッドハンティングされた同僚との軋轢なども描かれていて、結構実社会を反映しています。


これが動物園じゃなくて単なる会社物語だったら実につまらないマンガになってるでしょう。それが楽しく仕上がっているのはストーリーの作り方はもちろんですが、玖保キリコの画力/センスによるものが大きいのではないでしょうか。
さて、この主人公ですが目が三日月を横にしたイヤミっぽいいやらしい目をしてます。主人公にあるまじき目ですね。しかし物語が進むにつれそれが愛嬌となり特徴となって愛らしさすら感じるから不思議です。そして、そんな愛らしさが仕事哲学・人間哲学をオブラートに包んで、楽しめる絵本のような作品に仕上がってます。やっぱり玖保キリコの画力/センスなんでしょうかね。
仕事してる人に読んで欲しいとは思いますが、“いまどきのこども”にも読んでもらいたいですね。
お後がよろしいようで。