心あんず


こいこいと両手を差し出す主 
目の前にパッと出現
ヨチヨチ感覚は主の顔にあった

主は牛を操って水田に小春日和を取り込む

桑の果汁をせめてもと一歩先へ

乾燥ナツメ 乾燥イチジクを弾き出す

折り返しをなだらかに足踏み

田植え足袋ごしの麻痺を杏に秘めて童心を耕作 童子へ赤々と心あんず


赤犬 桑の果実 幸田文

主が読んだ聞かせた教科書は湿って霞むオアシス

主を黙想する夕焼け雲へ旅愁


乾燥した砂漠に一頻りの雨よ

細い直線を心あんずと潤して