現在、JBL 2115 と 075 の帯域分割はLCネットワーク(以下LCと略す)を使っています。
以前は、チャンネル・デバイダ(以下チャンデバと略す)を使った期間も有りました。
どうも、私の使ったチャンデバは、結果的に上質な部品を使ったLCには勝てません。
市販のチャンデバが汎用性を持たせているのが、多分、最大の原因と思います。
(入力から出力まで非常に多くの部品を通り、影響を複雑に受けるのでしょう。)
まず、使用中のLCがどのようなものかを紹介します。
回路は以下のようで、高域遮断・低域遮断は、2次の遮断特性になっています。
コイルは空芯でOFC線を巻いたものです。
(コア入りのコイルは、やはり磁性材料のヒステリシスの影響で歪み、音が濁ります。)
コンデンサは、音質に大きな不安のある電解型は使わず、全てフィルム型です。
特に JBL 075 用の直列に入るものには、双信のポリカーボネート型等を使っています。
レベル調整には、巻線2組連装の高耐入力のものを使っています。
(高耐入力である必要は無いのですが、抵抗体とブラシの接点が並列なのがメリット)
特性はこのようになっています。
このLCによる分割で、良好な音質を得ていると思います。
これまで使ったチャンデバを紹介しておきます。
一番良かったのはPioneerのD-70という製品です。
(40年位前の旧い製品で、定価45,000円だったので、現代だと8~9万円位でしょう。)
回路はOPアンプICを使わず、全て個別のトランジスタで構成されています。
(その頃の安価なOPアンプICの性能はあまり良くなかったのが原因か?)
まぁ、定電圧電源の出力電圧が±30Vと高いのでOPアンプICは使えませんが。
以下はネット上にあった回路図で、非常に不鮮明ですが、全体の雰囲気は掴めます。
内部を見ると、周波数設定のコンデンサは誤差2%級のスチロール型で上質です。
(大量生産機で使用されるコンデンサとしては、スチロール型がNo.1の音質です。)
周波数切替はアルプスのカスタム品のステップ・アッテネータです。
レベル調整は帝国通信の1dB・32ステップのアッテネータです。(多分カスタム品)
全体として、アマチュアが真似して作れるシロモノではありません。(特にアッテネータ)
全体に非常に高級な思想で設計されています!!
実際に測定すると、非常に低歪で、20Hz~10kHzの1Vrms出力で0.0015%以下でした。
遮断周波数の設定、出力レベル調整の設定は共に非常に正確で、文句ありません。
測定上優秀で、良質な部品を使っていても、残念ながら良質なLCには勝てません。
チャンデバによるマルチアンプから、LCに変更した時の「メモ」は以下の内容でした。
★マルチアンプよりもLCの方が歪感少なく、滑らかで柔らかい。(雑味が減った?)
定位は非常にシャープでありながら、空間に(奥行きも)豊かに拡がる!!
チャンデバで、LCを上回る音質を実現する方法は考えていきたいと思います。
(LCの方が絶対的に優位とは考えていません。思想は柔軟に)
D-70以外に使ってみたチャンデバは、多くが業務用の製品でした。
以下は、その内容と、使った時の感想等です。(いずれも音質はD-70に勝てません。)
【dbx 234XL】 (Cは普通のマイラー)(OPはLF347,NE5532,TL074,LF353)
・結合コンデンサが極端に少ない!
・音は透明感高く良好!(但し、ノイズはSony MU-C031より多い(感覚的に倍位)
【BEHRINGER CX2310】 非常に高歪(0.5%!)原因は高誘電率セラミック(表面実装)C
・目盛が合っていない
・dbx234XLと音質比較:透明感が大きく劣る 低域伸び感が劣る 高域ザラつき
・結論:音は良くない! 又、音以外にも良い点が見当たらない。 買って後悔
・一部では絶賛されているようなので、期待しましたが、個人的には失望しました。
【RAMSA WZ-9420A】 (Cは普通のマイラー)(OPはNJM4560,NE5534)出力リレー有
・ノイズは、dbx 234XLよりも少し少なく、音は良いみたい!
【ART CX311】 (Cは普通のマイラー)(OPは全てNJM2068)設計はUSA、製造は中国
・目盛が合っていない(理由:周波数設定VRがBカーブの為(他社のはCカーブ))
・VRの質はあまり良くない。減衰量のバラツキが大きい。
・両ch共に15kHz強で-3dBとなっている。(入力のCR値の設定が拙い⇒一応修正)
・改造:電解⇒OS、マイラー⇒スチロール だが音質は良いとは言えない! 残念
【DOD SR835】 (Cは普通のマイラー⇒PP&スチコン)
(OPは全てKA4558、良くないので⇒NJM072)(入出力の電解⇒Film) 音の感想無
【Sony MU-C031】 (Cは普通のマイラー)(OPはTL072,AN6558) 2次のバタワース
・改造:電解⇒OS 音の感想無
どれも、D-70と比較すると負けるなぁというのが実感でした。
コンデンサを交換しても、音質が大幅に良くなったと感じられないのも残念でした。
数回通るボリューム類の質が一番の問題なのかもしれません。
(又、特に高域出力側の、入力から出力に至る経路に直列に入るコンデンサも問題)
その辺りを改善すればLCを上回る結果を得られる可能性が有ると思います。