A級BTLパワーアンプの音が、単なるA級や、B級よりも良い理由は何でしょう?
パワーアンプの音が何故出力段の動作形式に左右されるのでしょうか?
更に電源回路に用いる部品の影響を受け、果ては壁のコンセントや柱上トランスまで・・・
極端に言えば、発電所を含む全ての構成要素の影響を受ける事になるのでしょうか?
これは、パワーアンプ出力の変動が電源系の電流を揺さぶるのが原因です。
(音の大小の変動ではなく、瞬時々々の変動の事で、音声出力に伴い、必ず起こります。)
例えば整流用コンデンサの影響がスピーカ出力に混入する事で余分な音が加わります。
40年位前、会社でHiFiアンプ設計をしていた時に部品の音の差を聴く機会がありました。
整流用コンデンサをメーカー別・タイプ別に聴き比べて、意外と違うのに驚きました。
結合とかRIAA用のコンデンサ、音量調整用可変抵抗器も音質・音色に違いがありました。
アンプ回路の信号経路の主に直列に入る部品は、試聴による選別が欠かせません。
電源系は、発電所まで遡る事を考えると、極力信号成分の変動を抑える事が肝要です。
ここまでが前振りですが、パワーアンプ形式の違いによる電源電流の波形を紹介します。
入力信号は1kHzの正弦波で、出力電流が0.5Arms(0.707Apeak)という一定条件です。
■B級(AB級)の電源電流の波形を示しますが、まるで半波整流したような波形です!
信号の正側と負側で出力素子が切替わる事で効率良く動作する目的なのでこうなります。
この波形を見ると「へぇ~!」と驚かれる方も居られると思います。
こんな歪んだ電流が電源回路に流れ、そのインピーダンスに応じた電圧が発生します。
それがスピーカに混入し、音を濁らせると考えられます。
■次に、A級の電源電流の波形を示しますが、まるで信号そのもののような波形です!
信号の正側と負側で出力素子が切替わらないアイドル電流としているのでこうなります。
歪まない電流が電源回路に流れ、そのインピーダンスに応じた電圧が発生します。
それがスピーカに混入しますが、B級と比べて音を濁らせる量は少ないと考えられます。
■A級BTLの電源電流の波形ですが、僅かに2次の成分が見られますが、ほぼ直流です!
2台のアンプが逆相で動作しており、その動作電流の変動も逆相なので、打ち消されます。
出力パワーMOSFETの特性が完全に揃っていれば、完全に直流になる筈です。
実際には特性がバラついているので、キャンセルし切れずこのようになるのでしょう。
それでも、B級やA級と比べると遥かに電源の影響を受け難いのはお判り頂けるでしょう。
大変音の良いパワーアンプとなりますが、回路数が2倍になるのだけが弱点です。
ですが、前項で紹介した回路であれば、割と気軽に導入して頂けると思います。
私はこのアンプと Foster 10F3+JBL 075 で、毎日、近接視聴を楽しんでいます。