四十数年前からアルニコ・フェライト両磁石で差はあるのか? と疑問を持っていました。 

勿論、同一メーカー製で、磁石以外は基本的に同じ材料・構造というのが前提です。 

「違いはある」という意見の一方、「違いなんて無い」という意見も有るのは存じています。 

ですが、誰でも入手出来る製品を実際に聴いて比較した話は聞いたことがありません。 

なかなかチャンスが無く、試すことが出来なかったのですが、ようやく比較出来ました。 

 

入手したのは、程度の良さそうな、大昔の箱入りスピーカ・システムです。 

現行品の新品で比較出来れば良いのですが、なかなか難しそうで、昔のものにします。 

1960~70年代のFoster BF-103S と、1970年代のFostex G103です。 

大きさは同じで、10cmユニット一本入りという点も同じです。(密閉とバスレフの違い有り) 

ユニットを除く箱の重量がBF-103Sは約3kgでしたが、G103は何と約2.2kgしかありません。 

箱の材質と構造が異なるようで、箱入りの状態では残念ながら比較出来ません。

BF-103SとG103を一緒に並べて撮ったので、大きさが同じなのが判ると思います。

 

中身を取り出したところ、BF-103Sは前回同様幸運にもアルニコのFoster 10F3でした。 

一方、G103の方は、フェライトのFostex 100K03でした。 

どちらも有名なFE-103の前身(或いは同等)と言うべきユニットだと思います。 

多分生産時期は数年違いますが、概ね50年程前の数年差は無視しようと思います。

背面及び横から眺めると磁石の違いがよく判ります。 

 

取り出したユニットを眺めてビックリしたのが、【4本共エッジが剝れている!!】事でした。 

大昔のユニットは、エッジが剝れていたり、ダンプ剤の硬化・揮発の問題が有ります。 

今回のは4本共に見事に全周エッジが剝れ、ダンプ剤が硬化・揮発していました。

 

こんな状態では正常に鳴らせないので、まずは、修理です。 

エッジ用接着剤で貼り付けて、更に軟化剤を塗布しました。

 

これで、ようやく音を聴くことが出来ます。(尚、コーン紙の触感と叩いた音は同じでした) 

その方法ですが、箱に入れると箱の響きが付加されるので、裸で卓上に置いて聴きます。

10F3の左右間隔と、100K03の左右間隔は同じになるように置いています。 

こんな感じでパワーアンプの切替機能で切り替えて鳴らします。(MOSFETに依る切替) 

まずは、慣らし運転で、両方とも微小音で8時間鳴らしておきました。 

 

鳴らす環境は以下の通りです。 

・プリアンプ:自作 230Hz以下を1次上昇でバスブースト DC付加(SPに120mV印加) 

・パワーアンプ:自作 4.5W x2 A級BTL(MOSFET出力 Marantz SM-50 の筐体を利用) 

・音楽ソース:Diana Krall の Live in Paris の5~6曲目(アンプ出力はピークで0.1W程度) 

・SPユニットとの距離は約40cmで近接試聴(バスブーストを掛けているので低音感有) 

 

比較するまでは、ひょっとして「差が判らないのではないか?」と思っていましたが・・・ 

 

結果は・・・・結構、差が有る様に聴こえ、私にはアルニコの10F3の大勝利に聴こえました。 

【10F3】は100K03と比較して以下のように、かなり優れていました。 

・拍手が分離して聴こえる。(ライブ音源なので、重要な要素) 

・前後の奥行き感が出る。 

・シンバルの金気らしさが良好。 

・全体に付帯音が少なく雑味が少ないように感じる。 

・空間の透明度が高く、又。広く感じる。 

 

【100K03】は10F3と比較して棘が有る様な感じに聴こえました。 

・拍手が団子になり、濁る。 

・前後が薄く、音像がやや前に出る。 

・シンバルは濁り耳に刺さる。 

・全体に付帯音が気になり雑味が加わったように感じる。 

・空間の透明度が低く、又、狭く感じる。 

 

★結論 

やはり、「アルニコは良いなぁ!!」と言えると思いました。 

個人的にはこれでスッキリしました。 

「旧い製品で雑な実験なので参考にならん!」とのご意見は有ると思います。 

本当は磁石以外は、同時期に同じ材料で造られた新品同士で比較すべきでしょうね。 

それが叶うようなら、楽しいだろうなぁと思いました。