今まで何台かSony MU-A051という業務用パワーアンプをヤフオクで入手しました。
信頼性重視の設計で、非常にゆとりのある部材の使い方で好感を持ちました。
低損失のトロイダル・トランスをチャンネル別に使い、整流のコンデンサはAudio用です。
放熱器も出力(8Ωに対してたったの30W)の割に大きく、且つパラ・プッシュとなってます。
これまで、これを少し改造してDCアンプにして使っていました。(良質なアンプです)
これをベースに改造して更に音の良いパワーアンプを作ります。(目標最大出力5W程度)
【設計の方針と内容】
1.電源トランスは、元は並列接続ですが、直列接続とし、且つ片方の巻線だけ使います。
片方の巻線だけを両波整流し、1/2分圧して中間電位を作ってGND用とします。
BTL方式のパワーアンプとする事でスピーカ出力を取り出す電流はGNDに流しません。
アンプへ印加する電源電圧は、元の1/4以下となり、小出力で且つ低消費電力です。
目標は最大出力5Wなので、これで十分です。(普段は最大でも0.1W出ていません。)
2.回路構成は、極力「出力段の音声電流の変動」が電源に流れないように工夫します。
電源回路の音質に与える影響は無視出来ません。(トランス、ダイオード、電解コン等)
会社でHiFiアンプの設計をしていた頃、電解コンデンサの音色の違いに驚きました。
スピーカ電流は電源電流の変化として電源回路を流れます。(果ては発電所!)
電流変化を抑える事が出来れば音質が向上し、無駄なコストの上昇を抑えられます。
採用した方式はA級BTLで、必ずしも最大出力までのA級動作は欲張りません。
普段のピーク出力は0.1Wも出てないので、1W出力までA級動作させる事にしました。
BTLアンプの場合、正相と逆相の各アンプの電源電流の位相は逆になります。
A級の場合は電源電流は歪まず、位相が逆なので、電源回路の電流はDCになります。
この状態で動作させれば、スピーカに流れる電流は電源回路の影響を受けません。
理想的動作ですが、代償はアンプの回路数が2倍、A級なので消費電力大となります。
正相側は非反転回路、逆相側は反転回路としたのですが、なんとなく気に入りません。
正相側の帰還回路がGNDに僅かながら信号電流を流すのはスッキリしません。
又、プリアンプから見た負荷抵抗が小さい(約9.7kΩ)のも何とかしたいところです。
次回作では、もう少し考えたいと思います。
3.電圧増幅段には、入力側に与える制約が少ないFET入力OPアンプICを使います。
今の時代は低歪・ローノイズ・低オフセット電圧の品が安価で入手出来、有難いです。
今回は、BBのOPA2134を使いました。(昔はTL072やLF353位しかなかったです。)
昔(40年位前)の私なら入力にはDualFET、段間と出力にも最適なFETを使うところです。
4.背面パネルを改造してRCA入力端子に変更します。
5.音声信号が通過する抵抗は極力音質低下の少ないものを選びます。
昔入手した進工業の角板型金属皮膜抵抗器を使っています。(銅リード)
6.電源ON-OFF時のノイズ防止・短絡保護にカチカチと煩いリレーを使わずに済ませます。
低電源電圧で動作するOPアンプを使い、BTL構成とする事でポップノイズは出ません。
Q2,Q6に流れる電流がQ4,Q8の最大ベース電流となり、出力短絡も問題ありません。
7.スピーカの微小信号リニアリティーを改善する為、後からDC付加機能を追加しました。
これについては後日改めて触れる予定で、余韻の長さに大きな影響がありました。
【内部の基板の様子】
≪左≫元の状態 ≪右≫作成した回路に総入れ替え
【回路図】
回路は、OPアンプICのお陰で割と単純・簡単ですが、パワー・ユニットは独自構成です。
電源電圧が非常に低いので一般的なダーリントン回路ではロスが多く出力が下がります。
ロスの少ない異極性ダーリントン回路を採用し、Q1,Q4,Q5,Q8を放熱器に取り付けます。
その効果で終段のアイドル電流は[時間の経過][温度の変化]にも非常に安定しています。
【出来上がりの外観】
パネルの色は、黒⇒深い青に塗り替えましたが、文字入れはしていません。
【性能】
■出力5W時の入力電圧は0.97V
■F特はDC~20kHzで平坦
■残留ノイズは0.18mV
■出力5W時の1kHz歪率は0.002%以下
■1kHzで1V出力時の出力抵抗は0.01Ω(DF800)
■容量負荷0.01μFで発振せず
■DC付加量は0Vから最大+210mVまで連続可変
■消費電力は25W(無信号時) 33W(5W x2出力時)
歪感少なく、定位良く、空間の拡がり良く、非常に良好で、個人的には大満足です。
(勿論、元のMU-A051の改造DCアンプの音よりも大幅に良くなったと思います。)