昨年(2019)末、Nakamichi  High-Com Ⅱ(ノイズリダクション)をヤフオクで入手しました。 

(≪メーター反応せず≫という動作NG品なので、幸い落札額は上がりませんでした。) 

(到着後、内部動作確認を行ったところ、電源回路とメーター及び駆動回路はOKでした。)

 

以前からメーター付きのプリアンプを作ろうと思っていたので、最適の素材となりました。 

回路を作る材料は概ね手元にあるので、回路を設計し、2020年正月に作る事にしました。

 

【設計の方針と内容】 

1.電源回路は流用し、必要に応じて部品を変更(電解コンデンサの入替等)します。 

2.回路構成は、極力「信号電流」が電源及びGND(コモン)に流れないように工夫します。

   電源回路の音質に与える影響は無視出来ないので、内部の信号電流を流しません。

   反転型の回路とする事で、内部の信号電流は電源回路でキャンセルされます。

   結果、電源電流はDCになるので、電源回路の音質的な影響を避ける事が出来ます。

   利得調整の可変抵抗の使い方は、絞り切り側の接続をGNDとするのが一般的です。

   これでは電源とGNDに信号電流が流れ、電源回路とGND系配線の影響を受けます。

   そこで、可変抵抗の絞り切り側の接続をOPアンプの出力とする事で影響を排除します。

   入力端子に接続される抵抗は、一般的に47~100kΩですが、極力上げて1MΩです。

   こうする事に依って接続する機器の負荷電流を低減し、ケーブルの影響も減らせます。

   同様に、後続のパワーアンプの入力抵抗も出来るだけ大きい方が望ましいです。 

3.一つ一つのアンプは、入力側に与える制約が少ないFET入力OPアンプICを使います。

   今の時代は低歪・ローノイズ・低オフセット電圧の品が安価で入手出来、有難いです。

   今回は、JRC社のMUSES8920を使いました。(昔はTL072やLF353位しかなかったです。)

   昔(40年位前)の私なら入力にはDualFET、段間と出力にも最適なFETを使うところです。 

4.メーター及び駆動回路はそのまま使用し、入力切替と利得調整を付加します。 

5.バス・ブースト回路を付けますが、低域以外の帯域に影響を与えない回路とします。

   これは、音量調整後からバス・ブースト調整に入れ、LPFで低域のみ取出し加算します。

   こうする事に依って、ブーストした帯域以外は音質的な影響を受けない事になります。

   一般的な方法では、全帯域が音質的な影響を受けるので、こういう方式を採りました。

6.音量とバス・ブーストの調整は東京光音製のCP(コンダクティブ・プラスチック)型です。

   以下は、昔(40年位前)、会社での業務としてHiFiアンプの設計をしていた頃の話です。

   担当者の皆で試聴室に籠って可変抵抗器の比較試聴を行った事があります。

   Φ24mmの一般品、ステップ変化のディテント型、CP型(当時は松下製)の比較です。

   試聴前の皆の予想では「ディテント型が一番良いのでは?」というものでした。

   聴いてビックリ!! CP型がダントツで良かった事が強烈に記憶に残りました。

   雑味が減り、透明感が増し、音場が拡がり、静かになり、音量を上げる事が出来ます。

   という過去の鮮烈な記憶があるので、東京光音のCP型を使う事にしました。 

7.スピーカの微小信号リニアリティーを改善する為にDC付加調整を付加します。

   これについては後日改めて触れる予定ですが、余韻の長さに大きな影響があります。 

8.パワーアンプ・DAC等の電源を一緒に入切する為に連動のACアウトレットを付けます。 

9.メーターの照明は電球を止め、LED化します。 

10.背面パネルを改造して入力端子を増設します。 

11.音声信号が通過するコンデンサと抵抗は極力音質低下の少ないものを選びます。

   入力から出力までの経路で入っているコンデンサは1個だけです。(全帯域側)

   使用したのは日本ケミコンの音響用PPコン2.2μF/400Vです。(銅リード)

   メタライズフィルム型ですが、緊密に巻いており、フィルムが振動し難い構造です。

   抵抗は昔入手した進工業の角板型金属皮膜抵抗器で、これも銅リードです。 

12.電源ON-OFF時のノイズ防止にはカチカチとうるさいリレーを使わずに済ませます。

   ミューティング専用に作られたVeboが大きい2SC1636というトランジスタを使います。

 

【内部の基板の様子】 

≪左≫元の状態  ≪中央≫不要な大型部品を除去  ≪右≫作成した回路搭載

 

 

【回路図とパネルのツマミ・レイアウト】 

回路自体は、OPアンプICのお陰で割と単純・簡単です。

 

【出来上がりの外観】 

パネルの色は、黒⇒深い青に塗り替えましたが、文字入れはしていません。 

CP型可変抵抗器の軸形状が異なるので、2か所のツマミは淡い金色にしました。

 

非常に良好な音質が得られていると思い、個人的には満足です。 

(何故か、音量調整時に僅かにジリジリとノイズが乗るのですが、原因不明) 

(それと、メーターの精度がイマイチなのが残念・・・ナカミチなのに・・・)

 

 

【追加】 

性能に関する追記です。 

■出力1Vに対する入力は0.8V 

■F特は20Hz~20kHzで±0.3dB以内 

■残留ノイズは0.05mV 

■出力2V時の1kHz歪率は0.002%以下 

■バス・ブーストの上昇開始周波数(+3dB点)は最大時に230Hz

   (最小から最大への変化時、上昇開始周波数が上昇する。)

   *多様なスピーカの低域端の低下に対する補正にはより適している。

   (一般的な回路では、上昇開始周波数は一定で、上昇量が変化する。) 

■DC付加量は最大+30mV(スピーカへの印加電圧は、パワーアンプの利得の掛算) 

■「Monitor」出力は、「Input」で選択された信号(利得1のアンプを介す) 

■メーターの利得調整は-8dB~+30dB 

■消費電力は5W