中学に上がる頃だっただろうか。ある日、私はその扉の前に立ち、中に入りたい衝動に駆られていた。多分祖父や父も不在だったのだろう。恐る恐る大戸にてをかけ力を込めたが、びくともしない。どこかに鍵があるのかと探してみても見当たらない。諦めて戻ろうとしたその時、後ろから祖母の声がした。
「あっちゃんや その部屋に入りたいんか?」
恐らく私の行動の一部始終を見ていた祖母は
「もう大きなったから 入ってもええやろ」
と大戸の上部にある細い添木を右に動かした。そんなところが動くんだ・・・。
右に動かした後、直角に接続されていたもう一つの添木を下に引き、更に最初に動かした添木を、今度は左に動かし、もう一段下に動くようになった添木を、そのまま引き抜いた。この扉は、こうして開け方を文字に書いてもわかり難く、ちょっとやそっとでは開けられない、からくり扉だった。
「重い扉やから あっちゃん開けてくれやんか?」
私は無言のまま、何年も入ってはいけないと、言われ続けてきたその部屋の扉に、両手をかけ、ゆっくりと開けた。




3へ続く