夏だ。夏が近くにいる。

暦なんて言葉では騙すことができないほど初夏の顔をした空。青々とした木々。すぐに乾く洗濯物。熱くなる髪の毛。いまはかろうじて冷たい風も直にぬるくなるのだろう。今年はやけに時間がはやく過ぎていく。あっという間に本当の夏がくる。


毎年同じことばかり言っている気がするが、本当に夏が苦手だ。というか、耐性が本当にない。これはもう体力どうこうの話ではなく、ともかく具合が悪くなる。服装は分からないし、頭は回らないかわりに視界とぐるぐると渦を巻く。ただでさえ働きの悪い胃腸は暑さと冷たさでなおさらエラーを起こし、すべてを一旦キャンセルしてベッドに直行してしまう。それは年々加速しているというのに、すでに夏バテを起こしている私は、一体どうなってしまうのだろうか。




ところで、ホームであるHKT48劇場では日々16人での劇場公演を開催している。私の所属するチームHは現在16人で目撃者公演をという演目やっているが、次の公演からは舞台に出演する5人が一時離脱し、空いたところには他のチームや研究生が入ってくれるが、まるまるその場所というわけではなく、チームHのメンバーもまたレッスン場に通う日々を送っている。新たな魅力や見どころが生まれるのがいまから楽しみだ。

余談になるが、慣れてしまっているこのシステムを改めて説明するのは意外と難しいことなのだと最近実感した。公演というパッケージやチーム構成、ポジションやアンダーという制度はそのまま言うとなかなか伝わらないものだけれど、ある時は舞台に、ある時はスポーツに喩えながら説明すると、どの世界にも独特の慣習やルールがあるが共通するシステムも多いらしく、すんなりと伝わった。その発見も面白いものだった。




話は戻るが、私が次に公演に出るのはおそらく夏も真っ盛り。7月半ばになるだろう。これを言い過ぎて忙しさのアピールだと思われるのは嫌だと思うのだけれど、私は多分さみしいのだ。多分これは、単身赴任に近い。その間にステージだけでなく楽屋やリハ中に起こるであろう色々なシーンにいられないことがただたださみしい。そしてなにより、帰ってきた時にはいま目の前にあるすべてが終わっているということが信じがたく、きっと2ヶ月もないにも関わらず随分と先のことのように感じる。そんな時だけ時間はゆっくりと流れるのだ。



それでも、いい顔をして戻ってきたいと思える場所がここにはある。見栄っ張りな私は、みんなの前でちゃんとかっこよくいたい。かっこ悪いところを見せる時も多いけれど、人としてはかっこよく在りたいと思う。それは決して無理をしているわけではなく、そんな風に奮い立たせてくれる存在がいるということが、何も武器を持たない私の最大の強さだと思っている。そう、夏なんかには負けてはいられないのだ。




夏がくる。

私たちは人々の休みにこそ輝く仕事をしている。今年も今年とて特別な夏となるのだろう。


これも毎年言っている気がするが、みんなと過ごす夏に限っては悔しいけれど最高だ。キラキラ、ちらちらと脳裏で思い出させるように光る景色はいつだって夏にある。こんなに苦手な季節だというのに、その煌めきと興奮を中毒のように性懲りも無く求めてしまうのだ。



だから乗り越えなければならない。

その先で、今年も夏が待っている。