ゆめ【夢】将来、そうなってほしいと思う望み。

 国語辞典にはそう書いてあった。私は、この作文を書く時、「夢」について考えた。私には夢と言える物が無い。そもそも夢とは何だろう?と思い私は国語辞典を手にし、最初に書いた物を見つけた。その答えを見て、私は将来って何?と思い再び辞書をひいた。将来とはこれから先のことらしい。という事は、明日も将来になる。私は今まで夢とは自分が就きたい職業の事と思っていた。例えるなら、お花屋さんや服屋さん、おかし屋さん声優さんなど・・・。でも明日が将来なら、明日も生き抜こうと思う事も夢なんじゃないかな?と思う。という事は、老若男女関係無く夢があるという事になる。更に言うと世界中の人々全員がそれぞれに夢を持っているという事。一言にサラリーマンと言っても一人ひとりに任せられる仕事は違う。そう、世界には自分にしかできない事がきっとあるはずだ。私はこの作文を書きながら私なりの夢を見つけた。それは、自分にしか出来ない事を見つけ花が咲き輝く未来を創る為に、毎日、少しでも未来に近づけるよう一歩一歩を大切にして喜怒哀楽を感じながら悔いなく過ごす事だ!  










世の中は卒業シーズン。袴やスーツ、花を胸に飾り駆け抜ける姿をよく見かける。そんななか私は、大人になってからは踏み倒せなくなってしまった宿題のため、どこかへしまい込んでしまった領収書探しに必死だった。自分の行動が自分でも予想外な事が多いため、家中の引き出しをひっくり返していた。すると見つけた卒業アルバム。休憩がてら開くとそこに書いてあったのが、最初の作文だった。恥ずかしくてちゃんと読み返す事はほとんどなかったのだけど、なんとなく読んでみた。すると驚く事に、節々にむず痒くなるような表現や思慮の足りない部分はあるものの、根底の変わらなさに思わず笑ってしまった。そして同時に、あの頃の悩みや葛藤も今この身にあることのように思い出した。



将来の夢とか、思い出とか、何でもいいです。

そう言われたのに全然書き出せなかった。どっちもあるといえばあるけど、ないといえばなくて、困り果てて、確かこれも締め切り間近に書いた。その結果、未来に希望を持っているのかいないのか、よく分からない作文になったのだ。

思えばもっと楽に書いてよかったのだと思う。実際同級生の作文はもっと自由に書いていた。それでもそれが出来ないのがあの頃の私で、だけど、だからこそ今読んでも、分かるなあと思えるのだろう。



そんな12年前の私への返事として、

いまから夢をテーマに作文を書いてみることにした。





将来なにになりたいの?


その言葉はあなたにとって呪いのように聞こえると思う。無邪気に答えられるほどのこどもでも、かと言って現実的に人生プランを考えられるほどの大人でもない。夢を持つ事が人生の必須科目のように感じて、とてもしんどかった事を覚えている。


ちいさい頃からいろんな夢を見てきて、それがころころ変わる自分が悪い事をしているようで、あやふやな人間のようで怖くて、確かにいろんな事をやってみたいけど、もう夢と呼べるようなものでもない。なのに周りは夢に溢れ、キラキラとそこまでの道筋を語る。やりたい事はあるけど、なりたいものはない。それがいまのあなたなのだろう。


あれから12年が経った。倍だ。


こどもと言ってももう中身は大人だと思っていたあなたは、今の私からすると本当にこどもだ。身体も心も幼くて、たくさんの人に迷惑も心配もかけていた。大人になったいま、それがよく分かる。


それでもあなたという人間はもう形作られている。あの時あなたが無理やりまとめたようにたどり着いた「明日も生き抜こう」という、小学生が思うには重く、ポエティックなその夢は、実は、今なお毎日のように心で呟く言葉になっている。


そんな私は今、きっと誰かにとっての夢を叶えた人生を歩んでいる。

夢が叶い、さらなる夢を見て、また夢を見せて、邁進しているように見えているのだと思う。それでも私にとっては、夢を叶えたと思った事がない。あなたが言うように、この仕事を夢見ていたわけではないから。だから本当はいまでもどこか後ろめたさみたいなものがある。


だけど、あなたの書いたその言葉を読んで、いつのまにか夢を叶えていた事を知った。私は今、私にしか出来ない事をやっている。それはタスクとか、内容のことではなくて、あなたが生き抜いてきた過程でつけた価値観やアイデンティティ、そしてあなたが私になるまで生き抜いてくれたおかげで得たたくさんのものが、たった一人の私という人間をつくり、その私からしか生まれないものがいまの生活を作っている。


だけどもし、パラレルワールドやタイムスリップが存在するとして、あなたがそこから今の私と同じ道を選ばなくても、きっとあなたのその夢は叶う。この世の中には「あなたはあなたしかいない」とか、「代わりはいない」とか、そんな言葉が溢れていて、だけどそれを信じることはあまりにも難しい世界だ。だけど今、確かに思う。やっぱりあなたは、どう生きたってあなたしかいないのだと。



だからいまの夢も変わらない。

これからも自分にしか出来ない事をやっていきたい。でもそれは、オリジナリティのある仕事という意味ではなく、私が生きてきた中で得たものを使いながら生きていくという事。そのためにはやっぱり、こころを動かしながら一生懸命に生きなければならない。


やりたい事は山ほどあって、なりたいものは相変わらずないけれど、でもそれでいい。それがいい。だってそれは何者にでもなれるし、私が何者であるという揺るがない事実なのだから。


そしてもう一つ。

いつかあなたに会うのなら、

あなたを裏切らないひとでありたいと、

あなたに寄り添える大人でもありたいと、

いつもそう思っています。


それが私の今の夢だ!