日の入りが早い。

生まれ育った大きな大きな島は本当に西にあるのだと離れた街で実感する。
暮らしの仕草を見下ろしながら、夜になる手前の青みがかった灰色に眠気をかき混ぜたミルクセーキを透かす。氷の方が高い位置にあるそれは、砂時計のようだ。

聞き取るには些かノイズの多い客たちの会話はただのBGMとなり、静寂よりも雑音の中で眠ることに慣れた身体がどんどんと体温を上げるのを感じる。このままここで寝てしまいたい。それが叶わないのなら、せめて、かかとを3回鳴らしたら家まで飛んでいかないだろうか。
そんなことを夢想しても履いているのは草臥れたスニーカーなのだから、そろそろ言葉通りの重い腰をあげなければ。

思考に焦点の合わない煙幕に包まれたような小さな部屋を、街を歩くときの風や空気や日差しが取り払う日がある。今日はそういう日だったようだ。換気は大事なのだなあ。

言葉がとめどなく溢れ出す。
萎れた言葉も愛おしい。

便箋を探しに出よう。
この街で見つけられるだろうか、分からないけど。

とりあえずは角の取れた氷を愛でて、
右と左の色を変えた空気に触れに。