既存薬無効な感染症の最終救済抗菌薬が登場 | 好奇心の扉

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大惨事の陰に隠された知られざる真実に迫ります。
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グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都渋谷区)は、他系統の抗菌薬の効果が認められない緑膿菌感染症に対する治療薬の「最後の選択肢」として、ポリペプチド系抗生物質製剤「オルドレブ®点滴静注用150mg」(一般名:注射用コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム)について、3月26日厚生労働省より製造販売承認を取得した。

この医薬品に関しての申請時の記事は、2014年8月20日付に記載。
http://ameblo.jp/aki-prism/entry-11912571490.html


一般的な緑膿菌
緑膿菌の鞭毛とRNA
一般的な緑膿菌と緑膿菌の鞭毛及び菌内のRNA。


近年、緑膿菌を中心としてグラム陰性菌の薬剤耐性化が進行しており、治療薬の選択肢が限られるなど、臨床上の大きな課題となっている。
新たな抗菌薬に対して、グラム陰性菌の耐性化変異が急速に進み、特に院内感染においては、殆ど効果が期待できない多剤耐性緑膿菌、多剤耐性アシネトバクター属などの、多剤耐性グラム陰性桿菌による感染症の発現が喫緊な問題となっている。

今回承認された「オルドレブ®」は、国内外のガイドラインにおいて、他系統の抗菌薬の効果が認められない緑膿菌感染症に対する治療薬の「最後の選択肢」として位置づけられている。


オルドレブ点滴静注用150mg
オルドレブ点滴静注用150mg:1バイアル



元々「コリスチン(別名:ポリミキシンE)」は、1950年代に日本で発見された、サイクリックポリペプチド系抗菌薬である。
1960~1970年代にかけて「グラム陰性桿菌由来感染症」に使用されてきたが、腎機能障害や神経毒性の頻度が高いこと、βラクタム系およびアミノグリコシド系抗菌薬が開発・使用されたことなどにより、日本国内で注射製剤は使用されなくなり、経口および外用製剤のみが臨床使用されていた。


しかし近年の薬剤耐性菌の出現により、治療薬の限界が見えてきたのだ。


このような状況から、今回の承認には、2009年に「医療上の必要性の高い未承認の医薬品または適応の開発の要望に関する意見募集」が実施された際に、社団法人日本化学療法学会から、「多剤耐性緑膿菌由来感染症」の治療薬として開発要請が提出された経緯がある。

そして厚生労働省は、2010年4月の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で開発の必要性が評価され、製薬会社を募集し、薬剤開発要請がなされていた。



種種の感染症
感染症は、エボラ出血熱やコレラなど、致死性の高い感染症法に記載されたものばかりではなく、
食中毒による感染症や風邪の感染症、集団感染もある結核や
ノロウイルス、RSウイルスなど様々な感染症があり、
歯の治療などの際にも化膿止めとして処方されるのが、抗菌薬(抗生剤)である。



グラクソ・スミスクライン株式会社は、本剤の医療上の必要性を鑑み、点滴静注製剤として、また腎機能障害などの重い副作用の少ない薬剤の開発に取り組んできた。

そして2010年11月には希少疾病用医薬品として指定され、日本の健康成人男性を対象とした第1相臨床試験で安全性が確認された。




「オルドレブ®点滴静注(注射用コリスチン)」の作用機序。
コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム製剤作用機序
コリスチンは、グラム陰性菌の外膜にあるリポポリサッカライド分子に結びつき
細胞の安定性を低下させ、細胞構成物質を流出させて殺菌活性を発揮する。


本製剤は、既存の薬剤では期待できない感染症に対する『最終救済薬』と評価されている。

しかし、副作用の発現など過去の経緯などから、薬剤使用に関しては適応する感染症や患者の選択、さらに投与中の患者の状態観察を定期的に行う必要があり、本薬剤は、承認時までの日本における対象患者が少ないこともあり、製造販売後も一定数の症例が集積するまでは、全症例に使用成績調査を実施することとなっている。


<適応菌種>
コリスチンに感性の大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、緑膿菌、アシネトバクター属。

<用法・用量>
通常、成人には、コリスチンとして1回1.25~2.5 mg(力価)/kg(体重当たり)を1日2回、30分以上かけて点滴静注する。




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