国内初、新型陽子線がん治療装置が製造販売承認を取得 | 好奇心の扉

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日立製作所は、北海道大学と共同で開発した陽子線がん治療装置「PROBEAT-RT」について、薬事法に基づく医療機器の製造販売承認を取得した事を受けて、北海道大学病院内に、新型陽子線がん治療システム「PROBEAT-RT」と付随する医療施設が完成し、本日、2014年3月19日から新開発のシステムを使ったがん治療を始めた。


新たに開発した陽子線がん治療システムは、これまでの従来型陽子線がん治療装置「PROBEAT-III」の構成システムの周長23mだった加速器は、今回の装置では18mに、最大外形長11m、内径3.5mだったガントリーも最大外形長9m、内径2.5mに小さくした事で、システム全体の設置面積は約7割まで縮小した。



日立製作所は、陽子線がん治療の最先端を行く、米テキサス州MDアンダーソン癌センターに2006年、世界最大級の陽子線治療装置を納入して以来、心臓部である巨大なシンクロトロン加速器の小型化や、治療エリアの回転ガントリーの小型化、照射技術の高度化などを進めて来た。


回転ガントリーは、治療台をぐるっと回転しながら360°あらゆる方向から陽子線照射が可能。


今回新たに製造販売承認を取得したのは、スポットスキャニングという照射方式で、これまでの陽子線がん治療は「ブロードビーム方式」と呼ばれ、あらかじめ大きく3次元的に均一な線量分布を形成し、それを患者ごとの腫瘍形状に整形し照射する方法だった。

大強度の陽子線を腫瘍に集中させる事は、呼吸によって動く患部と正常細胞を傷つける恐れがある為、より正常細胞に負荷の掛からない集束方式の研究がなされ、腫瘍を照射する陽子線のビームを従来の方式のように拡散させるのではなく、細い状態のまま用いる照射方式で、それが今回承認されたスポットスキャニング方式である。



照射と一時停止を高速で繰り返しながら順次位置を変えて陽子線を照射することで、複雑な形状の腫瘍でも、その形状に合わせて、高い精度で陽子線を照射でき、正常部位への影響を最小限に抑えられるという。
この技術には北海道大学の「動体追跡照射技術」が用いられ、「スポットスキャニング照射技術」を組み合わせた治療システムとしては、世界初になると言う。


北海道大学に設置された「PROBEAT-RT」は、スポットスキャニング方式にのみ特化した治療システムで、加速装置の大幅な小型・低コスト化が実現した。









新型陽子線がん治療装置「PROBEAT-RT」は、2010年に国家プロジェクト「最先端研究開発支援プログラム」の採択を受けて開発を進めていたもので、北海道大学では更に、呼吸などで位置が変わる腫瘍に対して精度よく陽子線を照射する技術と装置の小型化を進めて来た。

新たな装置では、この分野の先端を行く「分子追跡放射線治療装置」の開発から生まれた、「動体追跡照射技術」を組み合わせる事で、従来型「PROBEAT-III」のような動いているがんの範囲をすべて照射する方法に比べて、照射体積を1/2~1/4に減らし、正常部位への照射を大幅に減らす事に成功した。



ちなみに陽子線治療には陽子を用いますが、重粒子線は炭素イオン線を用い、同じ線量を腫瘍に照射した時の効き目が異なり、重粒子線の方が2~3倍の殺傷効果がありますが、正常細胞もそれだけのダメージを受ける。
しかし今回承認された「PROBEAT-RT」では、その差が縮まり、正常細胞への負担も相当軽減されると期待されます。

特に小児がんのような頚頭部の腫瘍に対しては、高い効果が期待でき、後遺症も軽微なものになると期待出来る。


北海道新聞の記事によると、装置と建物合わせた整備費用は約50億円。治療費は、30回照射する前立腺がんなどで平均約250万円との事。
また先進医療部分については、高額療養費制度の対象とはなりませんが、医療費控除の対象になるとの事である。