血液脳関門通過型ムコ多糖症II型治療剤「パビナフスプアルファ」を承認申請 | 好奇心の扉

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大惨事の陰に隠された知られざる真実に迫ります。
そこには次の大災害を回避するための重要な証拠が必ず残されています。

JCRファーマ株式会社(本社:兵庫県芦屋市春日町)は9月29日、血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」を適用したムコ多糖症II型(ハンター症候群)治療酵素製剤「パビナフスプ アルファ(遺伝子組換え)/開発番号:JR-141血液脳関門(BBB=blood-brain barrier)通過型遺伝子組換えイズロン酸2スルファターゼ」について、厚生労働省に製造販売承認申請を行ったと発表しました。
「JR-141(パビナフスプ アルファ=Pabinafusp Alfa)」は、2018年3月に先駆け審査指定制度の対象品目に指定されています。

 

 

 

イメージ・ムコ多糖症
*写真はイメージです。
ムコ多糖症II型(ハンター症候群)治療酵素製剤
「パビナフスプ アルファ(遺伝子組換え)/開発番号:JR-141」

 


ムコ多糖症II型(MPS:Mucopolysaccharidosis II)は、日本で最も多く報告されているライソゾーム病の一種で、ムコ多糖症は7つに分類され、ハンター症候群はムコ多糖症II型と呼ばれ、ムコ多糖を体内で分解するライソゾーム酵素(イズロン酸-2-スルファターゼ/Iduronate-2-sulfatase)が生まれつき欠損する事で発症する、X染色体連鎖劣性遺伝性疾患で、全身の細胞にムコ多糖が蓄積する遺伝性代謝異常症です。
 ※ムコ多糖は、アミノ酸を含む多糖(ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸)の総称。


ムコ多糖症II型(ハンター症候群)は、中枢神経障害を伴う重症型と、中枢神経障害を伴わない軽症型に大別されていますが、疾患の重なる中間型もあります。

 

 

 

 

 

ムコ多糖症の分類と欠損酵素と原因遺伝子


日本国内に於ける患者数は、約250人(JCRファーマ株式会社調べ)が報告されている。

幅広い症状がある中、よく見られる症状は、記憶・学習障害、発達の遅れ、低身長、骨格変形、特徴的な顔立ち、固い関節、お腹の膨れ(肝脾腫)、臍・鼠径ヘルニア、心弁膜症(心雑音)、中耳炎、難聴など・・・。


これらの症状は赤ちゃんの頃は目立たず、3~5歳頃になるとハッキリして来ます。
重症の患者では、徐々に症状が進行し10歳代になると、歩けなくなる・自分で食事が出来なくなる・自発呼吸が困難になる・寝たきりになる、などの状態になります。

また軽症の患者では、軽度の低身長や心雑音のみで、大人になるまで診断されない事もあります。

▽ムコ多糖症II型に対する既存の治療酵素製剤(エラプレース)は、血液脳関門(BBB)を通過出来ない為、脳内で薬の効力を発揮できず、中枢神経症状に効果が期待できないと言う課題がありました。

 

 

 

 

血液脳関門-BBBの構造と仕組み


血液脳関門は、様々な有害物質から、脳の神経細胞を守るために、血液から脳内への物質の移行を制限する防御機能で、脳の恒常性維持に不可欠となっている。

この血液脳関門は、脳全体に細かく網の目のように張り巡らされ、全長約600~650キロメートルに及ぶ脳毛細血管に隙間なく張り巡らされている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

JR-141_パビナフスプアルファの構造


『JR-141(パビナフスプ アルファ/Pabinafusp Alfa)』は、マンノース-6-リン酸受容体を介した作用に加え、JCRファーマ社が開発した独自の血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」により、トランスフェリン受容体(TfR)を介して血液脳関門を通過させる事で、脳の中枢神経症状に対する作用を期待される薬剤です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

JR-141の作用機序・脳内到達輸送経路


JR-141を52週間投与した国内臨床第3相試験では、トランスフェリン受容体への親和性だけでなく、JR-141が血液脳関門を通過し、神経細胞へ到達する事を確認し、脳の各組織中への治療酵素成分の取り込み、蓄積基質の減少を確認した言う。


主要評価項目とした、中枢神経症状に対する有効性評価の代替指標である、脳脊髄液中の『ヘパラン硫酸』濃度が、全症例で減少し主要目的を達成。
静脈内投与による「JR-141」の脳への薬剤移行や、中枢神経系障害の改善効果において、脳内の濃度が十倍~百倍に上昇する非常に良好な結果を示した。

 

 

 

 

 

 

BBB・血液脳関門通過技術J_Brain_Cargo

 


安全性ついては、「臨床上問題となるような重要な有害事象は認められなかった」と言う事です。



また、JCRファーマ株式会社は10月30日、血液脳関門通過技術「J-Brain Cargo®」を適用した、ムコ多糖症I型(ハーラー症候群、ハーラー・シャイエ症候群、シャイエ症候群)に対する、グローバル第I/II相臨床試験における患者への投与を開始したと発表しました。

ブラジル・米国、日本に於いて、安全性を確認する投与治験が開始されており、この結果に基づいて第3相試験が間もなく開始されるだろうとしています。