14 怪しい調査 | あるハラスメントの告発

あるハラスメントの告発

ある市役所内で実際に起こった「係長の乱」に着想を得て執筆したもので、いわゆるバブル世代の市役所の管理職(バブル時代に市役所にしか就職できなかった人たち)と、一人の中堅市役所職員との壮絶な職場内バトルを綴ったものです。

 私の手元に人事課からある通知が届いた。日付けは私が通報書を提出した日からちょうど10日後の本日付けになっている。

 ○内部通報受理通知書
 ・総務部長 田外秋秀 発
 ・企画調整課 係長 林口朗 宛て
 ・内部通報を受理したので調査を開始する。

 通知書の内容は簡素なもので、受理したのでこれから調査を始めるというものであった。匿名の私への通報の調査がすでに動き出している現状を考えると、随分悠長な対応だと思わずにはいられなかった。

 通知書を受け取った日の数日後のある日、部下の澤田と粟林が順番で人事課から呼び出され、それぞれ30分ほどで事務室に戻ってきた。

 まず、澤田に「人事課の用件はなんだったんだ?」と尋ねると、「それが、よく分からない面談だったんです。相手は人事課の小裏課長で、聞かれた内容としては、職場で何らかのトラブルを見聞きしたことがあるか、という抽象的な質問だったんです。」

 「それで、澤田は何と答えたんだ。」と聞くと、「小裏課長には、そのような事を急に聞かれても思い当たる事はありません、と答えたんですが、小裏課長は妙に納得した表情で、何度も、トラブルはないんだな、という発言を繰り返していたんです。変な面談でした。」とのことだった。

 粟林にも同じことを聞いたところ、澤田と全く同じ内容の返答だった。


 その後、私を除く企画調整課の職員の全員が人事課長に呼び出されていたようだったが、おそらく澤田や粟林と全く同じ面談が行われたのだろう。

 通報の受理通知を受け取った日からおよそ1ヵ月ほど経ったある日、私の元に驚愕の通知書が届いた。

 ○内部通報結果通知書
 ・内部通報審査委員会委員長 副市長 遠藤馨 発
 ・通報者 企画調整課 係長 林口朗 宛て
 ・通報の事実: 確認できず
 ・是正措置: なし

 それは、私が通報した越智のパワハラの事実は確認できず、越智に対する処分などの是正措置は行わない、という審査結果の通知だった。

 このまま終わらせるわけにはいかない。どうしてこのような結果になったのか。


 まずは、人事課長の小裏と話す必要がある。




つづきます