エルネスト・サインス・デ・ラ・マーサは、先のレヒノ・サインス・デ・ラ・マーサの弟で、彼も兄と同様にギタリストであるとともにチェリストでもあったのだが、40代後半には演奏家の道は兄に譲って、作曲家、教師として活躍した。

妻がイタリアのピアニストであったり、ジャズ音楽家との交流があったりして、スペインのギター音楽、というよりも、もう少し幅広い音楽を手掛けている。

この「夢見る小道」も、兄のレヒーノの曲と比べると繊細であり、アクセントの強いスペイン音楽の要素はすくない。

主旋律と副旋律が不協和音を生じてしまうところがある、などは、それぞれを右手と左手で担うピアノ音楽的な面である(ギターではそこまでの声部の分離が難しいので避けられやすい)。

曲はA-B-A-終結、の形。Aは、A-A1-A-A2で、A2はPoco piu animatoと指示されて、短調への転調も含む。
Bは、Tranquilloと指示されて「夢見る」の曲調が表現される。途中で曲調が変わるのでBは、B1-B2の2部構成といえる。アルペジオにのってメロディが奏でられて、ドビュッシーの「月の光」に似ている。B1とB2のあいだにアルペジオの伴奏のない和音が挿入されているのも、月の光を想起させる。

〈演奏上のポイント〉
技巧的に難しい部分はあちらこちらにあるのだか、超絶というほどのものではない。しかし、曲調の変化が頻繁で、これが難度を高めている。つまり、運指というものは、どの音が次のどの音と繋がりが深いか、によって、指にかける力のバランスが変わってくるから、しっくりする力のかけ方の判断が難しい。これをしっかり考えているかどうかで、曲の自然さ、豊かさが大きく変わってくる。

そうしたし箇所はいくつかあるが、この曲ではBの部分が目玉なので、そこでのメロディ声部を意識したフリージングと、そのための運指が重要である。