■今日のショートストーリーを読まれる前に・・・■
夫、剛と離婚して大学生の息子と二人暮しの神乃麻美は、あるビジネス交流会で知り合った三澤と息子の相談をするためにイタリアンレストランで落ち合った。
三澤は尊敬できる男性と思っていた麻美だが、約束の朝、自分は彼に恋をしていることに気づく。
そわそわしい気持ちで約束の時間までを過ごす麻美。
今日は、空気が澄んでいて、透明感があって、寒いけれど風をきって歩いていると気持ちいい冬日だ。
冬の空気が透明で安定しているのは、冬の乾燥した空気が流れ込むことで、汚い空気を払いのけるからだ。
だから、冬は、星空がきれいに見える。
「東京では、きれいな星空は滅多に見られないけれど、今夜の空は星がきれいかも・・・」
麻美は、自分が三澤と星空を見ているシーンを頭に浮かべながら、仕事に向かった。
そして、イタリアンレストランで三澤と食事と共にしたあと・・・
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私たちは、イタリアン料理を満喫し、ワインもかなり飲んだというのに、何だか物足りない気分だった。
「まだ飲みたい気分だわ」
「そうだね。僕も明日は和歌山に出張だけど。そうだ、いいバーがある」
イタリアンレストランから駅に抜ける連絡通路を通り、あなたに導かれて乗ったエレベーターが上昇した。
かなり上の階で降りると、そこは見たことのあるスタイリッシュなホテルのレセプションだった。
そういえば、このホテルにはBFと一度お泊りしたことがある。
「このホテル名は、心の琴線にふれるサービスというのがコンセプトで命名されたんだ。
このスィートルームのバスルームから見る夜景が僕は好き」
と言う物知りのBFと、その彼がお気に入りと言う天空の部屋のバスルームで夜景を見ながらジャグジーを楽しんだことがあった。
私とあなたは、ガラスの橋を通り、レセプションの向こう側のレストラン内のバーカウンターに席をとった。
ここは、ゲストルームの7階分が吹き抜けとなっていて、ビルの中ながら、開放感のあるバーカウンターだ。
食事をするには落ち着かないかもしれないけれど、お酒を飲むには、十分な空間だと私は思う。
「このホテル名は、心の琴線にふれるサービスというのがコンセプトで命名されたんですって」
私は、このホテルのスィートルームで一夜を過ごしたBFから聞いたことをそのままあなたに繰り返した。
「神乃さん、もしかして、ここに来たことあった?」
「はい。あのワインセラーの高さが好き。はしごに乗ってワインを取るらしいわ」
私は、あなたにこのホテルの部屋で朝まで過ごしたBFのことを知られたくないと思い、話をそらした。
「へぇ、そうなんだね。それはたいへんそうだから、ワインのボトルオーダーはやめておこう」
あなたは笑った。
「もうそんなに飲めないわ」
私も笑った。
私は、季節限定のフローズンイチゴとシャンパンのカクテルを、あなたは、モルトウイスキーの何かをオンザロックでオーダーした。
あなたがひとくち飲むごとに氷とグラスが奏でる、軽やかな音が心地よかった。
それぞれの一杯をゆっくり飲みながら、また語り合い、私たちは、今日の夜の数時間でお互いを知り、ずっと前から知っていたかのような間柄になりつつあった。
この時のあなたと私の距離は、仲良しの友達のような感じだった。
時計の短針が0時を回ると、さすがにあなたも翌日の出張が気になってきたようで、私たちは、後ろ髪をひかれつつ、バーでは一杯で終わりにしてエレベーターでそのまま地上に降りた。
ホテルのエントランスにはタクシーがなく、仕方なく、駅のタクシー乗り場まで歩くことにした。
風が冷たかった。
「寒い・・・」
と言った途端、ビル風が吹き、私のアンゴララビットのマフラーが風でひと巻きとれた。
あなたが、そのマフラーを巻きなおしてくれたとき、私はからだがじんと熱くなり、背の高いあなたと向かい合ってあなたの目を見た。
そして、目を閉じて、あなたの唇に自分の唇を重ねた。
ここは、駅前の路上だ。
駅前とはいえ、駅に向かう人たちは連絡通路を通るのがほとんどなので、人気はなかったが。
あなたは、私の唇に応えて、私の肩を抱き、お互いの唇を確かめ合うよう、唇を離さなかった。
しばらく、二人は抱き合ったまま唇を合わせていた。
唇を離した時に、私は、急に我に返り、あなたに謝った。
「・・・ごめんなさい、あなたのクライアント先の近くでこんなこと・・」
あなたは、しばらく私を見ていた。
そして、「もう少し、一緒にいたいね」と優しく言った。
「でもこんな時間に、どこに行こうか。今のバーに戻る?」
と言うあなたに私は「まだやっているお店を探しましょう」と言った。
私は、あなたと何か同じことがしたかった。
二人で何かを探すという作業がうれしく思えた。
それは、今朝、太市に言った「甘いリンゴを二人で味わう」ことと同じことだった。
「焼酎が飲みたいな。これ以上飲むと翌朝お酒が残りそうだ。焼酎ならいいだろう」
「じゃあ、焼酎がありそうなお店を探しましょう」
二人は、深夜の道を歩き出した。
星空がきれいだった。
今日の東京の夜空は、澄み渡っていて、いつもより星がたくさん見えた。
そういえば、今朝、私は、澄み渡った空の下を歩きながら、あなたと星空を見る予感がしていた。
冬の空気が透明で安定しているのは、冬の乾燥した空気が流れ込むことで、汚い空気を払いのけるからだ。
この冬空の下の私たちの空気は、透明で安定していたが、 それは、冬の乾燥した空気とは関係なく、情熱に近い熱く高まった気持ちで覆われていて、その熱い波が流れ込むことで、体裁だとか、そういった余分な気持ちは払いのけられていた。
気がつくと、私たちは手をつないでいた。
唇を重ねた瞬間、何か風のようなものが吹き去って、私たちの関係は完璧に変わっていた。
それは、お酒の力もあったかもしれない。
でも、お酒の力を差し引いても、私たちのお互いの位置が、かなり動いたことは確かだった。
私たちは、駅前のロータリーの少し先に「焼酎と黒豚のお店」の看板を見つけた。
店内はかなり温かく、あなたはカウンターに座るなり、はじめてジャケットをぬいだ。
鍛えられたからだがシャツの上からもわかる。
私もアンサンブルのカーディガンを脱いで、あなたの隣に座った。
「手触りがよさそうだね」
あなたは、私の背中を撫で、アンゴララビットの手触りを確かめた。
さわられたところが熱くなり、私の心臓の鼓動が高鳴った。
そして、さらにあなたは、私の肩をなで、「寒くない?」と聞いた。
私は首を振って、笑みをたたえた。
あなたにとって、私は女だった。
そして、私にとって、あなたは男だった。
さっきまで友達のような感覚だった二人なのに、唇を重ねた途端、二人の関係は別物になっていた。
あなたに肩を触れられ、私は一気にあなたの女になったような気になっていた。
ふと気づくと、あなたの胸元からとてもいい香りがする。
「いい香り」
私は、あなたのからだの香りを子犬のように嗅ぎ出した。
「いい香りだわ・・・何をつけているの?」
私はあなたからオーデコロンの名前を聞き出し、お酒で麻痺している脳に記憶した。
どうして気づかなかったのだろう。
今まで何度も会っているのに、こんな素敵な心地よい香りを。
「いつもつけていたかしら?」
「ああ、つけていたよ」
「なぜ気づかなかったのかしら」
「こんなに接近しなかったからだと思う」
笑いながら、あなたは私の肩を撫でた。
そして、オーダーした焼酎を飲み終えるまで、ずっと撫でていた。
私も飲み終えるまで、あなたの香りを感じていた。
To be continued・・・ Written by 鈴乃@Akeming
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【 路上のキス 後記 】
最近、夜景がきれいです
サロンから見える東京タワーがくっきり!
で、この小説を思い出しました
ここに冬の空がきれいなわけが書いてあります
>そういえば、今朝、私は、澄み渡った空の下を歩きながら、あなたと星空を見る予感がしていた。
>冬の空気が透明で安定しているのは、冬の乾燥した空気が流れ込むことで、汚い空気を払いのけるからだ。
。。。と
でも、この女性は、この星空の下の2人の空気をこんな風に表現します
>この冬空の下の私たちの空気は、透明で安定していたが、それは、冬の乾燥した空気とは関係なく、情熱に近い熱く高まった気持ちで覆われていて、その熱い波が流れ込むことで、体裁だとか、そういった余分な気持ちは払いのけられていた。
大人の恋・・・
だからこそ大胆になれないことがある
2人は冬の透明な空気のように、熱い思いで透明なオーラに覆われ、友達から男と女の関係になっていく。。。
こんな恋もあるよね。。。
自分で書きながらロマンティックだなーとドキドキ(笑)
ああ、わたしもロマンティックなシーンを経験したいわ~~~~~(あはは)
。。。って、わたし、これでも意外とロマンティックシーンを経験しておりますのよ((≧m≦)ぷっ!)
わたし、もともとの人間のつくりが(?)ロマンティック型なんでしょうね~
たった一つの出会いもすべて必然と思うから、勝手にロマンティックに仕上げてしまうんです
ただし、想像の世界でね。。。(●´ω`●)ゞ
この出会いは神様の導きだわ~
なーんて、勝手に想像しまくっております~笑
想像力が豊かってことでよしとしましょう!!!!
※注 この自分写真、数時間後のロマンティックシーンを想像しているわたしです(笑)
女友達にこの写メを送ったら「目がウルウルしてる~」って笑われました
