先日もこのブログに書きましたが、靖国ウォッチャーの弁護士内田雅敏さんが『陸軍将校たちの戦後史』という本をYouTube番組「デモクラシータイムス」の中で推薦しておられました。
靖国神社と自衛隊の蜜月関係?! 内田雅敏さん シン池田香代子の世界を変える100人の働き人 8人目 (youtube.com)
そこで、金欠ながら6か月払いの月賦で購入しました。
これは若手研究者である角田燎というかたが立命館大学に博士論文として提出し、それによって学位を得られたというもので、重厚な研究書です。
読むのにエネルギーを要する本でしたが、せっかく読んだのだから、Amazonのカスタマーレビューに感想を書き込んでおきました。
貴重な事実の発掘、多角的な視点からの分析 (amazon.co.jp)
あらためてここに転載しておけば、以下のとおりです。
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(以下引用)
靖国ウォッチャーとして知られる弁護士の内田雅敏さんがYouTube番組「デモクラシータイムス」に出演して、自衛隊幹部の靖国神社との癒着の危なさを説く中で、本書に言及しておられたので、購入してみた。
内田さんは、本書が提供している新情報のうち、現代における靖国思想の存続・復権を告発する実践的観点から有益な側面を重点的に紹介していた。それが本書の副題となっている「『陸軍の反省』から『歴史修正主義』への変容」であり、確かに本当なのだが、本書全体が発掘し、分析している諸事実はそれにとどまらない多面性を備えている。
「偕行社」が旧日本陸軍という「終わってしまった組織」の同窓親睦団体であることからして、会員の年齢構成の時代的変遷は当然のことだが、中心となる層が軍歴上どういう地位で終戦を迎えた者たちか、およびその後の人生のライフステージ上のどこに位置していた者たちであったかによって、時代による指導理念の変遷にも必然性があった事情が、説得的に分析されている。
それだけでなく、会員相互の人的つながりが「社会関係資産」として有効性を発揮できた時代と、それが衰えてゆく時代との違い、会費収入や会の資産も時間の流れとともに変遷せざるをえなかった事情などが、会の性格をどう変えていったかも分析されている。
わたしは重要箇所に赤ペンで印をつけながら読み始めたが、あとのほうほど赤ペンの箇所が多くなり、最後は各ページが真っ赤になってしまった。それだけ新事実の発掘や示唆に富む指摘が多いということだ。著者自身はそれらの重要箇所相互間の絡まり合いを、ひとつの図式として心の中に描きつつ本書を書いたのだろうが、読者も自分なりに図式を描いてみながら読み進むとよい。著者自身のものとは少し違う図式が心に浮かんでくるかもしれない。それを許すほどに、本書が提供している情報は膨大かつ多面的ということだ。それは同時に、読む側にもかなりのエネルギーが要求されるということでもある。
最後に、偕行社が陸上自衛隊退職者の団体と融合することでソフトランディング的な引継ぎを図っている現状が報告されているが、その成否は未知数のようだ。内田雅敏さんは靖国思想的なものを含めた引継ぎが起こることに危機感を抱いておられるが、著者自身はそこまでアジテーター的に訴えてはいない。
靖国思想の現代における存続・復権については、この著者と膝を交えて話し合ってみたいものだと思った。
(引用終わり)
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