サッカーボール型三十二面体のおはなし | MTFのAkemiのblog イタリア児童文学・皆既日食・足摺岬が好き

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私は、イタリア児童文学が大好きで、皆既日食も大好きで、足摺岬も大好きな、団塊の世代に属する元大学教員で、性別はMTFです。季節の話題、お買い物の話題、イタリア語の勉強のしかた、新しく見つけたイタリアの楽しい本の話題などを、気楽に書いていこうと思っています。

昨日、教会の「秋フェスタ」で買ったロザリオは、ひとつひとつの珠が六角形20個と五角形12個の合計32個の面で囲まれた三十二面体になっていたという話を書きましたが、この三十二面体は、よく「サッカーボール型」とも言われ、ひとつひとつが円形に近い平面図形を組み合わせて、全体として球面を近似する図形のうち、もっとも優れたものとされています。

 

正式な名称は「切頂二十面体」というのだそうです。

これについて記述されている、立体図や画像の載っているサイトをリンクしてみましょう。

 

 

 

サッカーボール(変形しない32面体) (ikuro-kotaro.sakura.ne.jp)

 

ときどき、小さな子の乗っているベビーカーに、この切頂二十面体の稜の部分の形を若干進化させて、それらに囲まれる各面をきれいに円形にし、全体の形をきれいに球形にしたおもちゃが吊るされているのを見かけますね。あれは「ボーネルンドのオーボール」というのだそうです。

 

 

 

ことほどさように、この立体図形は、「球面をなるべく円に近い、ほぼ対等な面積をもつ諸部分に切り分けるしかた」として、優れたやり方を提供してくれている図形です。

 

プラネタリウムの投影機が全天周を切り分けて、ひとつひとつのレンズに一部分ずつの守備範囲を担当させて、なるべく負担を公平に割り振る方法として採用しているのも、この「球面を三十二面に切り分ける」方式です。だから、プラネタリウム投影機のレンズは、北半球用と南半球用と合わせて32個ついています。

プラネ製作記 Chapter 2「恒星投影機の基本設計」 (megastar-net.com)

 

物騒な例としては長崎に落とされたプルトニウム爆弾の例もあります。

 

ウラニウム235は臨界量が比較的大きいので、臨界量より少し小さい塊を二つ離して弾体内に設置しておき、そのうちの一個をもう一個に向かって一気にぶつけさえすれば、期待どおりの臨界を超える核分裂の連鎖反応が起こって、一気に猛烈な核爆発となる(広島型原爆)のですが、プルトニウム239の場合は事情が異なるようです。

 

 

プルトニウム239は臨界量が小さいので、臨界量を少し下回る塊を二つ用意して、ぶつけて一緒にしただけでは、広島原爆ほどのエネルギーは取り出せません。そこで、臨界量を少し下回る塊を多数、球面状に配置しておいて、それらを球の中心に向かって一気に移動させ、一瞬、臨界量をはるかに超えるプルトニウム239の塊をかたちづくらせ、それがすぐに核爆発を起こす、というふうにもっていくことで、はじめて、広島型を超えるエネルギーが引き出せるのだそうです。

 

プルトニウムの多数の塊をどのように配置して、どのようにして一気にそれを中心に集めたのかは、軍事機密なので、完全には情報公開されておらず、科学ジャーナリストは推測で語っていますが、三十二面体状に配置しておいて、火薬で「爆縮」したのだろうというのが定説です。

 

引き金となる火薬への点火を百万分の一秒とかいうものすごい精度で同期させないと、プルトニウムが一瞬ひとかたまりになって、つぎに爆発する、というふうにもってゆけないので、その「点火を同期させる」技術が、開発上いちばん苦心を要した部分だということです。

 

かくして首尾よく爆発したのが、ほかならぬ長崎原爆だそうです。