川田正子と「鐘の鳴る丘」 | MTFのAkemiのblog イタリア児童文学・皆既日食・足摺岬が好き

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私は、イタリア児童文学が大好きで、皆既日食も大好きで、足摺岬も大好きな、団塊の世代に属する元大学教員で、性別はMTFです。季節の話題、お買い物の話題、イタリア語の勉強のしかた、新しく見つけたイタリアの楽しい本の話題などを、気楽に書いていこうと思っています。

川田正子などと言っても、若い世代は知らないでしょうが、戦争中から終戦後にかけて、NHKラジオにしょっちゅう出演する少女歌手としてとても有名だった人の名前です。

 

1934年(昭和9年)の生まれです。

 

彼女の名前は知らなくても、その歌った代表的な歌として「みかんの花咲く丘」があると言えば、「そうか。あの歌か」と思い出す人が多いでしょう。

 

終戦直前の昭和20年には、東京が焼け野原になり、多くの子供が地方に疎開する中で、川田正子は東京に留まって、毎日、後に義父となる作曲家海沼実に伴われて千代田区内幸町のNHKスタジオへ通い、生放送で歌を歌っていたそうです。娯楽番組が少ない中でひときわ目立ち、「空襲警報の鳴らない日はあっても、川田正子の歌の聞こえない日はない」と言われたそうです。苛酷な戦場で、新聞や雑誌に出ていた彼女の写真の切り抜きを、お守りのように胸に抱いていた兵士もいたとか。

 

昭和20年12月24日、南方からの復員船が浦賀港に帰ってくるのに合わせて、「外地引揚同胞激励の午後」というラジオの特番が組まれ、そのための歌として一日で書き上げられたのが、「里の秋」という名曲だったそうです。放送後、NHKへの問い合わせが殺到したそうです。

 

翌昭和21年の8月25日に、東京と伊豆半島の伊東を結んで「空の劇場」という二元放送が組まれたとき、放送前日の24日に、彼女と連れ立って伊東へ向かう列車の中で海沼実が即席で楽譜を書き上げた歌が「みかんの花咲く丘」だったそうです。これも放送直後から大きな反響を呼んだそうです。

 

昭和22年、戦災孤児たちへの世の支援を訴えるために、「鐘の鳴る丘」という放送劇が企画され、その主題歌として「とんがり帽子」という曲が作曲されたときも、歌手には川田正子が起用されました。

 

川田正子はその後、13歳になって声変わりが始まったのを機に、少女歌手としては引退し、後に本格的に音楽大学で声楽を学んで、後進の育成に努めたそうですが、引退にあたっては記念の特番が組まれたほど人気が高かったそうです。

 

成人後は比較的地味に暮らしていましたが、「往年の少女歌手川田正子」としてソロで歌うこともあれば、児童合唱団を率いてステージに立つこともあり、知る人には知られていました。

 

1946(昭和21)『みかんの花咲く丘』唄:川田正子 (youtube.com)

 

 

2006年1月22日の宵に、虚血性心不全で倒れて、満71歳で急逝しましたが、前日まで地方公演でステージに立っていたそうです。同日、前年から話題の渦中の人だったライブドア社長堀江貴文(通称ホリエモン)が証券取引法違反容疑で逮捕されたため、翌日の新聞やテレビはそのニュースでもちきりとなり、川田正子逝去の報は小さくしか扱われなかったのが、残念です。

 

「とんがり帽子」は、通称「鐘の鳴る丘」のほうで記憶している人が多いので、ネット上でも後者の名で検索したほうが、ヒットしやすくなっています。

 

川田正子の没後、この「鐘の鳴る丘」の替え歌「金の減る丘」が創作されて、リーマン・ショック後の経済情勢に合った歌として笑いとともに歌われました。

 

   とんがり帽子(鐘の鳴る丘)

           【作詞】菊田一夫

           【作曲】古関裕而

 

とんがり帽子~鐘の鳴る丘 | 作詞 菊田一夫 作曲 古関裕而 - YouTube

 

1947(昭和22)川田正子が歌う古関裕而の名曲『とんがり帽子』戦災孤児を描いたNHKラジオドラマ『鐘の鳴る丘』主題歌 (youtube.com)

 

  緑の丘の 赤い屋根

  とんがり帽子の 時計台

  鐘が鳴ります キンコンカン

  メーメー子山羊も 啼いてます

  風がそよそよ 丘の家

  黄色いお窓は 俺(おい)らの家よ

 

  緑の丘の 麦畑

  俺らが一人で いる時に

  鐘が鳴ります キンコンカン

  鳴る鳴る鐘は 父母の

  元気でいろよと 言う声よ

  口笛吹いて 俺らは元気

 

  とんがり帽子の 時計台

  夜になったら 星が出る

  鐘が鳴ります キンコンカン

  俺らは帰る 屋根の下

  父さん母さん いないけど

  丘のあの窓 俺らの家よ

 

  おやすみなさい 空の星

  おやすみなさい 仲間たち

  鐘が鳴ります キンコンカン

  昨日にまさる 今日よりも

  明日はもっと 幸せに

  みんな仲良く おやすみなさい

 

 

   金の減る丘

   【作詞】千葉合唱発表会・竜うたさんたま替え歌・田島雄吾

 

 

 

  緑ヶ丘に 家を買い

  精一杯の ローン組み

  金が減ります 貧困化

  無くなる金は 父母が

  リストラされてる ためなのよ

  青息吐息が おいらの家よ

 

  今夜も残業 お父さん

  夜もバイトで お母さん

  国の政策 貧困化

  めいめい仕事で 泣いてます

  妹ほしいと 思うけど

  そんな気配は 今夜もないよ

 

  骨太なんて ウソつくな

  親のスネさえ 消えうせた

  重税追い打ち 貧困化

  昨日に劣る 今日よりも

  明日はもっと 大変だ

  おいらの未来を 暗くしないで