ガサガサガサ

 

「うおっつ!」

 

学校帰りのこと耳障りな音が足下でする

 

昨日部屋で出たあいつかと思い思わず後ろにバックステップをする

 

「バックステップってださいな~」

 

隣にいる友人がかっこいいと思っていた俺の心をくじく

 

いやちょっと思っていただよ。ちょっつだよ

 

「ねえ、お兄ちゃん」

 

足下からなにやら声がして下を向くとなにやら小動物のような声がする

 

「なんだよ。翔子かよ」

 

頭をかきながら今年中学生になった幼なじみをにらみつける

 

思えば今年で高校も3年になり進路だのなんだので今年中学生になった幼なじみをみると

 

思わず顔を背けたり

 

思わず睨んだりしていた

 

高校2年の夏

 

俺は部活を辞めた

 

なんていうか才能がなかったというか

 

大学に入ったら続けるのかとかそう言うことを考えると

 

ドリブルをしていた弾が手を払ってきているようで

 

集中できなくなっていた

 

小学生から続けていたことだけに

 

バスケットボールを持つ幼なじみの顔を見るとなんだか俺の心をそのボールで踏みつけているようで

 

思わず逃げ出したい衝動に駆られる

 

見渡すとバスケクラブの友達と集まってパス練習をしているようだった

 

「じゃあな。勉強あるから帰るわ」

 

「おい!..........いいのかよ。翔子ちゃん半泣きしてるぞ」

 

わかってるって言わなくても。俺は最低なことをしてる。でも今の俺の成績じゃ来年浪人していることは明らかなんだ。

 

「お前バスケ辞めてから変わったよな。...........少し息抜きすること覚えた方がいいぞ。」

 

バスッ

 

俺の背中に痛みが走る。でも振り返らない。

 

「じゃあ俺ちょっとじゃれてくるからここでな。翔子ちゃん俺も混ぜてくれよ」

 

中学生のバスケ練習に参加って、事案かよ

 

なんとなく振り返るともう友人はグループに混ざって楽しそうにパス練習をしていた

 

なんとなく草むらに座りながらそれを見ているとなぜか1分ごとにスクワットをしている自分に気がつく

 

何やってんだか俺は

 

頭をかきながら俺は翔子との出会いを思い出していた

 

なんていうことはない

 

ダン!ダン!

 

壁当てをしているときである

 

高1の夏のことアパートのドアの前でしゃがみ込んでいる小さな狸を見つけたわけだ

 

半べそをかいてポニーテールを揺らしていたから

 

ボールの投げ合いをしていたら次第にじゃれつくようになってきて仲良くなったわけである

 

あの頃の俺はどうかしてたんだ

 

「小学生と仲良くなったっていいことなんてないのにな」

 

当時俺には彼女がいた

 

りぼんがかかわいい長い髪の女の子

 

ちょっと茶髪で、あの頃は幸せだった

 

ただ、次第に彼女の方が嫉妬してきたわけである

 

俺は相手は小学生だからと言っていたが彼女はそうは思わなかったらしい

 

女は女なんだよ

 

バシンっ!

 

気がついたら顔面がものすごい痛みを発していた

 

「んももももも!」

 

顔面を両手で覆い悶絶していると友人はボールの方へ行き

 

「わりい。痛かっただろう」

 

とボールをさすっている

 

アイツめ。いつか殺して

 

「大丈夫。顔痛いよね」

 

小さな手でおでこをさすってくれる。その天使の名は翔子

 

俺は起き上がると無意識に頭をなでていた

 

「お兄ちゃん」

 

「事案だけは勘弁だわ」

 

「俺は無意識にバスケットボールを友人から奪うと顔面に向かってパスをしているのであった」

 

「声でてんぞ!いってーーー!」

 

「そして俺は翔子と一緒にバスケを楽しむのであった」

 

「たく、今度はお前な!顔面パスは」

 

なんていうかどうでもいいのかもしれないな

 

勉強はきっとシュートすれば入るだろ

 

あの夏の最後の試合みたいに

 

俺はツクシを踏みつけて今の自分に賭けてみることにした

気づいたら暗がりを歩いていた

 

コツ コツ コツ コツ

 

俺の足音だけ響くここはどこなのだろうか

 

上を向けば電気がついていて

 

チカ ヵン チヵ ン

 

今にも消えそうな蛍光灯が自分の先と後ろに連なっているここは

 

ここは・・・建物の中・・か

 

現在の季節はだんだん厚着をしなければ外を歩くことが辛くなってくる秋

 

普通に通勤して

 

普通に会社に出社して

 

たしか今日は忙しい日でひたすらパソコンにかじりついて

 

昼飯も飲むゼリーで済ませ

 

ようやく15時に女の上司(美人)に提出し(優しい)

 

後は修正と言うところまでこぎ着けて

 

一息ついていたはずだった

 

コンビニに行って にぎりめしを買って 空を見ながらほおばっていたはずだ

 

なのになぜ

 

「何でこんなところにいるんだ」

 

頭の中に疑問符が浮かぶ

 

普段からぼーっとしてるから気をつけてと上司に言われてはいるがこの状況でも変わらないらしい

 

それにここは懐かしくもある

 

足下を見ると背丈が縮んでいることに気がつく

 

窓から外を見ることが出来ないかを考えるが

 

窓は顔と同じ高さにあり夜であることのみ確認できる

 

無理に確認しようとしたらおそらく

 

「おそらく落ちてしまうだろうな」

 

声を出して確認する

 

とにかく前に進むしかないと思って歩みを進める

 

ふと思い出す

 

ここは子供の頃兄弟と友達仲間で来た山の中にある謎のビルだった

 

何たら建設とか言った、昔事件があって立ち入り禁止になっていたビルで取り壊されたはずだ

 

何でこんなところに

 

そう思ったが一つ可能性があるとすれば

 

兄貴が呼んでいるのかもしれない

 

ということだった

 

兄は高校の頃亡くなった

 

家に置かれたそれは兄貴と呼んでもりょうと読んでくれず

 

その後の墓に納骨するまでのことは今でも鮮烈な記憶として蘇ってくる

 

コツ コツ コツ

 

大分歩いた

 

階段を降りたり

 

上ったり

 

屋上に行ったり

 

外に出たりしたが特に何もない

 

誰もいない

 

どうしたものか

 

なんかどうでも良くなってきた

 

頭をかいて上司が困った顔でずっと仕事をしている姿を想像すると早く戻らなければと言う思いで一杯になった

 

もう一度廃ビルの中に入ろうとしたときだった

 

ザ ザ ザ

 

後ろから何か歩く音が聞こえた

 

振り返ろうとするが言いようのない恐怖が全身を覆う

 

近づいてくるたびにそれが何なのかを自覚する

 

兄は交通事故や病気で亡くなったわけではない

 

殺しだった

 

犯人はまだ捕まっていないが

 

俺は今でも兄が当時つきあっていた大学入りたての彼女がそうだと思っている

 

今でも時々親しい人と思われるように会ってはいるが

 

あの凶器にも満ちたまなざしは他の誰とも違うものを醸し出している

 

俺は走った

 

普段ぼーっとしている俺は全身の毛穴から吹き出るくらいの汗を出して走ることなど日常では決してない

 

走る

 

走る

 

コツ コツ コツ

 

「・・・・てよ」

 

何かつぶやいているが

 

足を止めずただ走る

 

走る

 

走る

 

彼女は歩いているがすぐ近くに足音を感じる

 

俺は10分間ほど我を忘れて走ったが

 

「しまった!」

 

突き当たりにさしかかり足を止めなければならなくなった

 

コツ コツ コツ

 

近づいてくる

 

もうだめだと思い壁により掛かりながらずるずると座った

 

カチャン

 

手に何か触れる

 

薄暗い中何かが手に触れる

 

蛍光灯がちかちかするたびに彼女の姿が見え隠れする

 

茶髪でロングの髪そしてゴスロリ衣装を着ているのに身長が高くグラマラスなその容姿は狂気じみているとしか思えない

 

そして手に握られているのこぎりは蛍光灯にさらされる度にきらりと光っている

 

だが俺の心には恐怖とは違う感情が支配し始める

 

憎しみは恐怖に勝つのだろう

 

俺は手に触れているそれを拾い上げて立ち上がる

 

今なら殺せる

 

そういう思いが感情となって表れ始める

 

そのときだ

 

りょうだめだよ。危ないことしちゃ

 

声が聞こえた

 

小学生の夏休みのある日、両親が共働きで母親が作り置きを忘れた日に料理をしようと兄貴と話したことがあった

 

だが兄貴は

 

包丁は危ないからだめだよ

 

と言って棚のカップ麺を取り出し

 

これ食べようぜ

 

と言って二人でカップ麺を食べたときを思い出した

 

カチャン

 

俺は握っていたそれを手から離す

 

逃げ道はある

 

コツ コツ コツ

 

ゆっくりと近づいてくる

 

時間はないかと思い息を思いっきり吸い

 

僕は思いきりジャンプして

 

窓を突き破って逃げ出した

 

・・・

 

「!!っっつ、はーはーはー」

 

ここはどこだ

 

そう思いながら辺りを見回すと

 

「良かったーー!!」

 

といきなり柔らかい何かが顔を覆う

 

「息できない!ブグ」

 

顔を確認すると上司がワンワン泣いている

 

どうやら俺はコンビニの前でおにぎりを食べているときに空をみていたせいで喉を詰まらせたらしかった

 

通行人の人の中に看護師の人がいたらしく助けてくれたらしい

 

「そうですか」

 

と一言言いながら窓の外を眺める

 

もう夜だった

 

次の日上司から

 

ちゃんと寝てなきゃだめだからね。

 

とラインが来て休日となり暇をもてあましていた

 

どうするかな

 

と一言呟く

 

いやどうするかなんて決まってる

 

ラインの着信音が鳴る

 

今日休みだから12時に会えるよ

 

と表示されている

 

俺には確かめなければならないことがある

 

さて行きますか

 

やつの心を窓越しに見ていては曇っているだけなのだ

前に進む

 

左に進む

 

右に進む

 

でも後ろには行くことが出来ない

 

町中の道を歩いていてると忘れ物をしていることを思いだし

 

後ろを向く

 

しかし行くことは許されないのだ

 

大分歩いてここまで来た

 

戻るのが面倒と言うこともある

 

疲れたくないという気持ちが大きいのかもしれない

 

財布はある

 

スマホも持ってる

 

家の鍵も掛けてきたし

 

火の元もちゃんとチェックした

 

なら何を忘れたのか

 

それは大切なもの

 

バックという名の・・・

 

いや取りに行けや

 

と言う人も多いかもしれない

 

実際隣の友人はえせ関西弁で突っ込んでいる

 

でも中には何も入っていない

 

オサレなバックで格好つけたいときに持って行くバックだからだ

 

外出用のバックだからいらないよ。何も入れるつもりもないし、それに時間なくなるしな

 

今日は高校の時の親友と遊ぶ約束をしていた

 

正しく言えば小学校からのだが

 

高校の時のと言えば

 

なんだか青春ぽいのだ

 

思えば俺たち二人だけじゃなかった

 

俺たちの周りにはいつもあと5人ほどはいたはずだ

 

小学 中学 高校

 

大学は個人的に思い出したくないので置いておくとして

 

結局

 

「お前だけだな」

 

歩きながら出た言葉にはっとする

 

今日は親友の誕生日で

 

今までいろいろあったから思わず出た言葉に口をつぐむ

 

高校の時

 

親友は当時友達だった女の子に告白して

 

大学を卒業後結婚

 

順風満帆に見えて時々歯ぎしりをしていたが

 

半年前に離婚したらしい

 

原因はこいつが職を辞めたこと

 

すぐに再就職したが

 

家庭はあまりうまくいかなかったらしい

 

いいんだぜ。気にすんな

 

そう親友は言った

 

そうだな今日は楽しもう

 

ボーリング カラオケ 焼き肉

 

きらきらとした時間が過ぎていく(全部おごりだけどな・・・自分の)

 

気がつけば財布が空になっていることに気がついた

 

すまんな。もうこれで俺の残弾はゼロだ

 

夕方を過ぎた頃別れの時間が来たようだ

 

親友はおもむろに財布を取り出すと

 

まだ俺の弾が残ってるぜ

 

と格好をつけて言う

 

それを聞くと俺はすぐに繁華街につま先を向けて早足で歩く

 

おい

 

と親友はいう

 

な。バックは必要なかっただろ

 

また会うときは新年会になるかもしれない

 

だが

 

たとえ大切なものを忘れてきたとしても

 

わざわざ取りに行く必要もない

 

人間は後ろに戻ることは許されていない

 

なぜなら

 

隣には親友がそして

 

前には道を歩く人々がいる

 

声を掛ければいいのさ

 

まずはそこから

 

唐突に親友のスマホがなる

 

『会いたい』

 

画面にはそう表示されていて

 

俺は親友に肩をたたいてこういった

 

弾、残ってんだろ。今日は楽しかったぜ

 

親友はありがとうというと抱きついてきて

 

俺は行ってこいと背中を押す(気持ち悪いから蹴り飛ばしたんだけどな)

 

親友は一目散に走って行った

 

な言ったろ

 

まずはそこからだ

カチ コチ カチ コチ

 

音が鳴っている

 

カチ コチ カチ コチ

 

机に伏してずーっと

 

カチ コチ カチ コチ

 

無気力な私は時が止まったように

 

動かない

 

いえ動けないの

 

昨日大学を辞めた

 

突然携帯に電話がかかってきた

 

「父さんが倒れた」

 

北海道にある実家に帰った私を待ち受けていたのはきつい現実だった

 

医者はぼんやりとした私に次々に知らない単語を並べる

 

いえ知ってる単語

 

テレビでよく見る単語

 

その中で意識できた単語はたったの二つ

 

「脳出血」

 

そして

 

「介護が必要となるでしょう」

 

と言う言葉だった

 

実家は小さな定食屋

 

父が料理を担当し母はその手伝いをしている

 

高校生の時は看板娘として手伝いをしていた

 

「楽しかったな」

 

ぽつりとつぶやく

 

母は

 

帰ってこなくて大丈夫。お金はあるから頑張って

 

そう言っていた

 

でもそういうわけにはいかなかった

 

次第に母から疲れた声が聞こえてきた

 

つらい

 

もうどうしたらいいかわからない

 

そうした言葉がスマホから聞こえてきた

 

だから北海道に帰ろうと思った

 

だから大学を辞めた

 

急に引っ越すことは出来ないから2週間後このアパートを出る

 

・・・・

 

引っ越しの準備をしている最中だった

 

それは突然襲ってきた

 

何をしていいかわからなくなったと思ったら

 

目の前がぼーっとしてきた

 

不意に窓の外を見る

 

夕日がもう沈む最中で

 

朝からずーっとそうしている

 

涙は流れないのではなくて

 

流す気力さえなかった

 

1週間前まではラインでやりとりをしていた友達も

 

うまくいっている人と私との圧倒的な差に気がついて

 

すべてがまぶしく見えて

 

すべてが憎らしくなった

 

カチ コチ カチ コチ

 

時間だけが過ぎていく

 

カチ コチ カチ コ ピンポーン

 

ピンポン?

 

鍵開いてる?

 

ちょっと中に入るのはまずいんじゃないの

 

いきなり中に入るとはマジワロス(ズケズケ)

 

ちょっとみんなストップ

 

突然聞こえてきた複数の虹色の声に私は体をびくっと起こす

 

ガチャ

 

彩花いる?

 

4人の友達が振り返ったらいた

 

複数のコンビニ袋をもっている

 

先輩心配しましたよ。なんで返事くれないんですか!

 

一人が泣きながら飛びついてくる

 

彩花大丈夫?

 

一人は・・・とても心配してるとは思えない

 

ゲームやめなさい

 

一人はそのスマホを取り上げる

 

彩花・・・とりあえず飲も

 

一人はとりあえず飲みたいらしい

 

そのときだった

 

2週間分の水が流れ出るように涙がこぼれた

 

つらいよ

 

つらかったよ

 

もうどうしていいのかわからなくて

 

どうして私だけがって

 

思ったよ

 

おぼったよ!

 

ごめんね

 

ごべんなさい!

 

次々と自然に言葉がもれた

 

抱き合ってる友達は

 

苦しい先輩離して

 

と言った

 

その後

 

思い切り笑いながら

 

あのときは楽しかったね

 

とか

 

あのときは香苗がゲームしててまじなえたわ

 

とか

 

俺がゲームだ

 

?とか

 

いろいろ話した

 

私が引っ越しの準備をしているとき

 

ことがことだけに来るのをためらっているらしかった

 

北海道に帰る日まで

 

大学やアルバイトがない日は友達が来て準備を手伝ってくれた

 

そして

 

「帰るかな」

 

時間が来た

 

飛行機の搭乗時間

 

友達は後ろから

 

冬休み遊びに行くからそのつもりで(蟹が食べたい)

 

と言ってくれた

 

なにか聞こえたような

 

ともかく

 

大きく手を振り上げて

 

「行ってきます!」

 

と言って

 

私は笑顔で新たな旅路につくことを決めた

 

時計を見る

 

どうやら時間は私を止めてくれないようだった

タ タ タ

 

僕の後方からは足音が

 

タ タ タ

 

僕の右側からは足音が

 

ドン ドン ドン

 

僕の左からはドアをたたきつける音が

 

ガ ガ ガ

 

僕の前方からはドアを壊そうとする音が

 

音がする

 

何をしたと言われれば

 

何をしたかはわからない

 

下には穴が開いていて

 

上からは梯子が掛けられていた

 

しかしそこは狭い空間で

 

僕一人が呼吸できるのがやっとだ

 

追い詰められている人間は

 

果たしてどっちに逃げるのか

 

タ ドン ガン

 

穴には降りないとしてと言いながら

 

梯子に足を掛け

 

一歩 一歩 一歩

 

ギシギシ音を立てながら上っていく

 

バキ

 

何かが折れる音がして

 

ゆっくりと下に落ちていく

 

布を裂くような叫び声を上げながら

 

僕は下に落ちていった

 

落ちる途中

 

3人の人間が僕を見ていた

 

一人は笑いながら

 

一人は怒りながら

 

一人は絶叫しながら

 

オチテイクボクヲミテイタ

 

3人?

 

確か4人だったような

 

ボスン!

 

大きな音を立てながら

 

ボクは死ぬことを自覚して

 

まぶたを閉じる

 

なにやら声がする

 

3人?

 

5人?

 

いや10人以上の声がする

 

ボクはそのまま意識を失った

 

10年後

 

俺は大人になっていた

 

両親は別れ

 

母親とともに日々の生活を歩んでいた

 

屋上でたばこに火をつけて

 

あの日のことを思い出す

 

日々の忙しさとは裏腹に

 

現在の幸福な時間をたばこの煙のようにゆっくりとゆっくりと過ごしていた

 

ズキ

 

しかめっ面で背中をさする

 

親父に蹴られた背中が痛む

 

体中のあざは消えたが

 

腰を蹴られて骨まで達していた部分の痛みは取れない

 

しかしあの空間は何だったのだろう

 

俺は確かマンションの屋上から飛び降りたはずだった

 

あの梯子は

 

あの4人は誰だったのか

 

そして最後の一人は

 

空を見上げながら考えていると一人の女性が扉を開けて俺に近づいてくる

 

田中さん屋上でサボりですか

 

コロコロと笑いながら上司が顔を真っ赤にしながら探していることを俺に伝えると

 

たばこ、だめですよ

 

と俺の手からたばこを取り上げる

 

軽く舌打ちをした後

 

やっぱり人は生きたいもんなんだな

 

 

後ろを見ると彼女は首をかしげながら不思議な顔をしていたが

 

田中さんはこれから死にに行くようなもんですけどね

 

と残酷なことを言ってくれるなこの野郎

 

やれやれ仕方ない

 

と言いながらネクタイを締め直すと

 

扉を開けて階段を降りた

 

鬼退治ね。マジワロス

ぽた ぽた ぽた

 

 

朝が来た

 

起きなくちゃ

 

音が透明なガラスを通って私の耳に入る

 

眠い目をこすり爽やかなアラーム音で目覚める朝は

 

これから会社に行って働く私の心を癒やしてくれる

 

スーツに着替え

 

行ってきますと言って扉を開けると今日は曇り空

 

秋はやぱっり晴れてた方がいいな

 

そう一言愚痴っぽいことを言うけれど

 

私は雨が好きだった

 

バチ バチ バチ

 

傘に心地いいドラム音が響いているのを聞きながら

 

昔お母さんと一緒に手をつなぎながらスーパーに行ったときのことを思い出す

 

そう、私はあんなレインコートを着て

 

お母さんはあんな色の傘を差しながら

 

お菓子買ってあげるけどあんまり高いのはだめよ

 

と私にいつも言っていたっけ

 

不思議だな~

 

人混みの交差点の中

 

私は親子連れが何人いるか数えていた

 

んーん探してたのは親子じゃないんだね

 

母は今何をしているのだろうか

 

何ヶ月も電話さえしていない

 

帰ってきなさいね

 

優しい言葉に対して私は

 

会社の仕事が忙しくて帰れないよ。休みさえないんだよ。そんな勝手なこと言わないでよ。

 

冷たい言葉でそう返してしまった

 

今日電話しようと思っても

 

タッチパネルを押す指さえ怖くなる

 

そうだよね

 

本当のお母さんはここにいないんだもんね

 

スマホをポケットから取り出して

 

自然に指が母のボタンを押す

 

ごめんね

 

人混みの中で泣くのは情けないけれど

 

きっと今日は雨音がかき消してくれるだろうから

 

思い切り泣いた

紙がある

 

机に置かれた薄い紙

 

ぐちゃぐちゃにその一枚に絵が描いてある

 

何か文字にも見えるそれは

 

きっとそれは........

 

なんだろうか

 

風景画にも見えるし

 

誰かが残したメッセージにも見える

 

 

疑問符が頭の中をいっぱいにする

 

ここは美術館の片隅なのか

 

はたまた自宅の机なのか

 

それはご想像にお任せするとして

 

いったい何が書かれているのか

 

いや描かれているのか

 

何の目的で

 

何のために

 

そう考えていると後ろにいた人が突然私の肩をたたいて

 

振り返ったとたんにその紙を奪うようにして持って行く

 

148㎝の女の子........いや女性か

 

わからないが性別は女性で間違いないようだった

 

走り去った後誰も追いかける人はおらず

 

ただ私一人が残される

 

ああそういえば忘れていたことがある

 

「今日は私の誕生日か」

 

そこに書かれたメッセージは決まり文句で

 

そこに描かれたものは私の顔だった

 

そういえば妻と子供に最近会っていなかった

 

最近どころではない

 

そういえば2年前は一年間出張で

 

出張から帰ってきたと思ったら残業で

 

..........

 

子供の顔さえ忘れてしまうとは父親失格どころではない

 

そう思うが時間は私を許さない

 

もう出社の時間だ

 

普段の時間よりも遅い時間にでようとするから

 

気がつく........

 

いや傷つくのだ

 

鞄を持って

 

時計をつけて

 

ネクタイを.....外した

 

携帯で今日明日は休むことを伝え

 

鞄を下ろした

 

靴を脱いだ

 

スーツは何着かあるから投げ捨てて

 

ジャージを着て

 

妻に一言

 

「今日、明日会社休むからどっか行こう」

 

父親としてやらなければならないことがある

 

それは

 

美香に私の顔を描いてもらうのだ

草が生えている

 

ぼーぼーに生えている

 

しかしそれは本当にただの草なのか

 

草にもいろいろある

 

花をつけるもの

 

実をつけるもの

 

ただの葉だけ生やすもの

 

いろいろある

 

実をつける草の代表格と言えば

 

私にとっては小麦や大麦

 

あと米なんかは最初はただの草なのだ

 

異論は認めん

 

なぜならそれは畑や田んぼに人が植える草だから

 

そう思っていた矢先

 

隣でどんどんどんどん草を刈っていく人がいた

 

その人は思っているのだろう

 

こんなところに生えやがって

 

迷惑だ

 

私は思う

 

おいおい本当に刈っていいのかい

 

いや言わないがただそう思うのだ

 

刈っていって結果的にそこは見通しがよくなった

 

やっぱりきれいなのはいいよね

 

さっきと思ってたこととは違うけれど

 

でも少し考えると

 

ススキは綺麗で立派だったなとか

 

あの花はここに合う花だったなとか

 

あの草は生い茂ってて邪魔だったけど見た目は壮観で日本の昔ながらの風景だったなとか

 

いろいろ思う

 

そう思って私はたばこに火をつけるのだけれど

 

隣で一仕事終えたその人は

 

綺麗になった場所にたばこを投げ捨てた

 

正直唖然とした

 

何の目的で刈ったのか

 

仕事なのか

 

邪魔だったからなのか

 

奥さんと喧嘩した腹いせだったのか

 

草は何も言わない

 

言わないが踏まれても踏まれても立ち上がるのだ

 

それを根絶やしにする方法

 

それが殺すことなのである

 

彼は疲れたと一言言い立ち去った

 

私はたばこをポケットから出した小型の灰皿に入れそこを後にした

 

帰り道の途中のこと

 

やけに消防車やパトカーが走っていた

 

その次の日家に警察が来て

 

いろいろ聞かれたがその出来事を話すと

 

血相を変えて帰って行った

 

ご愁傷様

 

俺はそう一言つぶやいた

 

そのまた次の日テレビをつけると

 

「奥さんと喧嘩した腹いせに草を刈り気分転換した。その後たばこを捨ててしまった」

 

と本人は話したらしい

 

火のない所に煙は立たない

 

壁に耳あり障子に目あり

 

確かにそこは見通しは良くなったが

 

おいおい足下をごらんなさい

 

少しだけ草が生えてるよ

 

人間の力なぞその程度のものに過ぎず

 

自分は神ではないのだよ

夜道を歩く

 

コンビニに向けて歩く

 

時々若い夫婦が歩く程度の

 

寂しい道

 

そこには誰もいない

 

闇の真ん中で

 

ただ

 

ただ一人歩く

 

夜空には無数の弱い光があって

 

そこにただ一つ強い光を放つものがある

 

時折街灯があり

 

まるで俺だけのスポットライトのように

 

一歩一歩照らしてくれる

 

ただその光はすぐに終わる

 

3、4歩程度歩けばすぐにその範囲から出てしまう

 

そしてその光は太陽の光と同じように

 

世やみで一瞬しか照らさないのだ

 

まるで恒星とは王であり

 

その他の星はただの石でしかないこの世の仕組みそのものだ

 

王に気に入られない人間は生きていくことさえ難しい

 

星もまたそうなのだ

 

しかし王に気にいられたものは

 

姫として迎えられる

 

太陽と月は元々違うもの

 

しかし違うからこそそのほかの星は生きていられるのだ

 

そんなことを思いながら光だらけの街に着いた

 

「今日も隣が寒い。いや1ヶ月前くらいからか」

 

男は強すぎるので

 

一歩月から離れた位置にいないといけないと考えた

 

この世の宇宙での反省文

 

自重は大切

ふわ ふわ ふわ

 

青空を見ているとふわっと浮かんでいるふわっとしたものがある

 

時にふわっとしてるものは

 

船になる

 

怪獣になる

 

食べ物になる

 

天空の城になる(?)

 

何にでもなれるそれは

 

大切なものを運ぶ

 

時に生き物脅かす

 

心を満たす

 

僕らを未知の世界に連れて行く(?)

 

どこまでも

 

どこまでも

 

進む

 

そしてそれは色を持つ

 

 

 

黄色.......は雷か

 

しかしそれは意思を持たない

 

思考を持たない

 

何も考えてすらいないのだ

 

ではそれには気持ちはないのかと言えばわからない

 

ただ一つあるとすれば

 

感情だろう

 

時に涙を流し

 

時に怒りを大地に落とし

 

時にエンターテイナーとしてふわっとした自分の体を落とすのだ

 

彼は世界の気候を変える世界の中心で

 

実は僕たちを支配しているのだ

 

ただ彼は気分屋だから

 

何をするのかわからない存在だから

 

僕たちの為す術は特にないよ

 

と俺は一言ぼそっと遅れた理由を一言つぶやく

 

まあ今日は快晴じゃないんだけど晴れてるんだけどね

 

ふわっとしてるな~