家を出るのが遅くなったある日の朝、いつもより遅い電車に飛び乗った。
そしたら、凄い体勢で爆睡中の2人の小学生と出くわした。
終電のサラリーマンでも、こんなことにはならないだろうに。
これは描かねば、描いて残さねばと思い、手帳を取り出してこっそりとスケッチしてみた。
が、なかなか上手くいかない。
後日にリベンジを誓い、それからしばらく彼らを描くために、敢えて2本遅い電車に乗っていた。
家の最寄り駅から西大寺まで、相手が眠っているのをいいことに、結構ガン見して描いていたと思う。
そしたら最近、右の小さい方に気づかれてしまったようで、右の方が寝てくれなくなった。
おまけに うつむき加減でチラチラとこちらを 盗み見るようになってしまった。
盗み見てたのはこちらの方なのだが、先々問題にならぬよう、しばらく自重していた。
まあちょうど、お向かいのおばあちゃんに 東野圭吾の本を借りていたので、それを読んで通勤時間を潰した。しかし今朝、それも読み切ってしまい、すっかり退屈したもんだから 久しぶりに手帳を取り出して見た。
今まで、あのサラリーマン小学生をはじめ、揺れる車内で動く人を頑張って描いた。(画像は、その中でも内容が、まあまあ判別できるものだ。)
時間潰しと、手帳の余白潰し。それからスケッチの練習。
積み重なって、いつか あのサラリーマン小学生がサラサラと描けばイイなあ、なんて思っていた。
だが今朝、ちょっとちがう目的を思いついてしまった。
アタシは、毎朝 ほぼほぼ決まった時間の、決まった方面行の電車に乗って、車内の風景を描いていた。しかも、ほぼ決まった車輌だ。
そんなある日、眼光鋭い一人の男に声を掛けられる。
男はバッジを見せ、「警視庁○○課の加賀と申します。」と挨拶をする。
(つい今しがた読み終えた小説に、加賀という刑事が登場する。)
そうして、「あなたが、毎朝 乗客や通勤電車内の風景をスケッチしておられるとお聞きしたのですが」と、問われる。「もし差し支えなければ、スケッチが描かれた手帳を、ある事件の捜査に役立てたいと思うのですが、お借りすることはできないでしょうか?。」
アタシは、両頬に幸薄そうなえくぼをたたえながら、震える指で、手帳を差し出す。
「ただ、手帳なので、ごくプライベートなことも書いてあるので、そこは見ないで、、、は無理だとしても、見なかったふりをしてください。。。」と、奥貫薫の顔と声で、アタシは答える。
あ、加賀刑事は、阿部寛の顔と声だ。
奥貫アタシは、途中 手帳のせいで、逆に犯人ではないかと周囲にうっすら疑われたり、真犯人の逆恨みを買い危ない目に遭うが、すんでのところで、加賀刑事(阿部寛)に救われる。
そして、どんな小さな糸口でも、そこから事件を解決していく加賀刑事の推理と、手帳のおかげで、二人の小学生は無事に救出され、犯人は東尋坊に追い詰められ一件落着。
そうなのだ、アタシの手帳が いつ何時 カッコいい出来事の役に立たないとも限らない。
今は、空いたページに気が向いた場面を、気ままに描いている。
しかし、これからはもう少しまじめにスケッチしなければなるまい。
なので、今朝はスケッチの下に10/25と、日付を入れてみた。
早晩 『通勤OL お手柄』と、新聞記事を飾るかも知れない。
丸くトリミングされた顔写真は、もちろん 奥貫薫だ。







