コートを脱ぐか、脱がないかの季節に、なんとなく同窓会の知らせを聞くことが多いように思われる。
忘年会シーズンとか、暑気払いシーズン(?)とかはよく聞くが、果たして同窓会にも、シーズンというものがあるものだろうか?。
20代のころまでは、同窓会の誘いも有るには有った。が、何となく「お、おお、ん、、、」と、もじもじと参加を渋っているうちに、声も掛からなくなってしまった。
まあ、仮に声が掛かったとしても、参加するかしないか不明だ。
というか、同窓会に行かずとも、学生時代の友人とは、しょっちゅう つるんでいるので、同窓会とか言われても「えっ?、新メンバー加入の飲み会ですか?。」くらいにしか思えなくなっている。
高校2年だか3年になる前の春休みに、小学5,6年の同窓会が有った。
アタシたちが通った小学校の5年1組の教室で、恩師も交えて、ジュースとお菓子で乾杯の同窓会だ。
午後6時、校門の前で懐かしい同級生たちと再会を喜び合い、手にてを取って職員室の前を通り過ぎ、5年1組の教室へと続く階段で、何故か隣のクラスの乱暴者、コバと出くわす。
今日、1組の同窓会なんですけどオー。
何で2組のアンタが居るんですかアー。
と、小学生口調で心の中で、コバに突っ込む。
コバの消えた方向に目をやると、階段の踊場辺りに、ごま塩髪の猫背の男の人が立っていた。
他の同級生たちが、口々に「せんせー!」「せんせーやん。」と、先生のところに駆け寄る。
「ああ、藤本、元気か?」
「ああ、樋口さん、キレ(綺麗に)なってー」
「おお、上西さん、勉強頑張ってるかー?。」
恩師との感動の再会である。
アタシも、そんな感動の波に乗り遅れぬよう、
「いやーん!せんせー!」と、声を掛けた。
すると恩師、アタシを前に、3秒固まる。
そして
「すんまえん…。おたくどちらさんやったかいな、、。」
アタシ、3秒固まる。
そうだった。この人は昔っから、建て前や忖度とは無縁で生きていた。
好かれる人には、熱烈に好かれるが、嫌われる人には、徹底的に嫌われる。
職員室でも、しょっちゅうやり玉に上げられていたが、マイウェイのマイペースを貫いていた。
今、こうやって忘れられているアタシでさえ、この人のことは大好きだった。あー悲しーーー。
しかし、階段の手すりに顔を埋めて、なんとか思いだそうとウンウン唸っている恩師が気の毒になり、思い出してくれそうなヒントを出すアタシ。
「えと、あー、せんせー?、ほら、お風呂屋のはす向かいで、喫茶店してた!。」
「あー、喫茶店?。」
「ほー、思い出した。思い出した。」
「そやそや。えー、なんやったかいなー、店の名前…。」
ってか、アタシの名前じゃなくて、店の名前ですか…。
その時、コバが再びアタシたちの前を横切った。
そして恩師が、「こら小林イー。いらんことすなア。」
って、せんせー 隣の組のコバの名前は思い出せても、アタシの名前は思い出してくれないのですね…。
「ああ、そうそう、えーと、なんか花の名前…。ほら、こオーんな花の…。」
そうして、階段の手すりに顔を埋めたと思ったら、ガバッと起き上がり、人差し指をアタシの鼻先に向けて、
「カトレア!。」
せんせー、違う。
でも、思い出す努力は認めてやらねば。
と、ひきつり笑顔で、音程を取るべく マライア・キャリーのように左手をヒラヒラと上下させながら、
「シぃークーラーメーンーーーーー♪」
と、正解の花の名を教えてあげる。
と、恩師の顔に「!」が浮かんだ。
「おオーーー。おー、おー、おーーー。」
「お母ちゃん、元気か?。」
せんせー、アタシの近況でなく、母の安否確認ですか…。
そうなのだ、この人は、 夏休みの見廻り当番の日には、必ずうちの喫茶店でアイスコーヒーをタダ飲みし、母と馬鹿話しをして帰って行った。
マジほんと、母と めちゃくちゃ仲良しだったのだ。
どうも恩師は、喫茶店の花の名前と、母のことだけを思い出したようで、アタシのことは思い出すことはなかったんじゃないかと思う。
なぜなら、この同窓会中 アタシは恩師からずっと、
「おーい、カトレア」
と呼ばれていたから。
せんせー、惜しい!。