酒は天の美禄なり。
少し飲めば陽気を助け、血気を和らげ、食い気をめぐらし、愁いを去り、興を

発して、はなはだ人に益あり。
多く飲めば、またよく人を害すること、酒にすぎたるものなし。
水火の人をたすけて、またよく人に災いあるがごとし。

人類最古の薬物とも言われるアルコール。昔から「酒は百薬の長」と言い

すが、これを裏付けるように、最近、適量飲酒の長命効果が医学的に証明

されてきています。それは、死亡原因で大きな割合を占める心臓病などに

対する予防効果があるからです。適量のアルコールが血液中のHDL(善玉

コレステロール)を増やし、高血圧や脳卒中などの原因となる動脈硬化を

防ぐ為、まったく酒を飲まない人よりも死亡率が低いのです。
 しかし、これはあくまでも「適量」の場合に限られます。飲み過ぎてしまえ

ば「酒は百薬の長とはいえど、よろずの病は酒よりこそ起これ」(吉田兼好)

と言われるように、急性アルコール中毒やアルコール依存症、肝臓を主とし

た臓器障害などの生活習慣病の原因となってしまいます。これはお酒のせ

いと言うより、お酒に対しての正しい知識が不足しているがための問題と言

えます。そこで、今回はお酒に関しての知識を幾つか紹介します。

1、酔いとは?
酔いとはアルコールにより脳の各部位が麻痺している状態の事を言いま

す。

麻痺している部位によって「酔い方」が異なり、まず理性をつかさどる大脳

皮質が麻痺すると本能的、感情的な行動を取ります。これが酔いの初

期段階です。陽気になる爽快期、ほろ酔い気分になるほろ酔い期、気が

大きくなる酩酊期を経て、運動の調節をつかさどる小脳にまで麻痺が広が

ると千鳥足状態になり、記憶の中枢である海馬が麻痺すると記憶出来な

い(ブラックアウト)状態、つまり覚えていないと言う事が起こります。
 さらに脳全体が麻痺すると延髄も麻痺するため呼吸中枢も危ない状態

になり、最悪の場合、死にも至ります。

2、アルコールの処理とは?
 口から入ったアルコールは胃と小腸で吸収され、血液に溶けこみ、肝臓

運ばれます。
 肝臓ではアルコールを分解するアルコール脱水素酵素(ADH)によってア

トアルデヒドに分解され、さらにアルデヒド脱水素酵素(ADHL)によりアセ

トアルデヒドを酢酸に分解し、最終的には炭酸ガスと水になります。
 肝臓で分解しきれないアルコールは心臓に送られ、脳を含む全身を巡り、

び肝臓へと戻って分解されます。その処理能力は個人差があるものの、

体重60kgの平均的な日本人が1時間で処理するのは純アルコール6.6g。

これはいたいビール大瓶1/3本、日本酒0.3合に相当します。つまりはビ

ール大瓶1本、日本酒1合を処理するのに約3時間かかるのです。翌朝に

お酒が残るのはこの処理能力以上の量を飲んだためです。

3、酒の強い人、弱い人とは?
 アルコールは肝臓でアセトアルデヒドに分解されるのですが、このアセト

アルデヒドは毒性が非常に強い物質で、吐き気、頭痛などの不快な症状

を引き起します。このアセトアルデヒドを分解するのがアルデヒド脱水素

酵素(ADHL)。1型と2型がありますが、実はこのADHL2型が働くか働か

ないかによって酒の強さが決まるのです。
ADHL2型は血中のアルコール濃度が低い時に働くのですが、日本人の

40は働きが弱い「低活性型」で酒に弱く、さらに4%は全く働かない「不

活性型」で全く酒を飲めないと言われています。特に後者のタイプは、ごく

ごく少量のでも飲むことができません。
ADHL2型が不活性な人種はモンゴロイド系だけにしか存在しません。日

本、韓国、中国、などに多くみられ、白人や黒人の間にはこの不活性型は

みられいのです。

また、体重の重い人ほど血中のアルコール濃度が低くなるので、酔いは

遅くなります。男女の差では、女性の方がアルコールの影響を受けやすく、

依存症や肝臓障害の危険性が高いと言われています。なお、生理前は女

性ホルモンの影響でアルコール脱水素酵素の働きが阻害されるため酔

やすく、悪酔いもしやすくなります。

4、なぜ、お酒は20歳から?
 未成年の飲酒は法律で禁じられていますが、これにはきちんとした理由

あります。まず、脳の発達が妨げられること。発育途上の脳はアルコー

ルの影響を受けやすく、萎縮が起きやすいためです。俗にアルコール痴呆

とも呼れ、アルコールを絶つと徐々に戻ります。
次に、アルコール依存症、肝臓などの臓器障害の危険性が非常に高い

と。大人の場合、男性で20年、女性で10年以上の大量飲酒を続けるとア

ルコール依存症の危険性が高まるのですが、未成年の場合には数ヶ月か

ら2年ほどの期間で発症の危険があります。臓器障害は、未発達な臓器で

はアルコールの耐性が弱いために、短期間で非常に大きなダメージを受け

るためです。
最後に、ホルモンのバランスの崩れ。アルコールによりホルモンが悪影響を

受け、男性性器の未発達、女性の生理不順、無月経などを引き起こします。
未成年者が最初に酒を飲むきっかけは親の勧めによるものが多いようです。

未成年でも少しぐらいならと寛容にならず、以上のような危険性があるという

を知って子供達を守っていきましょう。

5、危ない飲み方は?
代表はいっき飲み。なぜ危険かというとアルコール分解能力、つまりは自

限界を無視して文字通りいっきに酒を飲むため、血中アルコール濃

度が速に高まり、自分でコントロール出来ないうちに脳が麻痺し急性ア

ルコール中毒の険性が高まるからです。

また、酔いは少し後になってやってくるため、いっきに飲むと知らず知らず

限界を超えてしまい、脳の麻痺が急激に広がって昏睡、死へと繋がる

可能もあります。
次に空腹時のアルコール摂取。これは度数の強いアルコールの場合は

胃の膜をおかし、急速に体内に吸収されるため注意が必要です。食前

酒はアコール度数の低いものにしましょう。
酒だけを飲み続ける。よく何も食べずに酒だけ飲む、という人もいますが

これ体に非常な負担をかけます。肝臓に負担をかける脂物、血圧を上

げる塩の強い物は避け、バランスの良い美味な食事とともに、ゆっくり

飲む習慣を心掛けましょう。
二日酔いの迎え酒、これも危険です。体がダメージを受けて弱っていると

ころ追い討ちをかける事になります。多少楽になった気がしますが、こ

れはまさに「気のせい」です。原因はただ単に飲み過ぎ。特効薬などはな

いので、昨日の酒量を後悔しつつゆっくり横になりましょう。


知っているようで、あまり知られていないお酒。これからの時期、飲む機会

が増えてくると思いますが、適量であれば問題ないのです。飲み過ぎだけ

は、どうぞご注意を。