
「ゆん!見て」
ようやく森を抜けて、振り返ったまお王子が
空を指差して言いました。
「綺麗な星空~。どうりで森の中でも明るく感じたんだね」
「見事な星空でございますね。私とまお王子が道に迷わないように、きっと空から足元を照らして、導いて下さったのでございましょう。」
おやまぁ。
こんなにも満天の星空の夜に、いったい、まお王子とゆん執事は、どこで何をしていたと思います?
ことの始まりは、夕食前。
急にオムレツが食べたくなったまお王子が。
滝口シェフにお願いしようと、こっそり烏骨鶏のいる小屋に、卵を頂こうと入り込んで。
突然の訪問者に驚いた烏骨鶏が一羽、柵を越えて外へ逃げ出したことから始まったのです。
「え~。待ってよ~。烏骨鶏さんこっちへ帰って来て~。」
慌てふためく王子の声に
知ってか知らずか
チャンス到来、逃げ出した烏骨鶏は
一目散にお城の裏の森へと消えて行ったから、さぁ大変!
「待って~。待ってよ~。」
「まお王子!どうなさったのですか?」
「ゆん、大変だよ~! 烏骨鶏が森に逃げちゃったんだ~! 僕のせいだよ。どうしよう。」
「今ならまだ間に合います!追いかけましょう!」
こうしてまお王子とゆん執事は、森へと入り込み。
こちらかな?
いやいやあちらかな? と。
ようやく見つけた烏骨鶏を胸に抱いたころには、すっかり日も落ちて。
満天の星空が広がっていたのでした。
「ゆん。きっとこの烏骨鶏はね。僕とゆんに、この星空を見せてあげたくて、逃げ出したんじゃないかな?」
しっかりと胸に抱き締めたその茶色い羽を撫でながら、優しく微笑むまお王子を見ていたら。
本当にそうかもしれないな、と思うゆんでした。
「まお王子がそう、お思いになるのでしたら、きっとそうなのでございましょう。『今』という時間はいつも、その次の『今』に繋がっているのですから。」
「帰ろう? 僕、お腹ペコペコだよ~。」
「私もでございます。」
急にお城から消えたまお王子とゆん執事を心配して
お城の中は大騒ぎでした。
ひょっこり帰って来たまお王子とゆんは、お妃様からしたたかにたしなめられ。
王様からは『無事で何より』と抱き締められて。
いずれも心配で食事を摂らずに待っていてくれた城中の者たちと一緒に
出来立て熱々のオムレツに舌鼓を打ったのでした。
今夜の星空のなんと見事なことか、と。
まお王子の話に聞き入りながら、みんなが窓越しに空を見上げて。
お腹も満たされた時でした。
「あっ!」
「大変!星が降ってきたんじゃない?」
「まお王子。今のは流れ星でございます。願い事を叶えてくれるかもしれませんよ?」
「ホントに? じゃぁ、僕は。お城のみんなが、ずーっとずーっと今みたいに、み~んな笑って暮らせるように、お願いしなくちゃ!」
まお王子の思いやりに、みんなが胸を熱くしたのでした。
翌朝。
そぅっとまお王子の部屋から出てきたのは渡辺シェフ。
まだ夢の中のまお王子の手の中には
とっても小さな流れ星が一粒・・・
「大変~!やっぱり昨夜のお星さま、落っこちちゃったんだ~!お星さまいっぱい落っこちた~!」



