台風の情報が次々に更新されていきます

夏休みの終わりに

また

新学期の始まりに

迷惑な台風です

しかし

気をつけることは数多ありです








                                         牟田都子・著
                                         亜紀書房




牟田都子さんは書籍や雑誌の校正に携わっています
その方のエッセイです



1冊の本がこれだけたくさんの下調べやいろいろな配慮によって校正され世に出るのかと驚きました



えっ?と疑問に思ったら  辞書を捲り  図書館に走り  それに纏わる文献を探し  事実を明らかにする
そして著者に鉛筆でコメントを書いていく
それもシャーペンは消すと跡が残るので
使わない



黒子さんです
ものすごい繊細さと根気を伴う仕事です



その体験を
確かな情報と謙虚な文章によって綴られています
お人柄が伝わってきます




牟田さんが心から願ってみえるのは

残る本

にしたいということです
そのためなら小さな努力の積み重ねを惜しまないということがよく分かります



たくさんの本の1部を文頭に挙げ  その文から感じたことをもとに経験されたことを端的に述べていかれます



印象に残った箇所はたくさんあります



ー 気持ちはわかる ー



長い文章の時は原稿用紙を床に並べて、かなと漢字の胡麻塩ぐあいをよく見るようにと教えられた。漢字ばかりで黒々していたら読みにくいのは当然だけれど、ひらがなばかりの白っぽい締まりのない画面も読む気がしない、ましてカタカナが多いのは尖って取りつくしまがない、冷たい印象になるものよ。

(光野桃「着ること、生きること」講談社)




この文の後  牟田さんは再考ゲラに「さぼる」を見つけるとため息をつくと書いています。「サボる」は『サボタージュ』の略の『サボ』を動詞化した語」(明解国語辞典)なので「さぼる」とは書けないはずという鉛筆は初稿で入れているのだが 筆者の意思は「さぼる」
そうなると  その意思を尊重してもう鉛筆書きを入れたくないと思うそう




漢字・ひらがな・カタカナの表記については  難しいなあとずっと思ってきました
悩まれる気持ちがビンビン伝わります




目から鱗の校正について書かれていたことがありました



ー 真夜中の三日月 ー


シモ月二十日のウシミツにゃア、
モチモチの木に  ひがともる


(斎藤隆介作、滝平次郎絵『モチモチの木』岩崎書店)




かつて子どもたちに何度も読み聞かせをしたし  国語の教科書にも教材として載っていました
大好きな物語です



牟田さんはここで  真実を教えてくれています
最初は

シモ月三日のウシミツ


この時の絵は三日月でした
でも  「丑三つ時に三日月が上るのはおかしい」との読者からの意見が入りました
調べた結果   絵は  「シモ月二十日」の月、「寝待月」とも呼ばれるものにしたのです
以来  発行される絵本も教科書も「シモ月二十日」に校正されたのです



私はおぼつかない記憶を辿りました
そして  「シモ月三日」の方が言いやすくてリズムがあって  最後に臆病な豆太が初めてモチモチの木が花が咲くように光る場面に合うのになあと思えます
(二十日 は硬いかなキョロキョロ)
でも現実は現実です



その意見を出したのは ある教師だったそうで  よく調べられたなあとは思います



牟田さんはこんなふうに迷いながらも言葉を1つひとつ  拾いながら日々  苦しみながらも楽しみながら  校正の仕事を積み重ねてみえるのでしょう



最後です


ー 疑う力 ー


……私は、ありとあらゆる間違いを犯す。けれど校閲者は、「こんなことも知らないのか」とあきれた気配を微塵も見せない。どの赤字にも、どの「?」にも、「ここ、もう1度考え直されたらいかがでしょうか」とささやくような謙虚さがこめられている。時には三輪車の図解や地図やカワウソの写真コピーが、そっと添えられている。

(小川洋子『とにかく散歩いたしましょう』文春文庫)




校正や校閲をする人には  こういう人としての温もりがあるのだと  つくづく思いました



あっ、今  本当にこの本を読んでよかったと
今  また  思い始めています





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曇天に若き芒の揺れている

曇天に若き薄の揺れている

曇天にかすかに揺れし芒かな

曇天にかすかに揺れし薄かな




牟田さんの本を読んでから  詠んだ俳句を比べてみました
「すすき」でも使い方  いろいろです
やはりこうだなと決めました



曇天に若き薄の揺れている

曇天にかすかに揺れし芒かな
                                     アマンバ








このところ  ずっと  俳句脳低迷中です
台風が過ぎたら  活性化してくれるかなあ





午後は  雨の都合で休んだ吊るし飾り講座のお家講座です
大好きなさん喬さんの落語を聴きながら
ちくちく『蝉』作りです
ツクツクボウシの透き通った声も聴きながらニコニコ