どんよりした空です
お天気に左右されない子どもの頃の身体に戻れたらいいのになあとぼんやり思っています
エッセイは 2012年に書いたものを手直ししました
イッチョライ
小中学生のころ、運動会のトリは『イッチョライ節』、別名福井音頭だった。方言で一張羅のことを、イッチョライと言う。全校生徒が大きな円陣を作り踊った。
♪ほんに イッチョライ イッチョライ だね~
わずかな記憶がもどかしく、YouTubeで検索した。小さな画面に懐かしい歌と踊りが映し出される。
福井は北陸トンネルを境にして、越前と若狭に分かれる。文化や方言や景色が違う。若狭出身の私にはもう忘れてしまった歌詞から始まる。映像に見入る。
越前から。
「白山の雪肌」を皮切りに、次々と名所が歌われる。東尋坊。大好物の黒胡麻豆腐が名物の永平寺。九頭竜川を下る。出湯の町・芦原温泉で一休み。越前ガニを肴に一献は最高だ。菊人形の武生を後にトンネルを抜ける。
若狭だ。
敦賀なら船。十代のころ、この港町に行くとロシア人をよく見かけた。いよいよ我が故郷に。風光明媚な三方五湖。見下ろす梅丈岳の頂上に続く道をレインボーラインと呼ぶ。五湖と空と海の七色に因む名称だ。続いて「若狭カレイは味で持つ」と歌う。マイ好物は、他に甘エビ・ハタハタ・へしこ。
そして最後は、小浜湾の蘇洞門(そとも)めぐり。今は原発問題で、遊覧船も大揺れだろう。
見事だ。福井県の名所・名物を言い尽くす勢いだ。
少し前イッチョライに仲間入りしたのが、「全国で幸福度ナンバーワン」。今は亡き友人のお母さんが言われた。
「福井の人は、今自分にあるものに満足し、工夫して生きているから、しあわせ」
ブータンに似ている。
だから帰省の少しの間でも、『知足』の生活をする人たちといると、温かで心地いい。
故郷を飛び出して半世紀近くに経つ。イッチョライ節を口ずさみながら、気づいてしまった。
今、私は福井にコイシテル。
まっすぐに十二単の立ちのぼり
アマンバ
藤の花青き空より降りたよに
アマンバ
鈴蘭や雨粒のごと咲き初むる
アマンバ
春は 天に地に 花