登校の時間帯にはどしゃ降りだったのですが   今は風の強い晴天になりました

4月は気紛れで  困ります











化粧の手つっと止まりて初音かな
                                               アマンバ




昨日の朝  初音を聞きました
小さな小さな可愛い声でした
化粧の音さえさせてはなるまいとじーっとして聞きました





※  今回  少し長いエッセイです

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『勇    姿』



二月の眩い光が、屋内プールのさざ波に揺れている。観客席のロビーには、心地よい女性シンガーの声が流れている。大きな窓ガラスから下を覗くと、小二の孫息子が大きく手を振った。瞬間、あの頃が蘇る。


息子が初めてスイミングスクールに入会した三歳の時のこと。

「おかあさ~ん」

大きな声で泣き叫びながら観客席に入ってくる子がいる。どこの子かと見たら、なんと我が子だ。水泳パンツだけの裸ん坊が、私を探している。たった一人で、どこからどうやって来たのか。「どうしたのー」。私は彼の手を握った。


初めての体験が心細かったのだろう。プールサイドへ行く前の準備体操をする部屋から抜け出してきたのだ。体操が終わるまで、私はそこに居た。そのあいだ、合点できないことがあるのに気づいた。


自分の仕事上、彼を生後十ヶ月で保育園に入れた。その時、物怖じすることなく、新しい環境に馴染めた。適応性はあると思い込んでいた。だから、スイミングスクールも大丈夫と安心していた。


観客席に戻ってきた原因は何だったのだろう。全く新しい環境に一人置き去りにされた不安感だろうか。何とか落ち着きを取り戻すも、私が居ることを確かめながら準備運動する姿は少し頼りなげに見えた。プールサイドに来て、「トントンまえ」と整列する時も、時おり私の所在を確かめるように、顔を上げて観客席を見た。


その姿が今、孫息子と重なった。


ここは、岐阜市にある温水プール。ごみ焼却の熱を利用している施設内にある。息子は、毎週休みの日、二人の娘を連れてきて、泳ぎを教えている。山里にあり、自宅からはかなりの距離だ。なかなか大変なことだと思うが、孫娘たちの泳ぎは上達しているようだ。


二月の末、息子の誕生日会に出向こうとしていた夜。「明日、温水プールに行くのはありか?ホマちゃんの勇姿を見たいし。上から見学するところもあるよ。昔の J プールみたいな感じで」と打診があった。


孫息子は、最近四種目の泳ぎができるようになった。大好きな叔父さんに見てもらえることになり、二つ返事で決まり。翌日、私は孫と二人で誕生日会に向かうことにしたのである。


そうして、大きなガラス越しに、皆の楽しそうな様子を眺めていた時、前の記憶が目を覚ましたというわけだ。


息子は、上の子に平泳ぎの掻き方を教えている。孫息子の平泳ぎを見せながら。自分もやってみせながら。くっくっと腕を掻くコツを教えているようだ。その余裕のある姿からは、あの泣き叫んでいた小さな姿はとっくに消え去っている。ゆったりと子に教える、頼もしい父親の背中だ。これこそ、勇姿。


私は安心してガラス窓から離れた。


泳いだ後のけだるさを抱えながら、また帰り道を運転する息子を横に、四十年の月日の早さを思った。


毎年行っている誕生日会のなかで、思い出に残る日になった。これからも、家族を大切にしながら、逞しく歩いていってほしい。そんなことを思いながら、孫息子と二人、帰路に着いた。





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拙い文章を最後まで読んでくださり ありがとうございます🍀