寒い朝が続いています

白い雪が全てのものを美しくする

それはかつての私の戯言

白い雪が全てのものを苦しめている

それが現実の今


そのことが何とも哀しい








                                   小川   糸 ・著

                                   幻冬舎                      

      





この本は










第三弾です





鎌倉を舞台に繰り広げられる
ツバキ文具店店主  鳩子(愛称ポッポちゃん)の話です
『キラキラ共和国』から6年の月日が流れました



冒頭に
こんな手紙が書かれています










手書きの美しい文字です
まるで  鳩子がこの世に存在するくらい身近に感じながら  読み始めました




鳩子は  結婚したミツローの前の妻との子どもQPちゃん(中3)との関係が上手くいかず   いつも心に重苦しいものを持っています
「反抗期」ということは分かりつつ  どうしたら2人の関係が改善していくのかと思い巡らします




そんな鳩子に  ぽつぽつと代筆依頼の仕事が舞い込んできます
悩みを抱えた人の話に耳を傾け   心にしまいます
それを鳩子は  その人の心の着ぐるみ状態と考えているようです
考えながら  あるきっかけで  ふとアイデアが舞い降りてきて  代筆の言葉や便箋や封筒やペン  そして切手までも  丁寧に考えて  依頼人に渡していきます
そこには  商売というよりも  鳩子自身の成長が見えてきます



そんな折   QPちゃんとの摩擦について  親しくなった元客の女性が言います
みな   トキグスリ  だと
この5文字を胸に  鳩子は余裕を少し持ち始めます



さてそんな時   鳩子は
ツバキ文具店の先代である   今は亡き女性  雨宮かし子に宛てたラブレターを見つけます
どうしても好きになれなかった先代の祖母に  恋人が……



相手は  伊豆大島にいる妻子ある男  三村龍三です
その親戚にあたる冬馬と2人で  かつて愛し合っていた2人の手紙を全て探しだします
リアルな手書き文字に迫力を感じました



鳩子と冬馬は伊豆大島で   その手紙たちを燃やします
それは  亡くなった2人への心からの供養であり  ようやく一緒になれたという思いに心をほぐしていきます




鳩子は  先代かし子との間にあった確執からようやく解放されました
それどころか   椿の木を文具店のシンボルツリーにした思いに触れ  かし子を愛おしく思い始めます



それと時を同じくして   あれほど自分を拒んでいたQPちゃんとの間に温かいものが流れ始めます
代筆屋の鳩子に  QPちゃんが本音を書いた手紙を書いてくれたのです



かつてお隣に住んでいたバーバラ婦人が一時帰国して   鳩子に言います
「この世界って遊園地みたいなものかもしれないわね
ジェットコースターで恐怖をあじわったり、メリーゴーランドでロマンスを知ったり、みんな、人生を謳歌するために遊園地に来るんじゃない?………」


「でもね、絶対に誰もが遊園地を出なくちゃいけないの。それが、この世の唯一のルールなのかもしれないなぁ、って思うんだ


「だからね、ふたりとも、たーくさん笑って、人生を楽しむんですよ」




鳩子はQPちゃんを隣に  泣きたくなるくらいに  今こうして生きていることの愛おしさを感じます



何枚かの手書きの手紙
たくさんのお菓子や料理の匂い
鎌倉独特の雰囲気
季節の花たち
海の音や光
伊豆大島の細かな情景
………



小川  糸さんの世界は   読む人をぐんぐん惹きつけ   まるで   現実を見ているようでした
改めて
手紙っていいなあ
そう感じずにはいられない読書タイムでした



最後まで読んでくださり   ありがとうございます
一冊の本を読めば   感想は十人十色
それでいいと思います




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フロントの氷とかして今日をゆく
                                              アマンバ









待てば   氷はとけて  視界は広がります
私は少しだけ待てばいいだけです