柳家さん喬・著
                               ビジネス社





人様を笑わせ、幸せな気持ちになっていただく。
これ以上ない、いい仕事じゃないですかー



帯に書かれている言葉です



読み始めて少し経ち
ふと自分が声に出して読んでいるのに気づきました
そして最後まで音読しました




活字の向こうに  さん喬師匠がみえるのを感じるー高座で話されているような錯覚になるーそんな1冊です



さん喬師匠の
今まで
これから
十分に語ってくださっています



今まで  のなかには
落語家として初めて人間国宝になられた
柳家小さん師匠とのエピソードが随所に出てきます



みな逸品のエピソードですが
そのなかで1つ
師匠と剣道をしたときの話です




師匠は剣道にたとえて噺の稽古をしてくれたのかもしれませんね。演者とお客様は互角じゃないといけない。五段と初段が稽古するときに、自分が五段だと思って上から目線でいると初段は腕が上がらない、相手が初段なら自分も初段のつもりで向き合え、と師匠はよく言っていました。
落語も同じです。つまり、自分がいつも高い位置にいたら、お客様は楽しめない。…… 




そしてまた師との剣道から
「間」の大切さを学ばれます
この「間」は  少しこわい存在です
人前に立つと  ドキドキする時間です
沈黙ほど   噺家さんにとって怖いものはないでしょう
でも  「間」を客と共有することで   押しも引きもない落ち着いた時間が流れ   落語を豊かなものにしていくと感じました




さん喬師匠の落語が聞きやすく心穏やかになるのは  「間」の取り方の上手さにあると思いました




まだまだある  じんときてしまう小さん師匠とのエピソード
素晴らしい師匠に出逢っての経験をまるごと  ご自分の成長へと繋いでいかれました




今 
たくさんの高座をこなしながら
新作落語の研究もしてみえます
秘話を明かしてくださったのですが
新作落語は  もう25年ほど前に
黒田絵美子氏に出会ったころから本格的に始められたようです




さん喬師匠というと古典落語の名人とばかり思ってきましたが   そんな前から…
この2月『新作  三昧』と銘打った名古屋での落語会のことにもチラリと触れてみえて  興味深く読んだ箇所でもあります




小さん師匠から
『守  破   離』の心を学び
『離』のところで  新作落語にチャレンジされているようです



あくまでも古典の真髄を忘れることのない新作落語
それは難しいことでしょうが
さん喬師匠は苦悩しながら努力を重ねてみえるようです




これから
小さん師匠の落語をもっともっと広めながら   新作も!
年齢を重ねれば   ふと   噺のなかの言葉や名前を忘れてしまったり   もう掛けることのできない噺もあるようです
でも   さん喬師匠は  全てを受け入れながら   ご自分でも書いてみえましたが 
ポジティブシンキングで  今日も明日も明後日も  落語の道を歩いていかれます



忘れていました
落語にせよ   何にせよ
さん喬師匠は基本的に  否定をしないところから物事を進めていくということを改めて知りました
まず受け入れ   腑に落ちないなら  考え
腹落ちしたなら自分のものにしていかれます
否定をされないということは  周りの者を伸ばしていく秘策かもしれません
そしてこれこそ  また   小さん師匠譲りの心根かもしれません



自分に言い聞かせるように音読して
さん喬師匠のことについてたくさん知ることができた貴重な時間でした
これから落語を聞くときの参考書にもなりました



そして何より
どんなときも   物事を前向きに捉えたり
中庸であろうとされていたりすることに
静かな元気をいただけました



あっ!
忘れていました
各章の最後にはさん喬落語の台本?が掲載されています

『天狗裁き』
『文七元結』
『干しガキ』~新作落語

さん喬師匠の大切な落語です




まとまらない感想を最後まで読んでくださり   ありがとうございます





ガーベラガーベラガーベラガーベラガーベラガーベラガーベラガーベラガーベラガーベラガーベラガーベラガーベラ



水たまりに青空映し今日は処暑
                                        アマンバ