とある日の事です。


それは。


元旦の朝の事でした。


娘さんは朝食の後片付けをしていました。


「お昼、どうするの?」と娘さんの後ろ姿に梅さん。


「お昼は昨日食べなかったお蕎麦(カップ麺ですが)食べよう」と娘さん。


「あるのなら良いよ」と梅さん。


暫くして(11時頃)初詣に行く準備をしていると。


「お昼、どうするの」と梅さん。

「これ」とカップ麺を梅さんに向ける娘さん。


初詣は、毎年の事ながら長大の列でした。


「こんなに並ぶの初めてね」と梅さん。


「あら、そう。」

「私は毎年、並んでるわよ」と娘さん。


並んでいる内にお昼(12時)になってしまいました。


「元旦はお昼ご飯は食べないものよ」「私はお腹空かないから要らないわ」と、何の脈略も無く唐突に梅さん。


娘さんは聞こえなかった事にしました。


初詣を終え。

おみくじを引き、お守りを買って帰路に着きました。


と。


「たこ焼き買わなくて良いの」

「お昼、何も無いでしょう」と梅さん。


出店のたこ焼きを買おうと言うのです。


「お昼はあるよ」

「たこ焼き、食べたいの?」

「でも、たこ焼き屋さんは来てないみたいよ」と娘さん。


「なら、良いわよ」と不服そうに梅さん。


初詣は歩いて行きます。

途中にはコンビニがあります。

コンビニが見えて来ると。


「寄って行かなくて良いの?」と梅さん。

「何か欲しいの?」と娘さん。

「お昼、何も無いでしょ」と梅さん。

「あるよ」と娘さん。


コンビニの前を通ると《お休み》の張り紙が貼ってありました。


「休みだよ」と娘さん。

「何で休みなの」と梅さん。



前日(大晦日)。

仕事に行く娘さんに梅さんは「大晦日まで店開けてるの?」

「普通、大晦日や正月三ヶ日は休みでしょう」と言っていました。



娘さんは段々、疲れて来ました。

さりげなく早足で梅さんと距離を開けて歩きました。


家に帰り。


娘さんは、カップ麺(そば)にお湯を入れました。


と。


「これだけなの」と梅さん。


おせちや煮物をテーブルに並べ。

『食べきれるのか』と娘さんが心配になるほど取り皿に乗せました。


が。


案の定、ほとんど残していました。


自分の食べられる分量も分からなくなっている様です。


残した物は当然の様に食べた箸でお重に戻します。


「汚くないわよ」だそうです。


娘さんのお正月休みは後2日あります。


『早く仕事行きたい』


本気で思う娘さんでした。


トホホ。

とある日の事です。


バタバタした朝でした。


娘さんが仕事に行こうとしていると、電話がなりました。


飛び付く様に(実際の動きは遅い)電話に出た梅さん。


「何言ってるのか分からないわ」

「あんた、聞いて」と受話器を塞ぐ事も無く、娘さんに差し出す梅さん。


近所に出来たお土産物屋さんからでした。

梅さんが買って配送した荷物が宛先不明で戻ったらしいのです。

『仕事の帰りに引き取りに行く』約束をして電話を切りました。


「荷物が宛先不明で戻ったらしいから、仕事帰りに引き取ってくるね」と娘さんは仕事に行きました。


「よろしくね」と梅さんは言っていました。


が。


仕事帰りに娘さんがお土産屋さんへ行くと。


「朝、お母さんが直ぐに来られましたよ」と言われました。


家には、それらしき箱が置いてありました。


「これが戻って来たの」と娘さん。


「違うわよ」

「○○さん(梅さんが送った人)から送られて来たのよ」と梅さん。


そして。


お礼の電話をかけようとしました。


○○さんは震災で家を離れていますので、家の電話も不通になっています。

梅さんは常に「何かあったら、あちらから連絡してくるわよ」言っていて、現在の連絡先を知りません。

加えて。

震災の被害を受けた事も軽く捉えています。


「あの家には居ないよ」

「お歳暮、送ったらダメだよ」と娘さんは何度言っていました。


が。


『もう、戻っている』と独断で送ってしまったのです。


「新しい連絡先、聞いたの」

「あの家には住んで無いよ」と娘さんが止めるのも聞かず。


梅さんは電話をしました。

「『使われてません』って」と初めて知った様に言う梅さん。


そして。


「あの人、携帯にしたのね」と梅さん。


家の電話を止めて携帯だけにしたと言い張ります。


家に居ると信じて疑わないのです。


「荷物の送り状はどうしたの」と娘さん。


送られて来たと言い張るならば、先方からの送り状が荷物に貼られていたはずです。

娘さんは梅さんにかまをかけてみました。


「送り状?」

「あるはずよ」と梅さん。


が。


全く探す気配が、ありません。


そして次の日の朝。


「送り状、あった?」と娘さん。


「送り状?」

「戻って来たやつの?」

「捨てたわよ」と梅さん。


おやッ。


正しくなってます。


なんだかなぁ➰ッ。


梅さんの連日のおボケに疲れが取れない娘さんでした。


トホホ。

とある日の事です。


「で、あんた何処行くの?」と梅さんが言いました。


娘さんはドラッグストアへ行こうとしていました。


梅さんに「要るものは無いか」と聞くと「無い」様なのでコートを着込んでいると。


「じゃ、魚、買って来て」と、さも思い出した様に梅さん。


「ドラッグストアに魚は無いよ」と娘さん。


「薬屋だったわね」と梅さん。


「行って来ます」と出て行こうとする娘さんの後ろ姿に、梅さんが問いかけました。



「で、あんた何処行くの?」



ドラッグストアに行くと話していて《舌の根もかわかない》とはこのことか。


娘さんは一瞬、言葉を失ないましたが「ドラッグストア」と冷静に答え、家を出ました。


娘さんが買い物を済ませ(30分後位)家に戻ると。


「もう、終わったの」

「早かったね」と驚き顔の梅さん。


「そうかなぁ」と娘さん。


「病院空いてたのね」と梅さん。


「病院なんて行って無いよ」と娘さん。


「じゃ何処行って来たの」と梅さん。


「ドラッグストア」と素っ気なく娘さん。


何時のころからか。


梅さんの中では、ドラッグストアと病院が一体化している様です。

なんなら、ドラッグストアと食品スーパーの区別も付かなくなっています(こちらは、少々紛らわしかったりしますが)


「そんな事より、お昼どうするの」と梅さん。


急に《シャキシャキ母さんモード》のスイッチが入ります。


梅さんのおボケにはムラがあります。


少しづつ。


おボケの度数が上がっています。


娘さんの《イラッ》を押さえる忍耐度数も秤が振り切れそうです。


耐えられるかぁ。


不安度数が上限なしに上がっている娘さんでした。


トホホ。