とある日の事です。
梅さんに何本もの電話がかかっていました。
「いつもの所でしょ」
「はいはい」
「連絡ありがとう」
梅さんは明らかに口先だけの対応をしていました。
「何処か行くの」と娘さん。
「いつものよ」と梅さん。
『知ってる事をわざわざ聞かないで』とでも言いたげな言い方でした。
が。
娘さんは何も聞いて居ません。
「遅刻したら大変よ」
「時間とかカレンダーに書いといたら」と娘さん。
「書いてあるわよ」と面倒くさそうに梅さん。
当日、お昼前(11時40分頃)。
梅さんがのんびりと家を出て行きました。
何か嫌な予感がした娘さんが梅さんのカレンダーを見ると。
集合時間《11時半》と書いてありました。
既に遅刻です。
しばらくして。
梅さんに電話がかかって来ました。
『待ち合わせの時間なのに梅さんが来ない』と。
「すみません」
「ご迷惑おかけします」
保護者の様に謝罪する娘さん。
最近はこのパターンが度々起きています。
前日にわざわざ何人もから確認の電話をもらって置きながら。
何故か。
待ち合わせの時間に家を出るのです。
《待ち合わせの時間に間に合わせる為には、家を何時に出なければならないか》の逆算が出来なくなっているのでしょうか。
更に。
娘さんが注意すると。
「わかってるわよ」
「いちいちうるさいわね」
等々。
娘さんの注意を拒絶します。
そして。
毎回毎回、時間を間違えてご迷惑を掛けています。
娘さんはうんざりして、注意するのが嫌になっていました。
お昼過ぎ。
娘さんは仕事に行きました。
仕事から帰ると。
梅さんは何事も無かった様に。
テレビの前に座っていました。
「お昼に電話かかって来てたよ」と娘さん。
「知ってる」さらりと梅さん。
娘さんは注意しようかと思いました。
が。
《糠に釘》
《のれんに腕押し》
そんな言葉か頭の中に浮かび止めました。
娘さんは、加速度的に老いが進む梅さんを複雑な思いで見つめていました。
トホホ。