とある日の事です。


「お刺身、買って来て」


買い物に出ようとしていた娘さんに梅さんが声をかけました。


「刺身、食べたいの?」

「夕飯の献立決めたのに」と娘さんが怪訝な顔で答えます。


「お刺身は、お昼に食べるのよ」と梅さん。


「お昼に」

「優雅ね」と娘さん。


「あんたも好きな物を食べれば良いじゃない」と梅さん。


何とも、女王様的な発言です。


梅さんは娘さんが仕事で居ないと、お昼にお刺身を肴にアルコール類を飲んでいる様です。


「お刺身高いからね」と娘さん。


「高いったって知れてるでしょ」

「みっともない事ばかり言わないで」と梅さん。


梅さんは人一倍見栄っぱりです。

そして。

物価感覚が半世紀前辺りで止まっています。

その上。

値段を見ずに買い物をします。

豪快なのか。

無頓着なのか。


娘さんは仕方無いので、お刺身を買って来ました。


と。


「もっと沢山入ったの無かったの」と梅さん。


「足りないの」

「私は要らないよ」と娘さん。


「あら、食べないの」と梅さん。


そして。


いそいそとワインをグラスにそそぎ、お刺身を食べていました。


「お母さん」

「しあわせでしょ」

「羨ましいわ」と娘さん。


「しあわせだわ」としあわせそうに微笑む梅さん。


梅さんも、かつては家計を管理していたのです。

なのに。

食費の予算など何処吹く風です。


複雑な思いで梅さんを見つめる娘さんでした。


トホホ。