とある日の事です。
「これ、誰が書いたの?」
梅さんが、カレンダーをまじまじと見詰めならが不思議そうに言います。
カレンダーには《東京》と書いてあります。
数か月前。
東京に住む長女の旦那様からご招待を受け東京へ行く事になりました。
「カレンダーに書いておかなきゃね」
梅さんは嬉しそうに書き込んでいました。
なのに。
黒板消しで消したようにキレイさっぱり忘れてしまった様です。
「誰が書いたんでしょうね」
「この家に住んでいるのは私たち2人ですね➰」
「そして、その字は私の字ではありません」
「その字に見覚えはありませんか」
「ゆっくり、思い出してみましょう」
娘さんがふざけながら言います。
「私が書いたの?」
梅さんが納得の行かない半信半疑な感じで答えます。
そして。
「あんたも行くの?」と神妙な面持ちで聞いて来ました。
「もちろん、2人で行くのよ」
娘さんが、明るく答えます。
と。
「あんた、ひとりで行ってくれば」
「何か、面倒くさいわ」
梅さんが真顔で言います。
「行かないの?」
「楽しみにしてたじゃない」
娘さんが言います。
「行かない」
妙に力強く、梅さんが答えます。
娘さんは《梅さん、ひとりでお留守番》は心配です。
またまた。
難儀な事になってきました。
トホホ。