とある日の事です。


「あれ、あんた居たの」


お出かけから戻った梅さんが玄関先で言います。


その日、娘さんは休みでした。


「お帰り」

「朝から居ましたけど」

「出かける時『行ってらっしゃい』って言ったでしょ」


娘さんが答えます。


「仕事から帰ってきたのね」

「お疲れさん」


梅さんは娘さんの声が聞こえないかの様に、とんちんかんな事を言います。


「今日は休みでした」

「朝からずっと居ましたけど」


娘さんが半笑いで繰り返します。


と。


「もう、いいわよ!」


梅さんの語気が荒くなります。


梅さんは自分が忘れた事を認めたく無い様です。


自己防衛?なのか。

つじつまの合わない言い訳や早合点な解釈をする様になりました。


日増しに多くなって来ています。


トホホ。ってたら。


夕方のニュースで《大谷が球場の近くに家を買った》と言っていました。


と。


「大谷、アメリカに住むのかしら」

「大谷、アメリカ行くのかしら」


梅さんが不思議そうに言います。


梅さんはミーハーなので大谷の応援をしています。

テレビをみながら「凄いわ➰」といちいち言っています。


「大谷さんはアメリカの球団で働いてるのよ」

「だから、家を買ったんじゃない」


娘さんが答えます。


「そうなの」


梅さんが初めて知ったかの様に言いました。


あらら➰。


トホホ。のホ。です。