とある日の事です。


娘さんは片付けをしていました。

と。

冠婚葬祭互助会から貰ったエンディングノートが出てきました。


ダメ元で梅さんに『使う?』と聞いた所。


「こんなの要らないわよ」

「早く死ねって催促してるの」

「恐ろしい事言うわ」


娘さんの想定どおり。

梅さんから帰って来た答えはこれでした。


「催促じゃ無くて引き継ぎだよ」

「死なない人は居ないからね」

「案外、私が先かもね」

「嫌なら、書かなくても良いよ」

「これは私が使うから」


娘さんが穏やかに答えます。


「あんただって、そんなの書かなくても良いでしょ」


梅さんが言います。

梅さんにはエンディングノートを書く意味が理解できないのです。


梅さんは覚えていないでしょうが、娘さんがエンディングノートをすすめたのはこれが3度目です。

毎回、力強く拒絶されています。


「残された人が分かりやすい様に」「迷惑掛けたく無いから書くのよ」


娘が冷静に答えます。


「そんなの書かなくても」

と梅さんが言い続けます。


梅さんは近頃、お金の管理に不安要素が出て来ました。

本人には全く自覚はありませんが。


娘さんとしては、書いて欲しかったのです。


前途多難の様です。


トホホ。