とある日の事にございます。


「これ入れたのあんた?」


梅さんが騒いでいました。


「えっ?」


娘さんが梅さんの手元を見ると。

沢山のクーポン券が入った袋を持っていました。


梅さんはクーポン券が大好きです。

新聞のチラシや無料配布されるタウン誌のクーポン券を、片っ端から切り抜いて持っています。


しかし。


梅さんは、クーポン券集めるだけで使いません。

使いこなせない様です。

まず、持ち歩きません。

そして、存在を忘れます。

で、知らないクーポン券が沢山ある。となってしまうのです。


「それはお母さんが入れたのよ」

「要らないのなら捨てたら」


娘さんが呆れ気味に言います。


「私は知らないわよ」

「捨てるなんて、もったいない」


梅さんがぐずぐず言っていました。


娘さんが確認した所。


クーポン券は全て期限切れでした。


「もったいない」

「あんたが、使えば良かったのに」


梅さんがゴミ箱行きになったクーポン券を見ながら、娘さんを責める様に言います。


『使えば』と言われても。

そのクーポン券は、娘さんが必要な物を抜いた残りなのです。

初めてから使う可能性の無い物でした。


《集めるのに使わない》


梅さんのこの傾向は今に始まった事ではありません。

昔からでした。

クーポン券や割り引き券が大好きな割には、特売品や特売日には無頓着なのです。


娘さんには不思議でなりません。


トホホ。