とある日の事です。
「これ、いつまで冷蔵庫に入れて置くの」
梅さんが苛立った声をあげます。
娘さんが冷蔵庫を覗くとそこにあったのは、昨晩の夕食の煮物でした。
梅さんの食べ残しです。
「それ、昨日のお母さんの残しだよ
」
「私、残した?」
梅さんが不安げな表情になります。
梅さんは、ほぼ毎日、夕食のおかずを残します。
そして、忘れます。
娘さんは、梅さんの器に食べれないだろうと少なめに盛り付けます。
と。
ねたんだような目付きで、自分の器と娘さん器を見比べます。
大皿に一盛りにして各人取り皿で食べるのも嫌いな様です。
なので、均等に分けます。
そして、大量に残すのです。
そして。
完食した娘さんの皿を見つめ。
「全部食べたの。おそろしい」
と、さも大食いの様に言います。
毎日の日課の様になっています。
ふと。
娘さんは思います。
『遠い昔の事は鮮明に覚えているのに、なぜ昨日の事は忘れるのだろう』
よく聞く話ではありますが、不思議でならないのです。
トホホ。