梅さんは88歳の元気なお婆さんです。
強気に我が人生を謳歌しています。
梅さんは娘さんの嫁ぎ先で暮らしています。
娘さんの旦那様が亡くなり、今は娘さんとふたりです。(娘さんに子供はいません)
梅さんは、娘さんと交代で夕飯の用意をしています。
娘さんの旦那様がいた頃から時々あったのですが。
大量の野菜の煮物を作り。
それのみなのです。
「メインディッシュは?」
娘さんの旦那様が聞きます。
と。
「昨日、肉食べたでしょ。そんな毎日、肉食べなくてもいいでしょ」
と、平然と答えていました。
ちなみに。
昨日の肉と言っても、和牛特大ステーキなどではあろうはずも無く。
豚こまか鶏肉なのです。
で。
買い置きも無く、肉の代わりに納豆を食べて我慢です。
不満たらたらだった事は言うまでもありません。
梅さんに作らせない様にしようにも、娘さんが仕事から帰ると、出来上がっているのです。
月日は流れ。
梅さんの野菜オンリーの夕飯が増えてきました。
ある日など。
大皿に焼いた薄切り野菜がキレイに並んでいました。
それはまるで、焼き肉の時の焼いた野菜の様でした。
となれば、焼き肉の肉は?
これが、無いのです。
娘さんは無言で冷蔵庫から納豆を出して食べました。
梅さんは納豆をパクパク食べる娘さんを、大食い選手権の出場者を見る様な目で眺めます。
「たんぱく質は毎日取らないとダメだから」
娘さんが言い含める様に言います。
が。
「たんぱく質って何よ」
「私は、毎日食べたいと思わ無いから」
「あんた、いつからそんな大食いになったの」
と、返してきます。
自分が、少食になった自覚が無い様です。
なので。
娘さんが夕飯を作り、梅さんの皿の量が娘さんの皿より少ない(必ず残すので少なめに盛っている)と、娘さんの皿と自分の皿を不満そうに見比べるのです。
まるで、食べられもしないのに親の皿の量を妬む幼児の様です。
娘さんには、母親のその姿をありのままに受け入れるられるほど心に余裕がありません。
イライラがつのるばかりです。
心に余裕が欲しい。
しみしみ思う娘さんでした。
トホホ。