梅さんは88歳の元気なお婆さんです。

強気に我が人生を謳歌しています。


が。


寄る年波には抗えない様で、記憶があやふやになって来ています。


ですが。


忘れた事を忘れているので。


娘さんが、出掛けに念押しすると。


「うるさいわね。分かってるわよ」

と、さも面倒臭そうに顔をしかめます。


が。


娘さんが仕事から帰ると、頼んだ事が出来ていません。


娘さんは思わず、声を荒気てしまいます。


と。


「いちいちうるさいわね」

「そんな事聞いて無いわよ」


梅さんは強い口調で平然と答えます。


ちょっと機嫌が良いと果てしない言い訳をします。


娘さんは忘れ防止の為にメモを取る事を勧めますが。


「忘れないから」とメモを取ろうとしません。


そして、娘さんが代わりにメモを書いていると。


「そんなもの要らないわよ」

と、怒りだします。


「これは、確かに言いましたよ。と言う証の為に書いてるのよ」


梅さんは娘さんのこの言葉で更に機嫌が悪くなります。


『使ったら消して』と口が酸っぱくなる程言っても、消し忘れて付けっぱなしの換気扇の音(梅さんは換気扇の音が良く聞こえないらしい)を背に。朝、あれ程『炊かなくても良いよ』と言ったに炊かれていた白米と冷蔵庫の中で眠る昨日の残りご飯を前に途方に暮れる、娘さんでした。


トホホ。