回転寿司と老人
老人が回転寿司の席に座った。
レーンを眺めながら、じっと待っている。
「最近の寿司は便利になったなあ。注文すれば、寿司のほうからやって来る」
そう言って、マグロを一皿取った。
ところが、次の瞬間――
「……あれ?」
マグロを食べたことを忘れて、また同じマグロを取った。
さらにもう一皿。
隣の客が不思議そうに見る。
老人は胸を張って言った。
「回転寿司っていいねえ。何度でも同じものが食べられる」
しばらくして店員がやって来た。
「お客様、お会計ですが……」
老人は驚いた。
「えっ? 私はまだ何も食べてませんよ」
店員が皿を指差す。
「こちら、全部お客様が召し上がったものですが……」
老人は皿の山を見つめた。
そして、ニヤリ。
「じゃあ……もう一回、最初から食べようか」
――回転しているのは寿司だけではなかった。
記憶も、会計も、人生も。
